安倍首相、したたかな政治家に 鈴木政二氏
引退議員に聞く

――議員生活を振り返ってみて印象に残ることは。
「初当選してから、ほとんどを国会周りで過ごし、15~16年の間、参院の議会運営を見てきた。きっかけは青木幹雄先生に『こっちの方が向いている』といわれたことだったが、結局6人もの参院国対委員長に仕えた。ただ、私が委員長のときには『ねじれ国会』で大変な運営を強いられた。参院を政局の主戦場にしようとする動きが強くなり、日銀の国会同意人事の不同意、全会一致が原則だった証人喚問の強行採決などがあった」
「そのなかで、2009年に成立した改正臓器移植法の取り扱いは印象に残っている。与野党で真摯に議論した結果、委員会では採決を回避し、中間報告で本会議の議題にした。自民、民主、公明が党議拘束をかけず、議員個人の信条に基づき投票が行われたことは、画期的だった」
――今後の参院の国会運営はどうあるべきですか。
「6年間のねじれ国会で参院は政争に明け暮れ、劣化した。法案の成立率も落ち、委員会などの審議時間もかなり少なくなった。参院は不毛な『政局ごっこ』をせず、参院に与えられた第2院としての機能、すなわち議案の修正などできちんと衆院にもの申す対応に終始すべきだ。衆院に3分の2で再可決させるようではダメだ」
――第1次安倍内閣で官房副長官を務めました。安倍晋三首相は変わりましたか。
「安倍首相は首相になるために生まれてきた人だ。初めて首相になったときは若さゆえ気負い過ぎた面があった。この5年の間、全国を回って大きな経験を積み、青臭さが抜けしたたかな政治家になった。人事でも、前回はお友達内閣と言われたが、今回は実力者を並べた」
「『上手の手から水が漏れる(上手な者でも、時には失敗することがある)』とのたとえもあり、事がスムーズに運んでいるときこそ、一層謙虚になるべきだ。周りの人も忠言すべきときはきちんと忠言しなければいけない。長期政権となれば、外交面でも海外諸国から一目置かれるようになる。安定政権をつくり、北朝鮮の拉致問題など安倍首相しかできないことをなし遂げて欲しい」
――政界引退後のプランは。
「これから政治家を志す若者のために地元の愛知で政治塾のようなものを立ち上げたい。人材育成は本来なら政党助成金を受け取っている政党がやるべき仕事だが、現実はそうなっていないためだ。地方議員の段階から、教養を身につけ議員としての基礎を固めてもらうお手伝いをすることで、少しでも恩返しできればいい」
(聞き手は重田俊介)