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ユーロ全面安、口実となるECB緩和論

利下げにはハードルも

1日の外国為替市場で、ユーロが主要通貨に対して全面安になった。前日の海外市場でユーロ圏の経済指標の発表を受けて欧州中央銀行(ECB)の利下げ観測が浮上。東京市場でもユーロ売りは止まらず、対円で1ユーロ=132円60銭近辺と3週間ぶり、対ドルで1ユーロ=1.3539ドル近辺と2週間ぶりの安値を付けた。景気に底入れ感が見え始めたユーロ圏の追加緩和策に関心が集まっている。

「相場がECBの緩和を織り込み始めているのかもしれない」。前日の欧州市場の動きを振り返って、国内銀行の為替担当者はこう話す。ユーロ圏の失業率がユーロ創設の1999年以来最も高くなるなど景気低迷を示唆。にもかかわらず独仏ではともに主要株価指数が年初来高値に上昇し、10年物国債利回りは低下した。緩和効果で株式と債券の両市場にマネーが流れ込むと見越した動きだ。

JPモルガンは10月31日付のリポートで「ECBは12月5日の理事会で政策金利を引き下げる」と述べた。同日発表されたユーロ圏の消費者物価指数の伸びが予想以上に低かったことを理由に挙げた。UBSは「11月7日の理事会での政策金利を引き下げる」と予想した。早期の利下げを見込む声が目立ち始めている。

JPモルガン、UBSの予想はともに政策金利を現行の0.50%から0.25%へと引き下げる内容だ。この利下げはもう一つの問題を生むことになる。

ECBは政策金利を中心にプラスマイナス0.5%のコリドー(変動幅)で貸出金利と預金金利を設定している。現在は政策金利が0.50%だから、貸出金利は1.00%、預金金利は0.00%。現行のコリドーのまま利下げすれば、預金金利がマイナスになってしまう。ECBはこれまでマイナス金利を導入したことがないため、「意図しない結果をもたらすかもしれない」(プラートECB専務理事)と慎重論が根強い。

そこで浮上するのがコリドーの縮小だ。コリドーを0.25%にすることでマイナス金利を避けることができる。だがECB理事会のメンバーであるクノット・オランダ中央銀行総裁は10月に「コリドーを縮小をすれば銀行間融資の回復を妨げる恐れがある」との見方を示したとされる。「中銀の貸出金利が市場金利に近づき、市場の金融仲介機能を低下させてしまう」(みずほ総合研究所の中村正嗣シニアエコノミスト)懸念がつきまとうからだ。

そのためECBの緩和策としては2012年2月以来実施されていない長期流動性供給(LTRO)の再開が現実的との見方が多い。第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは「南欧諸国の金融機関の資金繰りに効果がある」と認めるものの、「どの程度の応札があるかは未知数」という。

10月30日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文がやや緩和縮小寄りなタカ派的な内容となり、米国の財政問題への懸念が一服した。このタイミングで「これまでのドル売り・ユーロ買いの持ち高を解消したい投資家は多い」(国内銀行)。

実際のECBの金融緩和にはいくつかのハードルを伴いそうだが、にわかに台頭した利下げ説がユーロ売りの口実として使われていることは間違いない。〔日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一〕

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