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貿易赤字、原発停止より円安主因 赤字定着の懸念

「貿易赤字が膨らんでいるのは、原子力発電所が止まったから」――貿易統計が発表されるたびに耳にする、お決まりのフレーズだ。だが、原発を再稼働するだけで貿易赤字は解消するのだろうか。

財務省が18日発表した11月の貿易統計によると、石油や石炭、液化天然ガス(LNG)など「鉱物性燃料」の輸入額は、原発が稼働していた2010年11月と比べて63.4%増えて2兆3574億円。そのうち、火力発電に使うLNGの輸入額は10年比115.8%増、石炭は同8.9%増えている。

だが、11月のLNGの輸入量は10年11月から25.4%の伸びにとどまっている。輸入額の増大に比べると量はそれほど伸びていない。原発停止でエネルギーの輸入量が膨らんでいるのは確かだが、貿易赤字の原因を原発停止だけに決めつけることはできない。

数量と金額の増加率の違いを生み出す、最も大きな理由は円安だ。財務省の公表している月間の為替レートの平均値では、昨年11月の1ドルあたり79.84円から今年は1ドルあたり98.43円と、23.3%も円安になっている。燃料の円換算の価格を23%押し上げているのだから、当然与える影響も大きい。

SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「全原発停止による鉱物性燃料の輸入額の押し上げは、年間で4兆円程度」とみる。一方で、今年1月~11月の貿易赤字の累計額は10兆1672億円と、原発停止による燃料輸入の増加よりも大きくなっている。宮前氏は「赤字額の残りの6兆円分は、日本経済の構造的問題だ」と指摘する。

理由は2つある。1つは「アベノミクス」だ。日本経済は今まで輸出主導で成長を遂げてきた。しかし、安倍晋三政権が発足してからは、経済政策で国内消費が主導する成長に転換した。今やスマートフォンなどの電子機器や衣料品の多くは海外製。消費が伸びるほど、貿易赤字が広がりやすくなっている。

2つ目の理由は、日本経済に円安が及ぼす恩恵が小さくなっていることだ。新興国で安い製品の生産が増えているため、日本からの輸出品は付加価値の高い製品が中心になった。そのため「為替よりも輸出先の景気の影響を受けやすい」(宮前氏)。海外経済の回復が遅れている現在、単に円安になっただけではなかなか輸出が増えない。

日本経済の構造変化が貿易赤字の主因だとすると、原発を再稼働しても再び貿易黒字に戻るのはなかなか難しいだろう。米国が1980年代に苦しんだ経常赤字と財政赤字の「双子の赤字」――。日本も貿易赤字の拡大で経常赤字の兆しが見える。このままいくと「日本版・双子の赤字」が定着してしまうかもしれない。

(佐伯遼)

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