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「原発ゼロ」閣議決定せず エネ戦略あいまいに

(更新)

政府は19日の閣議で「2030年代に原発稼働をゼロ」とするエネルギー・環境戦略を参考文書としての扱いにとどめ、閣議決定を実質的に見送った。「自治体や国際社会との議論」を通じて戦略を柔軟に見直すとした基本方針のみを閣議決定し、原発ゼロを含めたエネルギー政策に見直し余地を持たせた。原子力施設の地元自治体や経済界、米国などの反発に配慮した。

政府がこの日、閣議決定したのは「エネルギー・環境戦略を踏まえて、関係自治体や国際社会などと責任ある議論を行い、国民の理解を得つつ、柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する」との基本方針のみ。

政府は14日のエネルギー・環境会議(議長・古川元久国家戦略相)で30年代の原発ゼロや原発の稼働年数を40年に限ることなどを柱とした新戦略をまとめていた。当初、次期総選挙後も「白紙とならない」(古川戦略相)ように新戦略本文の閣議決定を目指していたが、参考文書扱いに後退させた。

 一般的に閣議決定された政策は政権が変わっても内容を覆す新たな閣議決定をしない限り拘束力を持つ。今回のような「戦略を踏まえて」という表現で「原発ゼロ」の方針がどれほどの拘束力を持つのか、政府は説明を避けた。

古川戦略相は19日の会見で「戦略を踏まえて具体化をはかる。決定内容を変えたものではない」と強調した。藤村修官房長官も「戦略を踏まえて今後つくるエネルギー基本計画は閣議決定する」と述べたが、基本計画に原発ゼロを盛り込むかは明言を避けた。経団連の米倉弘昌会長は同日「いちおうは(原発ゼロ方針を)回避できたのかなと思う」と語った。

14日のエネ・環会議決定以降、原子力関連施設の地元自治体や日本の核燃料サイクル政策に協力してきた米国などが強く反発。経団連などの経済界も原発ゼロによる電気料金の上昇が産業空洞化につながるなどとして、政府に見直しを求めてきた。今回の閣議決定見送りはこうした事情が背景にある。

18日に開かれた経済産業省総合資源エネルギー調査会基本問題委員会でも脱原発派、原発維持派双方から新戦略の内容について「ゼロなのか維持なのかあいまいだ」などとの批判が噴出していた。

政府は今後、年末までに策定する省エネや節電目標を盛り込んだ「グリーン政策大綱」や電気の小売り自由化や発送電の分離を柱とした「電力システム改革戦略」などのエネルギー政策は閣議決定する方針だ。

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