膨らむ社会保障費、歳出改革が不可避 消費税10%でも財源不足

2010/7/7付
保存
共有
印刷
その他

11日投開票の参院選を巡って、民主、自民の二大政党が消費税率の「10%」への引き上げに言及している。背景にあるのが社会保障予算の膨張による財源不足だ。必要な予算額は高齢化に伴う自然増だけでも、年1兆円のペースで増え続ける見通し。消費税率を仮に10%に引き上げても財源の「穴」を埋め切れそうにない。膨らむ歳出の抑制に向けて社会保障の制度改革は欠かせないとみられるが、選挙戦での主張からは道筋が見えてこない。

厚生労働省の試算によると、年金や医療、介護などの社会保障給付額は、国・地方の財政負担や個人の払った保険料からの給付を合わせて2011年度で105兆円。現行制度を維持した場合も、高齢化の影響で25年度には141兆円と、約36兆円増える。年金が1.2倍、医療が1.5倍、介護は1.9倍に膨らむ見通しだ。

社会保障の財源はすでに大幅に不足している。例えば、消費税は予算総則で高齢者医療、基礎年金、介護の3分野に充てることが決まっている。10年度予算ではこの3分野で9.8兆円の財源不足が生じている。菅直人首相が「参考にしたい」と語った自民党の消費税「当面10%」の主張は、この財源不足を補てんするのが主な狙いだ。

消費税は1%の引き上げで2.4兆円程度の増収が見込めるが、現行制度では消費税収のうち国が使えるのは約56%。残りは地方に配分している。現行の配分を前提にすると、仮に消費税率を10%に上げても、現在の不足分さえ埋め切れない。

民主党は社会保障の充実も訴えている。参院選のマニフェスト(政権公約)では、すべての人が受け取れる月7万円の最低保障年金の実現や、診療報酬の引き上げ、子ども手当の給付額(現行1人月1万3000円)の上積みなどを掲げた。自民党もマニフェストで、子どもの医療費無料化などを明記した。ただ必要な財源をどのように確保するかは、いずれも説明不足なままだ。

財源不足に対応するには、膨張する社会保障費の抑制策が欠かせないとみられる。年金や医療を少子高齢化の進展に堪えられるような仕組みに見直していくことが課題になる。だが民主党は年金制度改革や、後期高齢者医療制度の廃止に伴う後継制度などの具体像の提示を避けている。自己負担割合の引き上げといった負担拡大や、給付の抑制にも踏み込まなければ、社会保障費の抜本的な抑制にはつながらない。

病院での重複検査の抑制などに役立つとされるレセプト(診療報酬明細書)のオンライン化。新薬に比べて価格が安い後発医薬品の普及。これらも進ちょくが遅れている感は否めない。

小泉政権時代には社会保障費の伸びを年2200億円抑制する目標を設定していた。しかし民主党政権は医療の質の低下につながったとして、昨夏の衆院選マニフェストで「2200億円抑制の撤廃」を公約に掲げ、10年度予算で実現した。

6月に策定した財政運営戦略も、歳出分野ごとの削減・抑制目標を盛り込むことは見送った。歳出抑制の努力をせずに、消費税増税頼みになれば、税率の大幅な引き上げが必要になってくる。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]