山中・京大教授 iPS研究、カギは人材 資金確保も不可欠

2012/6/8 3:30
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 iPS細胞は2006年にネズミで、07年にヒトで作製に成功した若い技術だ。皮膚など体の細胞に4つの遺伝子を送り込むと1カ月ぐらいで、皮膚だった細胞が全く異なる細胞に変わる。

山中伸弥氏
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山中伸弥氏

 iPS細胞は様々な刺激を加えることで神経や血液、内臓の細胞など、どんな細胞にもなる。また、何万倍と無限に増やせるので神経などを大量に作れる。

 京大では08年にiPS細胞研究センターを立ち上げ、10年4月にiPS細胞研究所を開所。27の研究グループがiPS細胞に関する情報やアイデアなどを共有して日夜研究に励んでいる。所長就任時に20年までの達成目標4つを掲げた。

 「iPS細胞の基盤研究推進と知的財産の確保」「移植に使える高品質iPS細胞の作製と国内外への提供」「iPS細胞を使った再生医療の臨床研究の開始」「希少疾患の患者iPS細胞から病気を再現、治療薬の開発」だ。

 安定的にiPS細胞を作る技術も開発、当初懸念された作製法による、がん化の問題も解決した。知的財産についても京大が申請した基本的作製法の特許が日本に続き欧米でも成立。来年にかけて細胞をストックする「iPS細胞バンク」設立に注力したい。

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 iPS細胞による再生医療では日本がトップを走っている。今年から来年には網膜の病気で臨床研究が始まる計画だ。パーキンソン病や血液の病気でも応用を目指している。病気の再現では、運動神経が侵される筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のiPS細胞から神経を作り、特徴を解析している。何としても治療薬につなげたい。

 技術開発をするうえでいくつかの課題も強く感じている。大学における研究のミッションは変化し、数年前は論文発表をしていればよかったが、今はそれだけではない。

 基礎研究を患者や産業界に持っていくには知財を知り、臨床応用には厚生労働省など規制当局に対応しないといけない。社会への情報発信や研究技術の高度化にもついていかないといけない。教員1人ではできない。知財や規制、広報などの専門家、高度な実験装置を扱える技術者など研究支援の専門家が大切だ。支援してくれる人材と連携して働く必要がある。

 私たちが基本特許を国内外で成立できたのも、民間から雇用した専属の知財専門家のおかげだ。ただ、研究所で働く人のうち正規雇用は11%にすぎず、89%は非正規雇用。非正規雇用分の人件費年間10億円は(獲得した)国からの研究費でまかなっている。

 東日本大震災や厳しい経済状況にもかかわらず40億円近い血税をいただいており、大変恵まれているが、14年には終了する。米国の研究所にならって研究基金を募り始め、これまでに3億5000万円が集まった。私もマラソンを走り1000万円を集めたが、毎日走っても追いつかない。

 iPS細胞だけでなく、大学で生まれる新しい技術を日本で開発するには、研究を支える人材を安定雇用できる仕組みが必要だ。

京都大学iPS細胞研究所 所長 山中伸弥氏 (やまなか・しんや) 1993年(平5年)大阪市立大大学院医学研究科修了。奈良先端科学技術大学院大教授などを経て2004年京大教授。10年から現職。

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