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規制 岩盤を崩す 改革阻む牛歩、したフリ、骨抜き

第1回

規制緩和が流行語大賞になったのが1993年。呼び名が規制改革と変わっても、規制を正せとの声は変わらない。解せない規制はあちこちに残る。改革反対と粘る人たちは多い。安倍晋三政権は成長戦略の一丁目一番地に据える。かけ声倒れはもうたくさんだ。

改革の綱引きはいつまで?

判決でも覆らず

最高裁の判決が出たのに「勝負あった」とならない。政府の規制改革会議がまず直面したのは、インターネットでの医薬品販売の解禁問題だ。

3月、解禁に反対する議員の集まりをのぞいて驚いた。「国民の命よりカネが大事な人間の集まり」。元厚生労働相の尾辻秀久参院議員が改革会議を強い口調で糾弾していた。

厚労省は省令で副作用のリスクが高い一般用医薬品のネット販売を禁じているが、1月、最高裁は「一律規制は違法」とする判決を出した。改革会議の岡素之議長(住友商事相談役)は全面解禁を求めている。

尾辻氏が率いる議員連盟はネット販売を制限する法案を今国会に出す構え。安倍首相はネット販売の新たなルールを早急につくるよう関係閣僚に指示したが、全面解禁に反対する意見は厚労省内にも根強い。

安倍政権の改革会議で議長代理に就いた大田弘子氏(元経済財政相)は省庁と関連業界がそろって強く反対し、長年解決しない規制をこう呼んでいる――。「岩盤規制」

昔の資料と見比べるとよくわかる。保育所の基準見直し、解雇規制の明確化、保険診療と保険外診療を併用する混合診療の導入……。どれも2001年に当時の総合規制改革会議が答申に盛ったテーマだ。それから12年。今の改革会議が公表した検討項目に同じ宿題がずらりと並ぶ。

こんどこそ前に進むにはどうしたらいいだろう。まずは官僚や族議員の典型的な行動パターンを勉強することにした。

最初は「牛歩戦術」。改革には着手するが、速やかに動いたりはしない。激変緩和の名前で先送りする。一般企業の農業参入はまさに牛の歩み。03年、企業への農地の貸し出しを特区に限り認め、05年に市町村の指定区域なら特区でなくても借りられるようにした。

09年にはいちおう全面解禁となった。だが今も取得に関するルールは厳しい。農家と共同で会社をつくらないと農地を取得できない。農業再生という改革のゴールは遠い。

ふたつ目が「面従腹背」。改革に応じたフリをしつつ、制度の使い勝手を悪くして現状を保つ。有名なのは03年施行の信書便法。手紙などの配達を一般事業者にも開放する内容だが、条件は「全国に約10万本ポストを設置」し、「週6日以上配達」できる企業。いまだに参入が1社もないのもうなずける。

最後は「骨抜き」。例外をたくさんつくって効果をすり減らす。たとえば医療費の保険請求に使う明細書(レセプト)の電子化。06年の自民党政権は紙から電子データに切り替える改革を打ち出し、11年度から「すべてをオンラインで」と閣議で決めた。

だが09年の民主党政権は医師が高齢だったり、レセプトが手書きだったりする診療所を除外した。その結果、医科診療所の16%、歯科の55%はいまも紙の請求のまま。医療機関が反発し、政権に働きかけた。請求の不正やミスを減らす改革は道半ばだ。

癒着構造なお

票をバックに関連業界が族議員に陳情を重ね、議員らは省庁に圧力をかける。岩盤の割れ目からのぞく昔ながらの政官業の癒着構造は隠せない。いくら立派な改革案をまとめても手練と手管に魂を抜かれ、作文の域を出ずに終わる。そんなふうに考えざるを得ない。

規制改革はお金をかけずに新たなビジネスを生む金の卵のようなもの。内閣府は90年代~08年度までの改革の経済効果を25兆円とはじいた。本当の威力は年間1兆円くらいではとどまらないのではないか。

甘利明経済財政相は改革会議で「自分たちがダイナマイトになる」と宣言した。本当に分厚い岩盤を打ち砕く覚悟はあるのか――。

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