中国にらみASEANと連携 首相、全10カ国歴訪
【ビエンチャン=山口啓一】安倍晋三首相は17日、カンボジア、ラオス歴訪を終えて帰国した。就任1年足らずで東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟10カ国すべてを訪れたことになる。狙いは広域連携が進むASEANの成長取り込みと中国包囲網づくり。特にラオスは前日訪れたカンボジアと共にASEANの中でも「親中派」とされ、中国との綱引きが激しくなるのは必至だ。

「ASEANの力強い成長なくして日本の成長もない。日本経済の再生に欠かせない友人だ」。首相は17日、ラオスでの記者会見で力説した。
カンボジアとラオスへの首相の公式訪問は、多国間の国際会議を除けば小渕恵三首相(当時)以来、13年ぶり。訪問は安倍首相がこだわった。
2012年の経済成長率はカンボジアが6.5%、ラオスが8.2%。日本企業が中国以外に生産拠点を分散する「チャイナプラス1」の投資先として関心が高い。
ASEANは15年に経済共同体の発足をめざす。ベトナムやタイと周辺国を結ぶ国際幹線道路「経済回廊」の整備も東西南北で進む。カンボジア、ラオスとの協力強化で、日本とASEAN全体の経済連携の輪を重層的に広げることになる。
政治や安全保障分野での協力も探る。カンボジアでは国連平和維持活動(PKO)での協力強化を盛り込んだ共同文書に署名。ラオスとも南シナ海の領有権争いを避けるための行動規範(COC)の早期締結の必要性を確認した。首相周辺は「ほぼ満額回答」と話す。
だが、両国への中国の影響力はすでに大きい。胡錦濤前国家主席は06年にラオス、12年にカンボジアを訪問。習近平主席も副主席当時の09年にカンボジア、10年にラオスを訪れた。両国とも街中には中国企業の看板が目立ち、中国政府が建設を支援した建造物も並ぶ。日本の首相が訪れなかった13年の空白は大きい。
両国には中国の顔色をうかがいながら日本とのバランスを取ろうとする姿勢がうかがえた。カンボジアのフン・セン首相は日本の外交姿勢を支持しながらも、日中関係に触れなかった。
12月に東京で開くASEAN特別首脳会議で「友好関係の新たなビジョンを示したい」と表明した安倍首相に対し、ラオスのトンシン首相は「日本側の意向である政治安保対話の創設を了解し、それぞれの協力可能な対話を実施する」と温度差をにじませた。