輸出15カ月ぶり減少 5月の貿易赤字9090億円
財務省が18日発表した5月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は9089億円の赤字だった。赤字は23カ月連続となったが、輸入が3.6%減り、前年同月と比べた収支は2カ月連続で改善した。ただ輸出額も2.7%減り、15カ月ぶりに前年同月を下回った。景気のけん引役として期待がかかる輸出の不透明感が強まっている。

5月の輸出額は5兆6075億円。アジア、米国、豪州向けで減少が目立った。日本の輸出の5割超を占めるアジア向けは3.4%減だった。シンガポール向けが16.5%減ったほか、韓国や香港、台湾、政情不安が続くタイなど、アジアの主要な貿易相手国・地域への輸出が軒並み鈍った。品目別にみると、鉄鋼や電子部品、自動車部品などで減少が大きかった。
自動車の輸出は4.3%減り、14カ月ぶりにマイナス。このうち米国向けは18%減った。輸出全体を数量ベースで見ても3.4%減と2カ月ぶりに減少した。
輸入額は6兆5165億円で、19カ月ぶりに前年同月を下回った。消費増税や石油石炭税の引き上げなどを背景に、カタールからの原粗油や豪州からの石炭など一部の燃料の輸入が減った。
貿易赤字は前年同月に比べて8.3%減った。スマートフォン(スマホ)部品などの輸出が増え、中国向けの赤字が3694億円と10.3%減った。中国を含むアジア全体との収支は1428億円の黒字となり、黒字額は33.7%減った。米国向けの黒字は3995億円と6.2%減った。
農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「欧米の景気が持ち直してくるまでは、輸出の大幅な回復は期待しにくい」とみている。外貨建て取引基準となる円相場の公示レートは1ドル=102円12銭で前年同月と比べて2.9%の円安だった。