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パンの魅力、イベントでPR 業界が消費拡大策

パンの消費拡大に向けイベントや教室を開く動きが活発になってきた。小麦粉など原材料は値上がりしているが、競争激化で販売価格は思ったように上がらない。パンの新しい食べ方やバラエティの多さなどを紹介することでファンを開拓。商品の個性を際立たせて価格競争から脱しようという狙いがある。

「ご当地パン」35店が集結

全日本パンフェスティバルには3万人が来場した

全日本パン協同組合連合会(全パン連、東京・新宿)は10月19日、東京・丸の内の東京国際フォーラムで「2013全日本パンフェスティバル」を開いた。会場には「親子パン作り体験コーナー」や製パン大手5社のブースなどが設けられた。全パン連の西川隆雄会長は「幅広い世代にパンの魅力を伝えたい」と話す。来場者は約3万人。

目玉イベントが「第4回日本全国ご当地パン祭り」だ。地元産の小麦粉を使ったり、地元の特産物を使ったりしたパンなど、今年は総勢35店がグランプリの座をかけて自慢のパンをもって集結した。来場者が購入した「ご当地パン」に添付されている人気投票用シールを投票ボードに貼る。投票数の高い上位3店を表彰する。

優勝したのはグルッペ・石渡食品(静岡県函南町)が製造した「みしまフルーティキャロット」。738票を獲得した。同社は前年度も「みしまコロッケぱん」で優勝しており、2年連続で栄冠を勝ち取った。

ご当地パンナンバーワンになった「みしまフルーティキャロット」

「みしまフルーティキャロット」はご当地野菜の「三島にんじん」を素材にした。石渡食品の石渡麗子常務が「三島にんじん」のジュースを味わい、その甘みに感動したという。にんじんをすりおろしてパン生地に練り込むとともに、ゼリー状にしてジュースの味を再現したという。三島市内などの3店舗で販売しており、1個200円。1日1500個がほぼ完売するという。石渡常務は「小麦粉や油脂などの価格は上がっているが、値上げせずに踏ん張っている。大変厳しいが、他の店にはないパンを作っていければ」と話す。日本一になって以来、前年度の受賞作「みしまコロッケぱん」の売れ行きも上向いてくるなど相乗効果が出ている。

「よくかんでゆっくり食べてください」――。ベーカリー大手のドンク(神戸市)は9月22、23日の両日、東京・豊洲の大型ショッピングセンター「ららぽーと豊洲」で「パンの食べ方教室」を開いた。講師はMOF(フランス最高技能職人)の称号を持つパン職人リシャール・ドルフェールさん。フランス・アルザス地方でパン店を経営しており、日本でもららぽーと豊洲内でパン店「アール・ドゥ・パン」を開いている。

実演するドルフェールさん

23日の参加者は14人。熱心にメモをとる人もいた。この日は3種類のサンドイッチを味わった。同氏が通訳を交え、「よくかんで食べると食材の香りが出て楽しめます」などと説明した。都内から家族3人で来た主婦は「日常的にフランスパンを食べる機会が多い。具材が家庭で使っているものと違っていて面白かった」と話す。ドルフェールさんは「(パンに挟み込む具材などと組み合わせた)栄養バランスをアピールしていけば、食べる楽しみが広がる。日本でもパンはまだまだ売れる」と話す。

コスト上昇の転嫁難しく

農水省の資料などによると2000年をピークに減少傾向だったパン販売量(学校給食除く)は09年から盛り返している。とはいえ、12年は前年比0.6%増と微増のペース。小麦粉の価格上昇を受け7月に山崎製パンや敷島製パンなど大手各社が食パンなどを2~7%値上げした。ただメーカーが求めているほど実際の店頭価格は上がっていない。「7月の値上げで売れ行きが鈍ったため、店頭で値下げ競争が再燃し、価格は元に戻った」(大手製パン)との声も聞こえる。来春には消費増税も控え、増税分の価格転嫁も加わる。特に中小メーカーには「メーカーの意思が店頭価格まで届かない」(全パン連)との危機感が強い。

価格の問題だけではない。小売店からの発注から納品までのリードタイムも厳しくなっている。日本パン工業会(東京・中央)の中峯准一専務理事は「昔は発注が前々日だったが今は前日が主流になっている」と話す。パンは発酵させる時間が必要なので製造に12時間はかかる。小売店から前日の午後4時くらいに注文を受けても翌朝の配送に間に合わない。あらかじめ発注数を予想して見込み生産するため、廃棄ロスがかなりの量に上っているという。業界は改善策を模索し始めた。

食育からファンづくりへ

山崎製パンが開いている「親子サンドイッチ教室」

ファンづくりは幼いころから――。製パン最大手の山崎製パンは2004年から小学生の子供を対象にした「親子サンドイッチ教室」を開いている。全国の大型スーパーの店舗内で開くことが多く、これまで延べ4500回開いた。12年は700回開催、今年は1000回は超えそうという。

食育や食の安全についての専門教育を受けた「マーケットクルー(Mクルー)」と呼ぶスタッフが担当する。1回あたり1~2品、朝に自分で作って食べられるメニューを作っていく。1時間ほどの教室は食材の栄養バランスなどを学ぶ「お勉強の時間」など盛りだくさん。包丁など調理器具の使いかたも教える。野菜嫌いの子供もサンドイッチなら食べるようになることもあり、ちょっとした社会勉強にもなり保護者にも好評だ。「父の日」や「クリスマス」など開催時期に応じてテーマも多様。先着順で参加者を受け付けているが、すぐ埋まってしまうという。

もともとは食育という観点から始まった教室だが、営業教育研修部の早川立部長は「品質やブランドの認知につなげたい。長い目でみてファンづくりにもつながる」と話す。「どんなメニューにどんなパンが合うのか提案し、指名買いにつなげたい」(早川部長)

高齢者層をターゲットにしたPR戦略も今後の課題となる。家計調査でみると世帯主年齢別で最も消費量の多いのが60歳代(主として1940年代生まれ)となっている。パンは若者向きという一般的な認識とは異なる。「学校でパン給食を経験してきた世代で、パン食になじんでいるようだ」(全パン連)という。市場開拓の芽はあちこちにありそうだ。(村野孝直)

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