成長戦略第3弾 首相の講演要旨

2013/6/6付
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日本は20年にわたるデフレによって深い自信喪失という谷に落ち込んでしまった。大胆な金融政策と機動的な財政政策。最初の2本の矢は日本の自信を取り戻すための取り組みだった。

経済政策の本丸は、3本目の矢である成長戦略だ。要諦は民間の創造的な活動を鼓舞し、あらゆるイノベーションを日本中で起こすこと。日本企業の持つ様々な可能性を解き放ち、世界に展開することで世界の発展に貢献する。これが私の目指す成長の姿だ。

■改革に終わりはない

成長の主役は活力あふれる民間の皆さんだ。企業経営者に求められているのはスピード感。そしてリスクを恐れず決断し、行動する力。私もリスクを恐れず改革を果断に進めていく。規制改革こそ成長戦略の「一丁目一番地」だ。

「国際先端テスト」で企業活動の障害を徹底的に取り除く。インターネットによるすべての一般医薬品の販売を解禁する。消費者の安全性を確保しつつ、しっかりしたルールの下で解禁する。

次の参院選からネット選挙が解禁となる。IT(情報技術)時代に対応した大きな改革の一つだ。健康食品の機能性表示を解禁する。農産物の海外展開も視野に、諸外国よりも消費者にわかりやすい機能表示を促す仕組みも検討したい。目指すのは「世界最先端」。世界で一番企業が活躍しやすい国の実現が安倍内閣の基本方針だ。

(保険診療と保険外診療を併用する)いわゆる「混合診療」の問題。この世界を大きく進化させる。保険外併用の対象となる「先進医療」について国が全面的にサポートする形に切り替える。最先端の医療技術が生まれれば速やかに先進医療と認定し、保険外併用の範囲を拡大する。

農業の分野では「農地集積バンク」への取り組みを強化する。必要な手続きの透明化、簡素化を進め、利用可能な農地がどこにあるのか誰でも見ることができるよう「農地利用電子マップ」を早急に整備する。

新しく「国家戦略特区」を創設し、国際的なビジネス環境をつくる。トップクラスの外国人医師も日本で医療ができるよう制度を見直す。インターナショナルスクールの設置を困難にしているルールは大胆に見直す。職住近接のため街の中心部での居住を促すべく容積率規制も変える。

国自身が目的を明確にし、主体的にできることは何でもやっていく。これが私の考える国家戦略特区だ。「聖域」はない。来週決定する成長戦略は1つの通過点でさらなる高みを目指す。いわば「成長戦略シーズン2」に向けたスタートだ。

■「官業」を大胆に開放する

エネルギー、医療、インフラ整備――。がんじがらめの規制を背景に、公的な制度や機関が民間の役割を制約している。「官業」の世界を大胆に開放し、日本人や日本企業が持つ活力を自由に解き放つ。これが安倍内閣の仕事だ。

【多様なエネルギービジネス】

電力システム改革では小売りの全面自由化と発送電の分離でイノベーションの可能性を存分に引き出す。コスト高、供給不安、環境制約など電力システムを取り巻く課題を同時に解決する、ダイナミックで壮大なエネルギー市場の創造に向けて誰もがチャレンジできる環境をつくる。16兆円もの国内市場から生み出される多様な電力ビジネスは世界を席巻できる。

世界の安定成長と地球温暖化対策に貢献する鍵は石炭火力の高効率化にかかっている。高効率化をさらに進め、世界に展開する。国内でも世界最先端の技術を導入する石炭火力発電であれば新規建設ができる。環境アセスメントの運用を見直した。風力発電や地熱発電など再生可能エネルギーの発電施設もアセスメント期間を大幅に短縮し、投資を加速させる。今後10年間の日本の電力関係投資は、過去10年間の実績の1.5倍である30兆円規模に拡大できる。

【新たな健康長寿産業の創造】

健康長寿ビジネスが民間主導でどんどん生まれつつあるが、ここにも規制が立ちはだかる。医療行為との線引きが不明確という問題だ。民間の健康・予防サービスに新規参入する皆さんを法的に認定する新たな仕組みをつくる。事前に確認を受けることで規制のグレーゾーンを取り除き、適法なビジネスだとお墨付きを受けることができる。

