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届かなかった表彰台

福見友子、3度目の正直も「一生悔い残る試合」

2012/8/8 16:16
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涙声になるのをこらえるかのように、長い沈黙の後、小さな声を絞り出した。「金メダル取りたかったです」――。

五輪5大会連続メダル獲得の谷亮子選手(36)を2002年に破って以来、3度目の挑戦でつかみ取った代表の座だった。もがき続けた福見友子選手(27)に、母親の早苗さん(56)は「何度も大きな壁が立ちふさがったが、1度もあきらめなかった。苦節10年、来た道に間違いはなかった」と喜びをかみしめた。

メダルを逃し、唇をかむ福見=写真 佐光恭明

メダルを逃し、唇をかむ福見=写真 佐光恭明

福見選手が12年間無敗だった谷選手を破った後、見学に訪れた高校での練習の光景が早苗さんは忘れられない。大会で結果を残せず低迷。練習でも乱取りで他の選手に投げられ、監督を上目ににらんで座り込み、大声で叫びながら畳をたたく姿があった。「急に注目を浴び、重圧から気持ちが空回りしているようだった。顔もげっそりと、見ていられなかった」

1988年に夫を交通事故で亡くした。福見選手が2歳の時だ。女手一つで福見選手ら3人を育てた早苗さん。幼いころから「苦労は買ってでもするように」と話してきたが、黙々と練習に打ち込む福見選手に対し、家では柔道の話を避けてじっと見守るようにした。

北京五輪を翌年に控えた07年の大会では再び谷選手を破り優勝したが、実績重視の方針で代表は谷選手に。早苗さんが「仕方ないけれど」と悔しさをにじませると「でも、すばらしい人だから」と冷静に応じた福見選手。今回も浅見八瑠奈選手(24)に10、11年の世界選手権の決勝で2連敗し土俵際に追い込まれたが、今年5月の最終選考では穏やかな表情で自宅を出て、大逆転劇を演じた。

女子48キロ級3位決定戦で、ハンガリーのチェルノビチュキーに敗れた福見=写真 小川望

女子48キロ級3位決定戦で、ハンガリーのチェルノビチュキーに敗れた福見=写真 小川望

国内で超えなければならない強力なライバルの存在。「感謝だよね。その分、自分の力が伸びるものね」と励まし続けた早苗さん。家では黙って本を読んでいることも多い福見選手だが「一見物静かで優しい、かわいい子。だけど、苦労の量が違う。本当に強くなった」と目を細めた。

娘と母が手を携えてやっと手に入れた五輪の舞台。「金間違いなし」と言われながらメダルにさえ届かなかった悲運の柔道家は「一生悔いが残る試合でした」と力なく漏らした。「皆さまに申し訳ない。トモは精いっぱい頑張ったと思います」。母、早苗さんは思い詰めたような表情で頭を下げた。(ロンドン=小沢一郎)

 女子柔道48キロ級。7月28日、3位決定戦で1本負け。

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