首相、政治・行政改革に全力 一体改革の前提に
野田佳彦首相は29日、消費増税を含む社会保障と税の一体改革の前提として、国会議員の定数削減など政治・行政改革の断行を約束し、意見集約にこぎ着けた。民主党内の反対派への配慮から「自ら身を切る改革」を前面に打ち出した。だが、中小政党が反発する議員定数削減も加わり、野党との合意形成は難しい。政治改革も行革も整わないまま、消費増税関連法案の国会提出に向けた段取りを進めざるをえない可能性が高い。
「民主党は政治家の集団ではなく、政治改革家の集団であることを国民に示そう」。首相は29日の民主党税制調査会・一体改革調査会の合同総会で、来年1月召集の通常国会で議員定数削減法案を提出し、早期成立をめざす考えを示した。民主党は2010年の参院選マニフェスト(政権公約)で、衆院比例代表定数を80、参院定数を40程度減らすと掲げていた。
しかし、衆院比例代表定数を180から80減らした場合、あおりを受けるとみられるのは公明党などの中小政党だ。公明党の山口那津男代表は「定数削減なら比例代表ではなく、小選挙区を削るべきだ」とかねて批判している。野党第1党の自民党も公明党との協調を重んじるだけに、民主党の提案に安易に乗れない。
首相は行革重視も訴えた。例に挙げたのは国家公務員給与の引き下げ、特別会計改革だ。先の臨時国会で公務員給与を7.8%引き下げる政府の特例法案は、自公両党が反対し、継続審議になった。特会改革では農林水産省系3特会統合などを盛り込んだ法案を用意する。民主党では首相に近い岡田克也氏が会長を務める行革調査会が「行政構造改革実行法案(仮称)」の提出準備を進めている。
「丁寧な国会運営を心がけてきたが、来年は正念場だ。我々の政策を思い切って打ち出し、全力を尽くして成立を期す。君子豹変(ひょうへん)すだ」。首相はこう宣言したが、民主党が一方的に法案を出せば、野党は態度を硬化させる。議員定数削減や公務員給与削減の与野党調整も難航は避けられない。
一体改革の民主党案は「自ら身を切る改革を実施したうえで消費税率引き上げを実施すべきだ」と記した。首相は合同総会で政治・行政改革を「何らかの形で閣議決定したい」とも述べた。
とはいえ執行部はハードルの高さを知るだけに「それが実現しなければ、消費増税関連法案を国会提出できないわけではない」と予防線を張る。一方の消費増税反対派は「実現が法案提出の前提」とけん制しており、さや当てが続いている。