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参院選最終日、「消費税」一色に

参院選は10日、17日間に及ぶ選挙戦の最終日を迎える。公示前に菅直人首相が消費税率の10%への引き上げに言及したことで、論戦は消費税問題一色に。ただ、首相提案が唐突だったことや揺れ動いた発言を野党が批判。増税分の使途や税率の妥当性などの論争は深まらず、米軍普天間基地の移設問題や「政治とカネ」を巡る議論は置き去りになった。

「私が消費税に触れたことが、すぐに引き上げがあるのではとの心配につながったかもしれない」。首相は9日、山形県天童市内で記者団に対し、民主党の苦戦は消費税を巡る自らの発言が一因と初めて認めた。この後の千葉市内の街頭演説では「次の衆院選までは一円たりとも上げない」と強調した。

首相や民主党幹部は当初「今年度中に消費税増税を含む税制改革の大枠を示す」「増税実施は最短で2012年秋」などとぶち上げていた。発言の後退感は否めない。タブーとされた増税論を打ち出し、責任与党をアピールする首相サイドのシナリオは選挙戦の間ですっかり狂った。

もともと首相側には、消費増税に世論の理解が進んでいるとの判断があった。日本経済新聞の6月上旬調査では「次期衆院選後の消費税率上げ」に賛成が59%と、反対の27%を上回っていた。自民党も参院選マニフェスト(政権公約)で10%への税率上げを明記した。

ここが勝負どころと記者会見で消費増税に言及したのが6月17日。ただ、十分な党内論議を経ないやり方には民主党内からも反発がでた。ある与党幹部は「10%という数字を出したことで、無駄削減をいくら言っても負担増が先行する印象になった」と悔やむ。

追い打ちをかけたのが6月30日の首相発言だ。内閣支持率の低下の一因が消費税問題との見方がでるや、低所得者対策として税還付の具体案に言及し始める。しかし、税金還付対象の年収水準が200万~400万円の間で金額が揺れ動き、野党は「民主党案は生煮えの議論」などと批判を強めた。

首相はその後、還付の具体案への発言を封印。所得税累進課税強化や環境税の導入など税制改革全体に話題を広げる戦術も試みた。ただ、守勢に回った感は否めず「(消費増税が)唐突な提案と思われたら説明不足だった」などと釈明に追われた。民主党の小沢一郎前幹事長が不快感を示すなど党内の調整不足も露呈した。

「最近、菅さんは消費税の問題を封印しようとしている。何でこんな迷走が起きるかというと本当に日本の経済を立て直そうという信念で言ったものじゃないからだ」。自民党の谷垣禎一総裁は9日、千葉市での街頭演説で首相の消費税発言のぶれを批判した。

谷垣氏は消費税を社会保障財源として税率を当面10%に引き上げる案を自民党の参院選公約に明記。当初は争点をなくす「抱きつき戦術」への警戒感を隠せなかったが、首相への反発が強いとみると、二転三転する首相発言への批判に軸足を移した。

他の野党の中で、首相が呼びかけた超党派協議への参加に前向きな姿勢をみせたのはたちあがれ日本くらい。消費増税の必要性では一致する新党改革や公明党も「増税の前にやるべきことがある」との論理で批判を強めた。

財政悪化が深刻になる中、消費増税と対をなすはずの社会保障政策をどうするか、税収を何に充てるのか、10%への引き上げで足りるのかなどの論点は、最後まで深まらなかった。

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