4~6月GDP、所得に改善の兆し 設備投資は回復力欠く
内閣府が12日発表した2013年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、日本経済が緩やかな回復基調にあることを示した。個人消費は高い水準で景気をけん引し、輸出も2四半期続けて伸びた。賃金に上昇の兆しもある。一方で、設備投資はわずかな減少ながら6四半期続けて前期を下回り、回復力を欠く。来年4月の消費増税に向け、政策効果があるうちに自律的な回復の力を強める必要がある。

「(消費増税を)判断する材料の一つが出てきた」。12日午前、GDP速報値を受けて記者会見した甘利明経済財政・再生相は、消費増税に向けた認識を問われると慎重に言葉を選んだ。消費増税の判断について月末に有識者と会合を持つためではあるが、速報値そのものに良い面と悪い面があったからでもある。
良い面は個人消費が実質の前期比で0.8%増と1~3月期と同じ水準を保ち、堅調な成長になったことだ。所得の動きを示す名目雇用者報酬も「雇用者が増えたことを主因」(内閣府)に前年同期比1.0%増えた。
消費増税法を議論する過程では増税を止める要件として、08年のリーマン・ショックのような急激な経済環境の変化が想定された。4~6月期の日本経済はこれに比べれば堅調だったといえる。
民間の事前予測を下回る要因となった住宅投資と公共投資は、工事の進捗に合わせてGDP統計に反映される。4~6月期が伸びなかった分、7~9月期のGDPを押し上げる可能性がある。年内のGDPは政策の影響で下支えされる可能性が高まったといえる。
一方で企業活動は自律的な回復の勢いがまだ強まっていない。設備投資は前期比0.1%の減少で、内閣府によると増加に貢献したのは建設関連。公共事業に関連する分野と比べ、民需にかかわる投資の動きは鈍い。輸出は前期比3.0%増だったが、伸び率は1~3月期に比べて縮小した。
消費増税に向けては、企業が投資を積み増し、収益をあげて賃金として従業員に還元するという好循環が重要となる。円安に伴う輸出増がいつ勢いを増すかも、企業の投資意欲を左右する。
物価の動きは今後の景気に大きな影響を与えそうだ。名目値が実質値を下回り、デフレの象徴とされる「名実逆転」は3四半期ぶりに解消。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは4~6月期に前年同期比0.3%のマイナスだが、1~3月期に比べてマイナス幅が0.8ポイント縮小した。消費者物価は前年に比べて上がるか、下落幅が縮まる品目が増えている。デフレ脱却に向けた動きがある。
内閣府は8月2日、13年度の実質経済成長率を2.8%とする見通しを発表した。見通しの達成には14年1~3月期までの3四半期でそれぞれ前期比1.1%程度の成長を続ける必要がある。高成長を達成するためにも、企業の投資を押し上げる施策が欠かせない。