節電定着で電力に余力 今冬見通し、経産省発表
経済産業省は1日、今冬の電力の余力を示す予備率が全国で安定供給の目安となる3.0%を確保すると正式に発表した。原子力発電所がすべて止まっても、企業と家庭の節電が定着し、電源をつくるのと同じ効果をもたらし、電力の供給に余裕が生じる。経産省は節電の継続がどこまで見込めるのか慎重に検証する。
冬場にかけて原発の停止に伴う電気料金の上昇で家計や企業の負担がどう増すかも焦点になる。エネルギー基本計画の策定に向け経産省が企業に緊急で聞くと、9割を超す企業が「電気料金の上昇を価格転嫁できず、営業利益を圧迫している」と答えた。分野を代表する25社を抽出して調べると5社は海外生産の拡大や海外移転に言及した。2日の基本政策分科会で結果を公表する。
一方、冬の節電対策の取りまとめに向け電力需給検証小委員会(委員長・柏木孝夫東京工業大学特命教授)が始動した。月内に節電対策をとりまとめる。1日には大手電力9社が今夏の電力需給の状況を報告した。全国で想定外の猛暑となったが、火力発電所のフル稼働でしのいだ。
今冬は原子力発電所が1基も稼働しない前提で、2011年度(北海道は10年度)並みの厳寒を想定する。企業の節電は昨冬の約8割が続くと仮定した。火力発電所のフル稼働や他地域からの融通で原発停止の影響が大きい関西・九州でも予備率は3.0%を確保する。冬に需要のピークを迎える北海道は6.9%となる見通しだ。
経産省が関西・九州の大口需要家に実施した意識調査では「節電の行動が定着した」との回答率が55%だった。経産省は昨冬並みの節電が100%定着する場合の試算も同時に示した。北海道の予備率は8.1%となるなど全国で供給余力は大幅に増す。一方、「将来も需給の逼迫が続けば生産・営業を抑える」と答えた企業は4割にのぼる。
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