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駅に蓄電池・太陽光パネル…JR東日本の環境対応

 JR東日本は、環境に配慮した駅を管区内の各地に展開するモデル事業を進めている。まず、2012年3月に東京・四ツ谷駅を環境配慮型の駅「エコステーション」として整備。これを皮切りに今後10年で12駅をエコステーションに変える。節電や太陽光発電などのほか、駅の緑化など地域特性に合わせた駅づくりを展開している点が特徴だ。

JR東日本は、省エネを進め、再生可能エネルギーを導入するなど環境配慮技術を取り入れた駅を「エコステーション(以下、エコステ)」として整備してきた。2012年3月には最初のモデル駅として、東京・四ツ谷駅をお披露目。そして6月末には世界文化遺産の玄関口である岩手県・平泉駅をエコステのモデル駅とし、整備を完了した。

同社は2008年にグループ経営ビジョンを策定。そこでエコステを整備し、全12支社でモデル駅を1駅ずつ設ける計画を打ち出していた。モデル駅で実証した後、他の駅にも展開していく予定だ。

駅を環境配慮型にする例は他の鉄道会社にもある。JR東日本の特徴は、管轄エリアが広いことからそれぞれの地域性を生かし、様々な環境技術を組み合わせる点だ。四ツ谷駅や平泉駅は太陽光パネルを導入したが、温泉が近い地域では温泉熱の利用や地熱発電を、風が強い地域は風力発電の導入を検討する。また、エコステでは省エネや「創エネ」を行うだけでなく、緑化したり、国産材や間伐材を使用するなど多様な環境技術を取り入れていく。発電の様子を乗客に伝える電子表示盤も設置する。

太陽光やコケ緑化など多彩

四ツ谷駅は初のモデル駅であり、盛りだくさんの技術を導入した。まず、赤坂口駅舎に50kWの太陽光パネルを設置し、照明や空調の電力に使用している。四ツ谷口駅舎の上は天窓にし、そこにシースルー型の0.2kWの太陽光パネルを設置することで、日中の太陽光を透過させながら発電できるようにした。

ホームやコンコースの電気掲示板はLED(発光ダイオード)照明にした。家庭用燃料電池エネファームを導入し、そこで発生する電気と熱を駅事務室で使用している。

赤坂口と四ツ谷口の改札を出たところには、現在何kWを発電中であり、どの程度を照明に使用しているかなどを表示したエコ情報表示盤を設置し、乗客が足を止めて見られるようにした。

省エネ、創エネ以外の工夫も施した。乗客が利用する改札内のトイレには節水トイレを配置。緑多い周辺の風景に溶け込むよう、敷地全体で緑化も施している。例えば、各ホームの屋根の上にコケを植栽した。成長しても列車の運行に支障ないということで、コケを選んだという。線路の側壁はもともと石垣になっていたが、ここにもコケを植えて緑豊かな空間を演出した。

この技術の導入に伴い、エネルギー管理を場所ごとに行えるようスイッチ系統を変え、場所によってこまめにオン・オフを制御するようにしている。これらの取り組みにより、四ツ谷駅では年間189トンの二酸化炭素(CO2)を削減できるようになった。

四ツ谷駅は屋根に太陽光パネル、天窓にシースルー型太陽光パネル、ホーム屋根にコケを植栽した

一方、平泉駅は太陽光で駅の消費電力をすべて賄うことをもくろんでいる。駅の東側の500m2の敷地に、78kWの太陽光パネルを並べ、240kW時のリチウムイオン蓄電池を設置。昼間は太陽光で発電して蓄電池にため、夜は蓄電池の電気を使うようにしている。

平泉は晴天日が年間170日しかないが、この太陽光と蓄電池のシステムで晴天日は消費電力の全量を賄え、年間にならしても約8割は賄えるとみている。「世界遺産であり、田園地帯が広がる場所なので、町と協議してエネルギーの地産地消をコンセプトに掲げた」と、JR東日本環境経営推進室の土井浩永課長は話す。

世界文化遺産に登録された平泉の玄関口にある平泉駅では、駅の東側に太陽光パネルを並べて78kWを発電。これをリチウムイオン蓄電池にためて夜間に使用する。駅の電力のすべてを賄うことを目指しており、エネルギーの地産地消を掲げている

JR東日本は現在、京葉線の海浜幕張駅や中央本線の小淵沢駅をエコステとして設計中であり、2013~14年にも発表する予定だ。今後10年以内に12のモデル駅が存在するようにしたいという。

回生電力の使用など新技術

エコステは効果が既にわかっている確立した技術を使用するものだが、一方でJR東日本はまだ開発途上の技術を駅に導入してフィールド試験をする取り組みも進めている。そこにはユニークな技術が多い。

例えば、日光線鶴田駅では、有機薄膜の太陽光パネルをホーム屋根のガラスに封入し、太陽光を透過させながら発電もできる技術の実証実験をしている。有機薄膜は湾曲したホームの屋根にも自在に設置できる。ここに目を付けた。昼間に発電・蓄電し、夜間にLED照明に使用する。2012年1月から2013年1月まで実証実験し、課題などを洗い出すという。

JR東日本は、減速中の電車で発生する回生電力を蓄電池にため、加速中の電車に使用する技術を開発した

また、2012年5月には、電車の回生電力を有効活用する技術の実証実験を始めた。電車と電車の間で電気を融通し合う技術のことだ。

電車がブレーキをかける際には、減速のためモーターを回転させる。その時電気が発生するが、通常はこれを利用せずに捨てていた。しかし、発生した電気を架線に戻すことにより、同時間に加速する電車がこの電気を使うことができる。

ただし、同時間に電気を使える電車が走っていないといけないという制約がある。この問題を解決すべく、いったんこの電気をリチウムイオン蓄電池にためることで別の電車が使えるようにする技術を開発ずみだ。今年度下期には、青梅線拝島変電所にリチウムイオン蓄電池を設置し、実用化する。

今後はこうした技術と太陽光発電などを組み合わせ、ICTでエネルギー管理する鉄道電力システムのスマートグリッド技術を開発していく予定だ。

(日経BP環境経営フォーラム 藤田香)

[日経エコロジー2012年8月号の記事を基に再構成]

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