2017年11月22日(水)

保育所参入 企業に障壁 公取委、自治体に改善要求
「社会福祉法人の優遇見直しを」

2014/6/26付
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 公正取引委員会は25日、保育所の運営への株式会社の参入を事実上妨げている自治体があると指摘し、改善を要求した。現在は税制面や補助金などで優遇を受ける社会福祉法人による運営が半分を占め、株式会社の運営はごくわずかにとどまる。強制権限は公取委にはないが、規制緩和論議に一石を投じそうだ。

 公取委によると、保育所運営に株式会社の参入を認めない運用をする自治体がある。厚生労働省の2013年10月時点の調べでは、福岡市が保育所運営の応募資格を社福法人などに限定。神戸市や広島市も、市有地を活用した保育所運営を社福法人などに限っている。

 保育所建設への補助金でも、東京都世田谷区などが対象を社福法人に限り株式会社は対象外としている。25日の記者会見で公取委の杉本和行委員長は「法人形態を問わず公平な補助制度にすべきだ」と述べた。公平な競争条件を整えるよう、関係省庁や自治体に要請する。

 保育所は全国に2万4千カ所(13年4月)。公立保育所が4割を占め、5割が社会福祉法人が設置した保育所だ。株式会社や有限会社の経営する保育所は474カ所と、全体の2%にすぎない。

 株式会社の保育所運営は00年度に制度上、認められている。それなのに自治体が参入を阻む条件を課している。公取委の調べでは、「既存の保育所の理事長全員から同意を得ることを求められた」株式会社もあった。

 認可する自治体側は、「株式会社の経営する保育所は倒産する懸念がある」「株式会社が提供する保育サービスは質が低い」などと主張。これに対し公取委は、「法人形態によって保育の質に差は出ない」と指摘する。

 自治体の補助金にも問題がある。公取委の調べでは、私立保育所に補助金を交付する市町村の23%が法人の種類により補助率や交付条件に差をつけており、「社会福祉法人を株式会社より優遇する事例がほとんど」だ。

 一方、保育を所轄する厚労省は「新たな対応を行う予定はなく、検討もしない」(保育課)としている。公取委と同じ指摘を政府の規制改革会議からも受けたため、既に昨年5月、公平な制度の運用を自治体に求める通知を出したのが理由だ。

 15年4月に施行する保育の新制度では原則、株式会社であろうと設置主体を問わず認可しなければならない定めだ。新制度により参入が進むとの見方もあるが、自治体の意識の遅れは否めない。

 高齢化で膨らむ介護需要、人口減を食い止めるための子育て支援など、社会保障の範囲は広がる一方だ。利用者のニーズを満たすためにも従来の社福法人に限らず、新たな発想やノウハウを持つ株式会社によるサービス提供に期待がかかる。

 ▼社会福祉法人 保育所や老人ホームを経営するために設立する非営利法人。全国に約2万法人ある。原則として法人税がかからないほか、施設整備の補助金を受けられる。そのほか社会福祉法人だけが特別養護老人ホームを経営できるなど、株式会社やNPO法人に比べて大きな優遇を受けている。
 ただ社会福祉法人は総じて経営の透明性が低く、稼いだ利益の多くを内部留保としてため込んでいると指摘されている。経営を私物化している理事長もおり、政府の規制改革会議は民間企業と競争条件をそろえたり、経営の透明性を高めたりするよう求めている。

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