AIJ、運用損失1092億円 残る現預金は81億円
監視委が検査結果
証券取引等監視委員会は23日午前、AIJ投資顧問とアイティーエム証券への検査結果を公表した。企業年金資金は主にデリバティブ(金融派生商品)で運用し、2003年3月期から11年3月期までの累計で1092億円の損失を出した。AIJが顧客から運用受託した資金(元本)は1458億円。同社は11年3月期の資産額を2090億円と公表しており、600億円以上を水増ししていた。顧客に確実に返還できる残余資産は現預金81億円にとどまる。

監視委はAIJについて「一定のディーラーを抱えて、取引の実態はあった。大半は浅川和彦社長の指示で運用していた」と認定した。相場の流れと反対の売買をする「逆張り」と呼ばれる投資戦略が外れ、巨額の損失につながったという。
具体的な運用先はシンガポールの金融ブローカーを通じた株価指数先物・オプション、日本国債先物・オプション。これらデリバティブ運用は04年3月期から11年3月期まで毎年損失を出した。
AIJはリーマン・ショック後に株価が急落した時期も安定した運用実績を上げたと顧客に説明していたが、実際は09年3月期は37億円の損失、10年3月期には501億円の損失を出していた。このほかに、海外ファンドや国内のベンチャー投資ファンド2本にも資金を振り向けていた。
AIJが実際に顧客から運用受託したのは1458億円。ここからAIJや海外の関連会社などが管理報酬の名目で45億円を受け取っていた。残余資産は251億円。顧客に確実に返還できる残余資産は、国内銀行にある現預金32億円と香港の銀行にある49億円の合計81億円にとどまる。残りは投資ファンドの持ち分といった換金性の乏しい資産だという。監視委によれば、AIJの94の顧客のほかに、アイティーエム証券から直接投信を買った顧客が個人を含め12いることもわかった。
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金融庁は23日午前、監視委の勧告を受け、AIJ投資顧問の業者登録を取り消したほか、AIJの投資信託を販売していたアイティーエム証券は6カ月間の業務停止処分とした。長期にわたって高い運用収益を上げているとの虚偽の情報を顧客に与え、勧誘したことなどが金融商品取引法に違反する行為だと判断した。両社に企業年金など顧客資産の保全を求める業務改善命令も出した。
自見庄三郎金融担当相は23日の閣議後の記者会見でAIJへの行政処分について「極めて遺憾だ」と語ったうえで「あらゆる選択肢を排除せずに、関係省庁と連携し、総力を挙げて再発防止に努める」と強調した。