原発に真水注入、米軍と共同作戦 米側の危機感が背景
28日にも作業開始
日米が共同で原発への真水注入作戦に着手したのは、現状では不測の事態が起こりかねない、との米側の強い危機感からだ。米軍は横須賀基地にある「バージ船」と呼ばれるはしけ船2隻で約2200トンの水を用意し、ポンプ機もオーストラリアから購入。C17輸送機で横田基地に輸送している。28日にも実際の注入作業が始まる見通しだ。

バージ船は長さ50メートル、幅12メートルで、1隻あたり約1100トンの水を積める。自衛隊の多用途支援艦「ひうち」が原発近くの沖合までえい航し、接岸後は大型ポンプで水をくみ上げ、ホースで原子炉内に真水を入れる計画だ。
米側が真水を入れたバージ船は25日昼前、横須賀港を出発した。現地に到着して接岸し、準備を整える時間がかかるため、作業が始まるのは早くて28日になる。注入が始まれば、沖合約30キロのあたりに海上自衛隊の補給艦を停泊させ、バージ船に随時、水を補給する。この作業は自衛隊が担当し、ポンプは東電が設置する。
冷却水タンクを満たすには、約3500トンの真水が必要と試算している。
米側の要請について防衛省幹部は「緊急に冷やすためには海水でやむを得ないが、長期間にわたると腐食が進んだり、塩がたまるなどの弊害が起きる。早く真水に変えた方がいいとの判断だ」と説明する。
北沢俊美防衛相も記者会見で「米側が非常に懸念を持っていて、強い要請があった」と明かす。ただ防衛相は同時に「東電からも『いつまでも海水を注入していると、塩害のようなものが起きてくるのではないか』との意見があった」とも語っている。
日本側にも当初から「真水に切り替える必要がある」との判断はあった。だが結局、本格化したのは米側の強い要請を受けてからになった。