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緊急経済対策で市場どうなる プロの見方

政府は11日の閣議で緊急経済対策を決定した。経済再生に向け10.3兆円の国費を投入し、政策金融などを含む事業規模は20.2兆円となった。マクロ景気に対する効果や市場への影響などを市場関係者に聞いた。

株式市場は企業重視への転換好感

芳賀沼千里・三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフストラテジスト 緊急経済対策が閣議決定した。円高・デフレからの脱却などを据えた内容で、これまで民主党が掲げた、再配分を重視した「最小不幸社会」政策から企業重視の政策への転換が明確だ。足元で低迷する経済を浮揚させる効果が見込まれ、株式市場も好感するだろう。

もっとも、1カ月ほどすると円相場と株価の動きの相関性は薄れるだろう。緊急経済対策では震災からの復興や老朽化した社会インフラ対策なども盛り込まれたが、効果が一過性のものであっては意味がない。投資家の関心はその次の段階の、企業業績が伸びてくるのか、日本企業に本当に成長性があるのか、という論点に移ってくる。そのためには環太平洋経済連携協定(TPP)や規制緩和の実施、従来型の公共投資ではなく地方ごとに投資方針を決めるなどして投資効率を向上させる仕組みづくりなどが重要になってくる。

金融緩和強化へ強い意志

矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト 政府は11日、緊急経済対策を閣議決定した。デフレ脱却のための金融緩和強化へ強い意志がうかがえる。政府と日銀が共同文書で拘束力の強い政策協定(アコード)を結ぶことも視野に入っており、株式市場にとっておおむね好材料といえるだろう。ただ、金融緩和への意志とともに成長による富の創出を盛り込むなど、今回の経済対策は「即効性」と「成長性」の2つのいいとこどりをしている面も否めない。

個別にみると、復興・防災対策への強い意志がうかがえる。もっとも、復興に関しては予算をつけても執行する機関がうまくいっていない面が強まっている。予算をつけるだけでなく、執行組織も含めた全体のビジョンを考え直す必要があるだろう。

足元の日本株相場は円安を受け、上昇が続いている。ただ、今後、経済財政諮問会議や予算編成などで民主党政権との違いを見せることができなければ、市場の失望を誘う可能性もある。

防衛関連銘柄に物色も

門司総一郎・大和住銀投信投資顧問チーフストラテジスト 政府が11日の閣議で決定した緊急経済対策は景気にとってプラスだ。2013年度の実質経済成長率を0.5~1%程度押し上げる効果があるだろう。注目したいのは、防衛省が防衛装備品整備を盛り込んだこと。13年度予算案では防衛関連費を11年ぶりに増額するとも伝わっている。今後、海上保安庁や自衛隊の装備強化の流れになる可能性が高く、日本の国防政策転換の一里塚になる。年内の主要なテーマのひとつになり、国防関連の三菱重や島津などの株価上昇の一因になる可能性があるだろう。

もっとも、安倍晋三首相と民主党の野田佳彦前首相の12年11月の党首討論から日経平均株価は2割以上上がっている。緊急経済対策に関する事前報道も相次ぎ、公共投資の恩恵を受けやすい建設・橋梁(きょうりょう)株など対象となる銘柄は相当程度買い進まれてきている。景気を浮揚させる効果はあるものの、一段の株高は見込みにくいだろう。

13年度GDP0.4ポイント押し上げか

丸山義正・伊藤忠経済研究所主任研究員 20兆2000億円の緊急経済対策のうち、即効性がある景気刺激策は5兆5000億円規模の防災・減災対策だ。関連した公共投資支出は早ければ4~6月期には出てくる。日銀への金融緩和を求めており、日銀が緩和的な金融政策を維持することで金利の上昇を抑制する。2013年度の実質国内総生産(GDP)成長率は前年度比2.0%上昇になり、今回の対策で0.4ポイント程度の押し上げ効果があるとみている。

もっとも、公共投資では財政支出の効果が後ずれする可能性がある。建設業界では人手不足が深刻になっており、需要の回復に対応できなくなっているためだ。今後は財政再建への取り組みとともに、成長力強化の具体策を示す必要がある。経済財政諮問会議などでの議論を経た「骨太の方針」で具体策がまとまるだろう。

国債の増発規模に関心

末沢豪謙・SMBC日興証券チーフ債券ストラテジスト 政府が閣議決定した緊急経済対策は予算規模が大きく、相当の景気浮揚効果があると考えている。景気刺激効果が早く出るよう、即効性の高い政策も多く盛り込まれているようだ。

今回の対策は従来想定された政策に頼る内容となっているため、来年度予算の編成に向けて中長期的な成長戦略に結びつくものを計上していくことが必要になる。規制緩和や税制改正なども含め、より中長期に民間の潜在需要を顕在化する政策がなければ、短期的な景気刺激効果にとどまる可能性がある。

もっとも、債券市場関係者にとっては経済対策の内容よりも財源となる国債の増発規模への関心が高い。財務省が10日開いた国債投資家懇談会と国債市場特別参加者会合を受け、2月からの増発の可能性が高まった。11日の債券市場では既に需給の緩みを警戒した売りが出ている。来年度は借換債以外の増額規模が不透明だ。4月以降の増額規模がより拡大する可能性もあり、来年度予算編成の内容を見守りたい。

〔日経QUICKニュース(NQN) 高和梓、酒井隆介、三輪恭久、片岡奈美〕

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