TPP「年内妥結へ交渉加速」 閣僚会合終え共同声明
【バンダルスリブガワン=羽田野主】ブルネイの首都バンダルスリブガワンで開いた環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る閣僚会合が23日、日本や米国など全12カ国の共同声明を発表して閉幕した。声明は「2013年中の妥結に向け交渉を加速する」方針を明記。関税撤廃や知的財産権の保護など協議が難航している分野で早期の打開を目指す。

閣僚会合は交渉を急ぐための段取りと課題を確かめる場となった。現地では事務レベルの交渉会合が30日まで続く。
声明は年内妥結に向け「(10月にインドネシア・バリ島で開く)アジア太平洋経済協力会議(APEC)が重要な節目となる」との見解を表明。TPP参加国の首脳が集まるAPECの場を活用し、10月に首脳による会合を開き、大まかな枠組みで合意するシナリオを描く。その地ならしをするため、9月に閣僚会合を再度開く方向となった。
今回の会合では事務レベルを代表する交渉官の権限を高める点で合意した。
声明は関税撤廃を柱とする物品市場アクセス、知的財産、政府調達など難航する7分野を列挙し、労働と紛争解決の2分野も未解決と指摘した。声明は「相互に受け入れ可能な合意内容をまとめる方法を探った」とし、意見の違いが残ることを認めた。
閣僚会合は年内妥結を目指す米国の強い意向で開いた。オバマ政権は来年秋に中間選挙を控え、TPP交渉の妥結を対外的な経済戦略の成果としてアピールする構えだ。今回は会合の開催国ではないのに、米通商代表部(USTR)のフロマン代表が議長席に座った。
フロマン氏は23日の共同記者会見で「各国首脳は年内妥結を達成するように我々に任務を課している。10月会合は重要な布石になる」と強調。甘利明経済財政・再生相も「大枠での合意を目指す」と歩調を合わせた。
ただ道筋は平たんではない。知的財産で緩やかな対応を望む新興国と、保護の強化を迫る先進国の対立が続く。国有企業の存在感が大きい新興国と先進国の溝も浮かんだ。マレーシアのジャヤシリ首席交渉官が記者会見で「国有企業改革の現行案には閣僚会合で懸念を表明した」と公言し、国有企業に関する優遇措置の撤廃を強く求める米国などをけん制した。
最大の焦点である関税の扱いを巡りフロマン氏は「9月中旬ごろには関税撤廃の案を日本に提案できる」と説明し、甘利氏は「いつでも提案できる用意がある」と応じた。ただ10月の基本合意を見据えると、交渉の時間は限られている。