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任天堂・岩田社長、進退かけた来期への覚悟

下方修正受け、「営業利益1000億円」を公約

 31日、都内で任天堂の決算、および経営方針説明会に臨んだ岩田聡社長は、来期の業績について「営業利益1000億円以上を目指すということを、私たち経営陣のコミットメントとしてお知らせしたい」と語り、自身の進退についても言及した。任天堂は30日に四半期決算を公表すると同時に、通期決算の下方修正を発表。2013年3月期は2期連続の営業赤字に陥る見込みとなったことを受け、岩田社長自ら、経営責任の取り方を示唆した格好だ。

「年末商戦で予定通りの結果を残すことができず、また、足元でWii Uが勢いを保てていないことから、業績予想の本業の部分で下方修正をご報告せざるを得なくなりました。最重要の年末商戦で十分な結果を出すことができず、責任を痛感しております」――。

31日に開催された任天堂の経営方針説明会。岩田社長はその冒頭、こう陳謝した。

2013年3月期の連結営業損益は、従来予想の200億円の黒字から一転、200億円の赤字へ。年最大の年末商戦において、携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」、据え置き型ゲーム機「Wii U」ともに、ハードとソフトの販売が予想を下回ったことが響いた。

販売不振で悲観する株式市場

下方修正された今年3月末までの販売予想は、Wii U本体が従来予想比150万台減の400万台、Wii U向けソフトが同800万本減の1600万本。3DSは本体が同250万台減の1500万台、ソフトが同2000万本減の5000万本。これに伴い、通期の売上高予想を、従来予想比1400億円減の6700億円とした。最終損益は円安効果で従来予想比80億円増の140億円となる見通し。株価は3日連続で下落。31日は前日から5%近く値を下げ、終値は8920円(大証1部)となった。

「3DSは世界最大の市場である米国でよい流れをつくれなかった」「Wii Uは製品の魅力が伝わりにくく、大きな社会的な話題を生み出すことができなかった」「年明け以降、Wii Uの販売が予想以上に失速した」……。岩田社長の口から厳しい現実が語られた。

その上で、岩田社長は「来期の業績見通しは例年通り、本決算でお話しすることになりますが、こういう状況である以上、あえて今回はこういう形で申し上げます」と言葉をつなぎ、現状の為替トレンド(1ドル=90円、1ユーロ=120円)を前提とした来期の営業利益目標1000億円を「コミットメントだ」と強調した。

未達の責任に言及

岩田社長がいうように、任天堂が本決算を待たずに来期の業績見通しに言及するのは極めて異例なこと。その業績見通しをコミットメント(公約)するのは、さらに異例なことである。そこまでするほど岩田社長は経営責任を痛感し、進退をかけている。

説明会終盤、アナリストからコミットメントが達成できなかった場合の責任について問われた岩田社長は、こう答えた。「そのご質問への答えは、私がコミットメントという表現を使ったことで、すでにご理解いただいているかと思います」。会場にいたあるアナリストは、こう話した。「岩田さんが初めて自らの進退をかけた」……。

ただ、暗い話ばかりではない。

「ある程度、達成できる自信があるからこそのコミットメント。カギはWii Uの魅力の伝え方を解決して、自社ソフトで販売台数を伸ばせるのか。3DS、Wii Uともにハードのコストダウンがどこまで進むか。そして、自社ソフトを軸とする『強い任天堂らしい』ことを実行できるかどうか。それが実現できれば達成できるのでは」。任天堂に詳しい岡三証券の森田正司シニアアナリストは、こう語る。

新たなキャッチコピー、"発明"できるか

3DSは、足元の日本で「とびだせ どうぶつの森」が発売3カ月で300万本(ダウンロード販売含む)を突破するなど、かつての「DSブーム」を彷彿(ほうふつ)とさせる展開となっている。「どうぶつの森は海外でも今年半ばまでに投入する」(岩田社長)としており、期待がかかる。DSブームも、日本から海外に飛び火するまで、1年以上の「時差」があった。

大きな課題は、岩田社長がいうように、テレビ画面と、手元のコントローラーの液晶画面、2画面で遊ぶことができるWii Uの魅力をどう伝えるかだ。

岩田社長は「2画面による『非対称ゲームプレー』ができるというメッセージは、理屈的で直感的でない。伝わりにくかったという反省がある」としたが、解決策は「じっくりと普及に取り組む必要がある」「新しい伝え方を発明して、理解されるようにしていきたい」と語るにとどめた。

魅力を伝えるには、Wiiの時の「Wii Sports」「Wii Fit」のような、一発で新しさが伝わるソフトの存在が不可欠。逆にいえば、そうしたソフトが完成すれば一発逆転が可能、ということでもある。そうしたソフトの完成はすなわち、「非対称ゲームプレー」に代わる、新しい「キャッチコピー」の発明にもつながるはずだ。

政治家の父を持つ岩田社長

岩田社長の父親、故・岩田弘志氏は政治家だった。1979年、北海道・室蘭市の市長選で初当選し、以降、4期にわたって室蘭市の財政再建に骨身を削った。室蘭港をまたぐ東日本最大のつり橋「白鳥大橋」の建設や、閉鎖を予定していた新日本製鉄(当時)の高炉を存続させるなど、室蘭に多大なる功績を残している。

「政治家の父を持つ岩田社長だけに、コミットメントの重さは本人がよくわかっているはずだ」。あるアナリストは、そう話す。

業績回復への不退転の決意。奇跡のような過去最高の業績を残した男は、ふたたび奇跡を再現してみせるのか。並の経営者以上に期待がのしかかる岩田社長は、自らに足かせをはめた。

(電子報道部 井上理)

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