2019年2月19日(火)

「法の番人」にも安倍色 法制局長官に小松氏

2013/8/3付
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安倍晋三首相は政府の憲法解釈を担う内閣法制局の長官に、集団的自衛権の憲法解釈の見直しに前向きとされる外務省出身の小松一郎フランス大使を充てる人事を決め、集団的自衛権の行使容認へ布石を打った。「通貨の番人」の日銀総裁に続く「法の番人」の一本釣り。解釈変更に向けた議論を月内に本格化させる。

自国とかかわりが深い国が武力攻撃を受けた場合、自国への攻撃とみなして反撃する集団的自衛権。首相と法制局には「因縁」がある。2004年の自民党幹事長時代、「集団的自衛権は有しているが、行使は許されない」との法制局見解について「その理屈からすると、日本はいわば禁治産者なのか」と不満をぶつけた。第1次安倍内閣では宮崎礼壱法制局長官に新たな解釈の変更を指示したが、抵抗されるなど、法制局にかねて不満を抱いてきた。

歴代の法制局長官は内閣法制次長からの昇格が慣例。外務省出身者として初めて長官に就く小松氏は条約課長や国際法局長を歴任したが、法制局に出向したことはない。第1次安倍内閣では、集団的自衛権の行使をめぐる「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の実務に携わった。「解釈変更により前向きな人材を選んだ」と政府関係者は明かす。最高裁判事が先月中旬に空席となったタイミングを捉え、現在の山本庸幸長官を同判事に充てる案が官邸主導でつくられた。

法制局が政権の「壁」になった例は首相に限らない。1990年の湾岸危機に際し自衛隊による多国籍軍への後方支援を探った海部政権では、法制局が自衛隊の海外派遣に慎重な憲法解釈を繰り返し、構想は結局頓挫。当時の小沢一郎自民党幹事長は「首相の権限で長官のクビをとればいい」と法制局を批判した。

小松氏が法制局を率いることで首相と法制局の決定的な対立は避けられそうだ。だが「結論ありきの人事で組織の公平性に疑念を抱かせる」(成田憲彦駿河台大教授)との声も出ている。法制局が首相の意向通りに憲法解釈を変えるかは不透明だ。法制局のある職員は「長官が代わったからといって、積み重ねてきた法的なロジックが変わることはない」と話す。

政府は今月後半から集団的自衛権の懇談会の議論を再開し、秋にも報告書を提出する。これを受け、行使を容認するために憲法解釈をどのように変更するかを詰める。

憲法9条にかかわる解釈を一変させるのは難しいが、国会答弁に立つ長官の交代で解釈に一定の影響が及ぶとみる専門家は多い。政府内では行使の根拠となる法案を来年の通常国会にも提出する案が浮上している。

連立を組む公明党の幹部は「解釈を変えるなら10年単位での議論が必要だ」と指摘する。政府内でも「懇談会の報告書が出てからある程度の時間が必要だ」と、年内に解釈変更に踏み切るのは困難との見方もある。

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