政府が17日に公表した将来の電源比率に関するアンケートの結果は、集計や分析を加えていない。意見聴取会の会場ごとに寄せられた意見を羅列しただけだ。
政府がこうした「生データ」だけを開示するのは珍しい。2030年の電源比率で、政府は3つの選択肢を示している。どの選択肢への支持が多かったかを整理してから公表するのが普通だ。
政府は電源比率で寄せられた意見8万9千件のうち1万件も公表した。これも回答比率の分析などを加えていない。
民主党内では「脱原発」を訴える議員を中心に「きちんと意見公募の結果を集計すべきだ」との意見がある。集計すれば原発ゼロの比率が高くなるからだ。政府が集計を見送った背景には「脱原発派」の主張が勢いづき、原発比率を巡って冷静に議論できなくなるとの警戒感もあるようだ。
政府が集計や分析をすれば「手心を加えて民意をゆがめた」と批判されることを意識した可能性もある。政府内には次の衆院選の争点に浮上しそうな原発の議論について、深く立ち入るのを避けようとする空気も広がりつつある。
アンケートでは「将来を見据え、国会で十分に議論して決めてほしい」「エネルギーの問題を個人に委ねるのは国家としてあまりに無責任」などと国が主導して明確な結論を示すよう促す声も相次いだ。「原発ゼロ」にした場合、雇用や経済にどんな影響が及ぶのかを慎重に見極めた議論が求められている。