ドコモ、150メガの高速LTE提供を表明
13年度、KDDIに対抗
NTTドコモの加藤薫社長は30日、LTE方式の高速通信サービス「Xi(クロッシィ)」において、2013年度に下り速度を最大毎秒150メガビット(Mbps)へ高速化すると表明した。現在は大半のエリアにおいて下り最大37.5Mbpsのサービスを展開しており、その4倍の速さとなる。同日開催した決算会見で明らかにした。

上り速度について同社は明言していないが、最大50Mbpsとみられる。LTEの高速化をめぐっては、KDDI(au)も14年3月までに同150Mbpsへの引き上げを表明済みで、ドコモの高速化はこれに対抗するものとなる。通信各社がLTEなどの回線で繰り広げている高速化競争がいっそうエスカレートしそうだ。
1.7GHz帯を活用、3Gを停波しLTEに転換
下り最大150Mbpsのサービスを展開するには、40メガヘルツ(MHz)幅(下り/上り各20MHz幅)の電波帯域が必要となる。このため、現時点で40MHz幅の電波を保有している1.7ギガヘルツ(GHz)帯で展開している3Gサービスの電波を停波し、LTE向けに切り替えることを軸に検討しているもよう。ドコモの3Gは主に2GHz帯と800MHz帯を使って全国サービスを展開しており、1.7GHz帯は都市部などにおける補完的な電波として利用している。このため、1.7GHz帯を早期にLTEへ切り替えても影響は限定的と判断したようだ。
ドコモ向けの1.7GHz帯は今のところ、利用可能な地域が東名阪エリアに限定されているが、このエリア限定を解除することも総務省などで検討されており、ドコモは全国規模での150Mbpsサービスの展開も視野に入れている。ただし3GからLTEへの移行が進んでいないエリアでは、1.7GHz帯の40MHz幅を全てLTEに切り替えると3Gが電波不足に陥る可能性もある。広範なエリアで一斉に下り最大150MbpsのLTEサービスを展開できるかは予断を許さない。
現時点でドコモがLTEの基幹電波として使っている2GHz帯も、1.7GHz帯と同様に40MHz幅ある。ただしこの帯域は、3Gでも基幹電波という位置付けとなっており、将来の3Gサービス終了まで一定の帯域を3G向けに残す方針。このため2GHz帯では、LTEの最高速度は当面下り最大37.5M~75Mbpsのままとなりそうだ。

同社は、2GHz帯と800MHz帯など、複数の異なる周波数の電波を同時に使って通信速度を高める「キャリアアグリゲーション」という技術についても、研究開発を進めている。ただし加藤社長は、「キャリアアグリゲーションはLTEの後継となる『LTEアドバンスト』の技術。当面はキャリアアグリゲーションを使わず、13年度に4つの帯域(40MHz幅)を使い150Mbpsを実現したい」と述べた。
KDDIと高速化で火花、対ソフトバンクの思惑も
LTEによる高速通信サービスは、ドコモが他社に先駆け10年12月にスタート。当初はほぼ全域で下り最大37.5Mbpsだったが、13年3月までに全2万3000局のうち4000局で同75Mbpsへ高速化する計画だ。また東名阪と九州を除く地方部では、同112.5Mbpsの基地局を12年末から順次新設している。
一方、KDDI(au)とソフトバンクモバイルも12年9月、iPhone5の発売に合わせてLTEを開始。特にKDDIは、13年12月までに下り最大112.5Mbps、14年3月までに同150Mbpsへと高速化する方針を打ち出しており、ドコモの優位性が薄まっていた。ドコモも同150Mbpsのサービスを打ち出し、速度競争でKDDIに対抗する方針を明確にした。
ドコモとKDDIが高速化に積極的なのは、対ソフトバンクという側面もありそうだ。ソフトバンクは「プラチナバンド」と呼ばれる900MHz帯の獲得や、イー・アクセス(イー・モバイル)の買収などで利用可能な電波を増やしているが、大半は10M~30MHz幅で細切れとなっており、ソフトバンクが下り最大150Mbpsに直ちに対抗するのは困難な状況だ。ソフトバンクの系列会社が展開するTD-LTE(AXGP)方式の通信サービスも、下りは最大110Mbpsと高速ながら、上りは同10Mbpsにとどまる。
iPhoneなどを武器に契約数でドコモとKDDIに迫るソフトバンクに対し、ドコモとKDDIはソフトバンクが対抗しづらい高速化を武器に差異化を図る考えだ。
(電子報道部 金子寛人)