規制 岩盤を崩す 第1部

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混合診療、出口見えぬまま10年
第4回

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2013/4/8 2:00
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名古屋市に住む土井和子さん(70)は1年前に受けた白内障の手術でいまだに納得できないことがある。

患者の選択肢は広がるか?

■原則禁止のまま

眼科医がすすめたのは遠近ともに焦点が合う多焦点レンズ「レンティス」を入れる手術。一般的な単焦点のレンズよりも術後にまぶしさやにじみが少ないと言われ同意したが、料金を聞いて目を丸くした。

100万円――。公的な医療保険の対象にならないと聞かされたが、単焦点は10万円。こちらは保険がきくとはいえ、値段が違いすぎる。医師に詰めると「手術費だけでなく、保険適用のはずの手術前後の診療費や薬代もすべて自己負担になる」。渋々大金を払った。

からくりはこうだ。患者が医療機関の窓口で払うのは実際の医療費の一部。大半は公的保険で賄われる。ところが国が認めていない薬や治療法を使うと、本来なら保険で賄えるはずの診察や検査の費用も含め、患者がすべての項目で全額を負担しないといけない。

保険の適用外だけ自費で負担し、適用分は通常どおり保険で賄えばいい。だが、そんな「混合診療」は原則禁止だ。政府は2004年に混合診療の範囲を大きく広げると決めたが、実態は厚生労働省が一部の例外を認めてきただけ。それから10年近く。原則解禁の気配はない。

政府規制改革会議の委員だった松井証券の松井道夫社長。「患者の選択肢が広がる」と解禁を唱える。厚労省や日本医師会との論争を思い出してもらった。

おきまりの反対論は「低所得層が良質な医療を受けられなくなる」。これから出る新しい治療法は混合診療が原則となり、保険の適用外となって所得の低い人が困るという理屈だ。松井氏は「全く逆。保険適用分の負担が減り、経済的な恩恵もある」と訴える。正論だろう。

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この記事へのコメント
  • おかやんさん (2013/4/9)
    「混合診療、出口見えぬまま10年」への投稿

     先進医療という名称で、すでに混合診療は一部解禁となっております。本記事で話題になっている「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は、先進医療として一部認可されており、名古屋市内でも複数の医療機関で混合診療の対象となっています。問題にされるべきは、このような事情が患者さんに開示された上で、患者さんが「渋々大金を払った」のかどうかという点ではないでしょうか。

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  • Yoshiさん (2013/4/9)
    「混合診療、出口見えぬまま10年」への投稿

     今回の特集、関連記事では厚生労働省が圧倒的に多い。霞が関で一番仕事をしないで天下りにうつつをぬかし、遠隔医療も手術ロボや介護ロボも海外へ流出する省庁と自民の復活族議員、医師会などの癒着がわかる。竹中さんの検討を祈る。

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  • monakuraさん (2013/4/8)
    「混合診療、出口見えぬまま10年」への投稿

     まず保険の不正請求が出来ないようにしないと、混合診療の話には進めません。例えば腰痛で整体院に来た人に「落ちて怪我をした事にしておきますね」と背中に電気をかけて保険請求したうえ、腰には保険外マッサージを追加して自費も受け取るケース。ワキガの患者に、右脇は腋臭症の剪除手術で保険、左脇は多汗症の保険外レーザー手術で自費という「カルテ上の体裁」をとった医師もいました。どちらも二重取りであり不正請求であり混合診療です。解禁どころか現にある不正の温床。しかも「保険でやってくれた『良心的』な医者だ」と全く逆の認識だったり、「歯医者はやっている」とまるで良いことのように書かれたりと、問題は根深いのです。

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  • shimanekoさん (2013/4/8)
    「混合診療、出口見えぬまま10年」への投稿

     優れた治療成績で医療費のコストも含めて保険償還をした方がよいものと、別建てで自己負担で行くものを分ける議論が、患者さんの意見もなく決められているのは好ましくない。
     飛行機のエコノミークラスとビジネスクラスでは到着することに変わりはないが、食事やエンターテインメントなどサービス内容は支払いによって異なる。そういった意味では新しい技術導入はすすめた方がいいが、やはり全てが保険適用外となる現行制度だと新しい技術の導入が遅れる。
     この辺りをもう少し国民にわかりやすく伝え、「医療費」について国民全体で考え直す時期だと思う。

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