2018年8月22日(水)

東電、10年で1兆円捻出 汚染水含む廃炉費用に
経営再建へ重荷

2013/9/19付
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 東京電力の広瀬直己社長は19日、安倍晋三首相との会談で汚染水対策を含む廃炉費用として追加で1兆円を確保する考えを示した。福島第1原子力発電所の廃炉処理を円滑に進めるため。投資抑制やコスト削減などで10年間かけて捻出する。今回は国に追加出資などは要請せず自力で乗り切る方針だが、柏崎刈羽原発の再稼働が遅れている東電には重荷となる。

 安倍首相は事故を起こしていない5、6号機も廃炉にするよう求めた。地元自治体なども東電に繰り返し廃炉を求めてきたが、東電は慎重だった。今回廃炉を受け入れる方向なのは10月にも廃炉の損失に関する会計ルールが変わるためだ。

 従来なら5、6号機を廃炉にするのに今期で2000億円の特別損失を計上する必要があり、財務悪化を嫌って東電は廃炉を決断できなかった。新ルールなら特損は700億円程度で済む見通し。残りの1300億円は10年かけて費用として分割計上し、一挙に損失が出ないようになる。新ルールでは国が認めれば電気料金に上乗せできる。

 5、6号機を廃炉にするのは事故を起こした1~4号機の廃炉作業に集中する狙いだ。そのうえで東電は1~4号機の廃炉処理の資金としてさらに1兆円を確保する方針も示した。年1000億円ずつ別枠で積み立てる。東電は2012年度からの10年間で6.6兆円の設備投資を計画しており一部を別枠に回す。コスト削減も深掘りする。

東電福島第1原発の今後の廃炉の流れ
9月中汚染水から放射性物質を除去する装置の稼働
11月4号機から使用済み核燃料の取り出し開始
2014年度
末まで
・原子炉建屋を囲う凍土壁の完成
・汚染水の浄化をほぼ終え、水問題を解決
2020年度
前半
炉内で溶け落ちた燃料(デブリ)取り出し開始
30~40年後廃炉作業の終了

 東電は1~4号機の廃炉費用として現時点で9600億円を引き当てているが、そのうち2900億円しか使っていない。それでも広瀬社長が「追加で1兆円確保」と首相に約束したのは、「『廃炉や汚染水対策にカネをけちらない』と世の中に宣言する意味合いが大きい」(東電関係者)。

 実際には1兆円をすぐに廃炉費用として使うわけではなく、使った場合も国が認めれば電気料金に上乗せできる。

 東電は14年度中にタンクや地下坑道にたまった汚染水を浄化することも約束した。浄化設備によってトリチウム以外の62種の放射性物質を取り除く。将来の海洋放出に地元の理解を得るためにも浄化は喫緊の課題だ。

 いまある浄化装置は9月中に稼働させる計画。さらに2基の浄化装置をつくる。浄化能力を1日1500~2000トンまで増やし、来年度中の浄化処理完了を目指す。

 東電は昨年、原子力損害賠償支援機構から1兆円の出資を受けた。自己資本は6月末で1兆6000億円とただちに経営が行き詰まる状況にはない。ただ、7月をめざした柏崎刈羽原発の安全審査の申請はいまだにできていない。再稼働は収益改善の最大の柱だが、地元の泉田裕彦新潟県知事が反対している。

 さらに今後は被災地の除染が本格化する。除染で出たゴミをためる中間貯蔵施設の計画が固まれば、東電は兆円単位の債務計上を迫られかねない。東電は昨年11月から除染で国の支援を求めてきたが、慎重な財務省との議論は深まっていない。廃炉に1兆円を追加で準備すれば東電の余裕はさらになくなる。除染費用の分担を巡る議論が今後の焦点となる。

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