消費増税、財務省「完勝」の先に - 日本経済新聞
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消費増税、財務省「完勝」の先に

霞が関風速計

消費税がいよいよ上がりそうだ。2014年4月に8%、15年10月には10%への増税。アタマでは分かっている負担増も、多くの人は肌感覚で拒絶する。決断が必要な歴史の瞬間はあっけなかった。

6月15日深夜。国会内で民主、自民、公明3党の首脳が消費増税関連法案の修正案への合意文書に署名した。3党の3人は目の前にある紙に、ただペンを滑らせた。

6月11日から始まった税法の修正協議。「社会保障制度の協議がまとまらない限り、税の話は前に進まない」。民主党の藤井裕久税制調査会長や自民党の町村信孝税制調査会顧問らは表向き、協議は全く前に進んでいないと口をそろえた。

こんな「社保待ち」とも言われた状況が続いたが、その協議も15日夜に終わった。その後、1時間ほどで税制の修正案にも合意。ずっと落としどころを探していたのは、やはり財務省だった。

3党による初回の協議に、財務省は税制を担当する主税局の古谷一之局長が入った。事務方は最小限に抑え、それぞれの政党を背負った政治家が主張を戦わせる。非公開の会議はそんな雰囲気かと思われた。

内情は少し違った。協議の回数を重ねると、財務省主税局で税制調査会とのやり取りを担う井上裕之税制第一課長のほか、課長補佐クラスも席を並べるようになる。消費税を担当する住沢整税制第二課長も姿を見せた。

 水面下では事務方を巻き込んだ修正作業が着々と進んでいた。「民主党と自民党の間では内々に、法案を直すならこの部分にしましょうかという話をしているのです」。6月14日には財務省幹部から、こんな声が漏れた。「このままだと、公明党の得るところが少ないなあ」。別の幹部も、常に3党の落としどころを探っていた。

法案に盛り込んでいた所得税と相続税の課税強化は削除されたものの、もともと「いざとなれば所得、相続にはこだわらない」(財務省幹部)。消費税を5%も引き上げるという目的を想定通りのシナリオで仕上げた手応えはあった。

「完勝」したように映る財務省は次にどこへ向かうのか。多くの幹部は「消費税率は最低でも15%は必要」と再増税をにらむ。そして省内で関心が高まっているのが、政府の経済成長戦略を主導しようという次のステップだ。

それは霞が関のリーダー争いで財務省の立場が相対的に強くなっているためでもある。成長戦略で主役を担う経済産業省は原子力発電を巡る問題で身動きがとりにくい。財務省は時に「ただ単に、お財布を持っているから強いだけ」と他省からやっかみを含めて見られてきた。ある財務省幹部は「我々も戦略作りをする能力を高めなければ」と枠を乗り越える意欲を隠さない。

一方で、増税後を見据えた戦略が霞が関全体に求められている面はある。

ある中小部品メーカーの関係者が嘆く。「部品メーカーの会合で酒を飲むでしょう。気が置けない人たちと言いたい放題だけど、製品価格への消費税の上乗せなんて、話題にもならない。部品の値上げなんて、考えられないんだから」。デフレ下での消費増税とは、財務省が霞が関で描くシナリオよりも、はるかに厳しいものだ。しかし今の財務省に、そこまで気が回っている様子はない。

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