金融ニッポン 日比野・大和社長「NISAを全力で」(金融力シンポ)

大和証券グループ本社の日比野隆司社長は8日午後、「ニッポン金融力会議」のプロジェクト、第5回トップシンポジウム「飛躍の条件」(主催・日本経済新聞社)で講演した。安倍晋三政権の誕生や打ち出した経済政策によって「(株式相場が)極めて短期間に異常値を修正した」と一定の評価を示した。ただ「貯蓄から投資への機は熟したままで(資金が)投資には向いていない」とも指摘し、投資をさらに活発にすることを今後の課題に挙げた。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」で株式相場は上昇したが、日比野氏は「『貯蓄から投資へ』のシフトは緩慢」と述べ、日銀の資金循環統計をもとに2012年9月末と13年6月末の個人の金融資産を比較すると投資信託は資金が流入した一方で、株式・出資金からは資金が流出したことを紹介した。加えて、株式式場で「国内機関投資家のプレゼンス低下が著しい」と述べ、外国人投資家、一部のヘッジファンドの動向に振り回される市場の脆弱性に懸念を示した。そのうえで「国内投資家が厚みを増し、投機的な売買によって乱高下することのない市場となることが今後の課題だ」と述べた。
14年1月から始まる少額投資非課税制度(NISA)について大和証券グループ本社の今後の戦略として「全力でNISAに取り組む」と強調した。同時に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用ポートフォリオを見直す点について「(他の年金基金の運用など)波及効果が大きく期待している」と歓迎した。併せて「公的資金の運用改革やNISAという制度の導入を(市場の脆弱性や国内機関投資家のプレゼンス低下といった問題の)解決の突破口にいかしていかなければならない」との見方を示した。
「失われた20年を経て経済が再び活力を取り戻し、持続的な成長を遂げていくためには潤沢な資産が企業の成長マネーとして積極的に使われなくてはならない。証券会社は膨大な金融資産を活性化し、企業のリスクマネーとして潤沢に提供するという本来の役割が求められている」とも語った。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
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