新規参入に拍車をかけるために疾病治療中心の保険制度の運用を見直す。いわゆるレセプト(診療報酬明細書)の電子化を新たな産業を生み出すために活用する。現在の医療費約40兆円の1%でも健康・予防サービスに振り向けられれば、4千億円もの新たな市場が生まれ、民間のサービスを生み出すカネの流れができる。得られるものは誰もが求める「健康長寿社会」。10年後には60兆円近くまで増加が見込まれる医療費も、官業を開くことで抑制につなげることができる。

【インフラ分野での民間の力の活用】

社会資本整備は高度成長時代の1960年代から80年代にかけてピークを迎えた。今後20年で建設後50年以上を経過する施設が加速度的に増える。最新技術を活用し、コストを抑えながら安全性の向上を図るインフラ長寿命化基本計画を本年秋にとりまとめる。

PPP(官民パートナーシップ)やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)の手法を活用し、公的な負担をできるだけ軽減する。空港、上下水道、高速道路など施設ごとの特性に応じた事業を推進。基本計画を基に今後10年間で過去10年間の実績の3倍にあたる12兆円規模のPPP、PFI事業を推進する。

「芸術は爆発だ!」。大阪万博の「太陽の塔」で世界の度肝を抜いた岡本太郎さんの有名な言葉。一人ひとりがその生き方に誇りを持ち、それぞれの持ち場で全身全霊をぶつける。岡本さんの言葉は実は人生論であり、成長論でもあると思う。今こそ日本人も日本企業も「爆発」すべき時だ。民間活力の爆発――。これが成長戦略の最後のキーワードだ。

■成長戦略が目指すもの

「女性の活躍」「世界で勝つ」「民間活力の爆発」。これで私の成長戦略の3本柱がそろう。成長戦略では「達成すべき指標」(KPI)を年限も定めて明確にする。

○3年間で、民間投資70兆円を回復

○2020年にインフラ輸出を30兆円に拡大

○20年に外国企業の対日直接投資残高を2倍の35兆円に拡大

○20年に農林水産物・食品の輸出額を1兆円に

○10年間で世界大学ランキングトップ100に10校ランクイン

目標達成まで政策を打ち続ける。最も重要なKPIは1人あたりの国民総所得だ。成長戦略の目指すところは「家計が潤う」こと。この数年間で失われた50兆円に及ばんとする国民総所得を当面3年間で取り戻せるはずだ。

眠っている資金を動かして国内外の潜在市場を掘り起こし、民間投資を喚起する。人材、技術、資金を生産性の高い部門へシフトし、1人あたりの売り上げを伸ばす。その果実を賃金・所得として家計に還元する。所得の増加は消費を押し上げ、さらなる成長につながる。まさに家計を中心とした成長の好循環の完成だ。

成長シナリオを実現できれば、1人あたりの国民総所得は最終的には年3%を上回る伸びとなる。10年後には現在の水準から150万円(以上)増やすことができる。「停滞の20年」から「再生の10年」へ。成長戦略で日本経済を停滞から再生へと転換していく。

危機的な状況を突破するには次元の違う政策が必要。進め方も次元の違うやり方が不可欠だ。急ぐものはこの秋にも政府として決める。政府も党も一体となって成長戦略を実行に移していく。

政策実行に必要なものは政治の安定だ。東京都議選、参院選へと暑い「選挙サマー」に突入する。政治の迷走を生み出してきたねじれ国会はもうたくさんだというのが皆さんの共通の思いではないか。今回の参院選は日本の政治を取り戻す戦いでもある。

復興の加速化、教育の再生、外交・安全保障の立て直しもこれからが正念場だ。サッカー日本代表がワールドカップ出場に一番乗りを果たした。日本もまた、世界の中心に躍り出さなければならない。日本を「もう一歩前へ」。成長への歩みを着実に進めていきたい。

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