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災害時に衛星通信活用 日本医師会とJAXAが実証実験

日本医師会と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は30日、大規模災害の発生時にJAXAの超高速インターネット通信衛星「きずな」を活用する協定を締結した。共同できずなの利用実証実験などを進め、災害時に通信回線が途絶した時に、日本医師会が避難所の状況や医療ニーズ、カルテなどの患者の情報を、被災地に派遣された医師同士が共有できる体制を整える。日本医師会には将来的に、災害時の通信衛星の利用をアジア地域にも広げる構想もあるという。

日本医師会の横倉会長(左)とJAXAの立川理事長

「東日本大震災時の医療支援では、インターネットでの情報共有の重要性を認識した。JAXAとの衛星通信の実証実験を進め、被災地の人命救助や健康維持に貢献していきたい」――。日本医師会の横倉義武会長は同日の記者会見でこう述べた。

日本医師会は東日本大震災で現地の交通事情やニーズが分からないなか、医療チームの派遣や医薬品の配給をせざるを得なかった。また短期間で医療支援チームが交代するため、患者や被災地の情報の引き継ぎで課題に直面した。

JAXAの資料から

このため昨年7月にJAXAと連携し、災害時など非常時通信にクラウドコンピューティング上でカルテや避難所情報を共有するデモンストレーションを実施、情報共有のための通信手段の確保を狙い、通信衛星を持つJAXAとの協定に至った。

きずなはJAXAと情報通信研究所(NICT)が共同開発した研究開発衛星。直径45センチメートルという小型アンテナで送信時毎秒6メガビット(Mbps)、受信時155Mbpsの高速通信ができる。そのため電子カルテなどの画像情報のほか、映像のやりとりにも対応できるという。JAXAは筑波宇宙センターに通信用アンテナ装置を約10台常備しているという。

きずなの模型と小型アンテナ

 協定を結んでいなかった東日本大震災の発生当時は、大きな被害を受けた岩手県釜石市や同大船渡市などで通信装置の設置し、衛星回線の運用を始めるまで約1週間かかったという。今後の実証実験により、災害時のアンテナ装置の設定などの運搬手段などを取り決めることで遅くとも2~3日中、最速の場合で災害の翌日から運用を始められるという。「大震災の場合には、医薬品の在庫の把握などを含め、通信が確保されることが非常に重要。JAXAに加え、米軍や自衛隊、警察などとも連携を図っていきたい」(日本医師会の石井正三常任理事)

会見に出席した立川敬二JAXA理事長は「08年に打ち上げたきずなは、遠隔医療や教育、東南アジアの衛星通信として大変効果を上げている。日本医師会と協力することで、災害時のニーズに応えていきたい。将来的にはぜひ、きずなを活用して、余震情報や津波情報などを衛星から直接、個人の携帯電話に伝えられるようにしたい」と展望を述べた。

現在、通信するためのアンテナ装置は自動車で運搬する必要があるが、JAXAは1人で持ち運べるように小型化する研究を進めているという。きずなはアジア・太平洋全域をカバーしており、日本での災害時の利用実証実験が進めばアジア地域などへの応用も期待できる。

(電子報道部 杉原梓)

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