経済財政白書、デフレに「変化」と指摘 消費増税の必要性訴え
甘利明経済財政・再生相は23日の閣議に2013年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。日本経済について「緩やかなデフレ状況が継続しているものの、13年3月以降、変化がみられる」と指摘した。日銀による物価安定目標の設定や量的・質的金融緩和の導入などの経済政策を「レジーム転換」と評価した。
白書の副題は「経済の好循環の確立に向けて」。デフレに関しては、名目金利から物価上昇率を差し引いた実質金利が09年から11年まで高止まりしたことが実質国内総生産(GDP)を累積で約8.5兆円押し下げたと試算した。リーマン・ショック後に一方的に進んだ円高が、デフレを「相互作用的」に深刻化させたと分析した。
最近の日本経済については、金融緩和や緊急経済対策への期待で家計の低価格志向が弱まっていると指摘。輸入物価や企業物価を通じたデフレ圧力が円安で解消しつつあることにも触れ「デフレ状況に変化が見られ、産業空洞化の懸念が後退する動きも見られる」とした。足元では予想物価上昇率が高まるに伴って実質金利が低下。設備投資をはじめとした実体経済の改善にプラスに働く可能性があると指摘した。そのうえで「景気回復と企業収益の改善に伴って賃金が上昇するような環境を整備する必要がある」と訴えた。
12年秋からの円高是正に関しては「1円の円安で企業収益は年ベースで1.0%増加する」と試算。業種によって影響は異なると断ったうえで、外貨建ての資産や所得の為替評価差益の増加、輸出採算の好転を通じて企業の収益改善につながるとの見方を示した。輸出回復は設備投資の持ち直しに寄与するとした。
消費増税が経済成長の足かせになるとの懸念には、08年のリーマン・ショック後に付加価値税(日本の消費税に相当)増税が相次いだ欧州連合(EU)の例を挙げ「(増税で)必ずしもマイナス成長に陥るわけではなく、経済全体を低迷させるものとはならなかった例も多い」と説明。消費増税をしても国内景気の失速は避けられるとの見方を示唆した。
長期金利は今のところ国際比較では低位で安定しているとし「財政の持続可能性に対する市場からの信認は維持されている」と指摘した。一方で今後も信認を維持するためには、経済財政運営の基本指針である「骨太の方針」に沿って「中長期的に持続可能な財政構造を目指すことが必要」と強調。欧州債務危機に触れつつ「財政健全化は喫緊の課題」と理解を求めた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