首相、「県外移設」を撤回 交渉に成算なく

2010/5/4 23:18 (2010/5/5 10:26更新)
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宜野湾市の伊波洋一市長(右)の案内で普天間基地を視察する鳩山首相(4日午後、沖縄県宜野湾市)

宜野湾市の伊波洋一市長(右)の案内で普天間基地を視察する鳩山首相(4日午後、沖縄県宜野湾市)

鳩山由紀夫首相は4日、沖縄の米軍普天間基地の移設問題で「最低でも県外」との自らの約束を撤回した。昨年の衆院選前から首相発言への期待を高めていた地元の反発は強まる一方で、首相が分散移転を検討する鹿児島県徳之島の3町長も7日、東京で首相に直接、反対を伝える。地元、米国、連立政権を組む社民党の3者がそろって納得する妙案はない。首相を待つのは展望も成算もない交渉だ。

政府が検討中の移設案は(1)名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てる現行計画を修正し、くい打ち桟橋工法で滑走路を造る(2)徳之島に沖縄の米軍ヘリ部隊を移すか、訓練の一部を移転する――の組み合わせが軸だ。

首相には「自然への冒涜(ぼうとく)」と自ら批判した埋め立て方式でなければ、地元が理解してくれるのではないかとの「淡い期待」もあった。だが、政府内の検討でも工期は7年程度と長期間にわたる。米側には「不安定な桟橋方式はテロの対象になりやすい」との懸念も強い。

沖合に滑走路を浮かべる「メガフロート案」は工期は10年程度とさらに長引くうえ、経費も膨大になる。技術的にも高度で地元沖縄への経済的効果はあまり見込めない。

いずれの案も1996年の普天間返還で日米が合意した直後の数年間で検討され、様々な理由があって消えていった案でもある。桟橋方式、メガフロート方式ともに環境影響評価(アセスメント)が再び必要になれば、辺野古への移転を歓迎する米国も反対しかねない。

それでも政権交代から約8カ月たち、辺野古沖に逆戻りした理由を首相は、最近になって使い始めた「抑止力」に求めた。

「政権を持つなかで抑止力の必要性、日米同盟の重要性を認識せざるを得ない状況に変質した」

「陸上部隊と共同訓練をするなかで、あまり遠くに普天間基地の移設先を求めるのは現実的ではないとの結論に至った」

4日、対話集会での首相の説明に、住民の反応は冷めていた。

徳之島案も実現は極めて困難だ。

徳之島には2000メートルの滑走路があり、首相は普天間の航空部隊を最大で1千人規模で移す案を考えている。沖縄県民には県外移設の組み合わせで「負担軽減」をアピールできても、徳之島3町長の反対姿勢は揺るぎそうもない。有事即応部隊で、訓練から出撃までを一体運用する米海兵隊も沖縄から200キロメートルも離れた徳之島への移転は受け入れない構えだ。

4日は日米の実務者協議が一応、始まり、首相は沖縄での一連の会談でも「米国と議論が進められ始めている」などと繰り返し強調してみせた。決着期限に設定した「5月末」を、日米で協議中との口実で乗り切ろうとの思惑もある。

首相は大型連休明けには、与党3党首でつくる基本政策閣僚委員会で政府案を正式決定する段取りを描いていた。だが社民党は県内移設案には反対を貫く構えで与党内調整は手つかず。政府案を決める展望さえない。首相自らが直接行動に出たことで、5月末には進退問題に発展しかねない。

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