ゲームで社会をよくする「ゲーミフィケーション」
ゲームジャーナリスト 新 清士

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2011/3/31付
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このゲームは10週間続き、世界130カ国・地域以上から1万9893人が参加した。ゲームをきっかけに、フィリピンでは初等教育に取り組む企業が生まれ、南アフリカでは貧困層の子育て環境を改善する取り組みが始まるなど、発展途上国を中心に20以上の社会プロジェクトが立ち上がったという。

マクゴニガル氏は「ゲーミフィケーションを機能させるには4つの要素が必要だ」と指摘する。(1)自ら達成したいと感じさせるための「しつこいまでの楽観性」、(2)あまり負荷をかけずに新しい能力が得られていく「至福の生産性」、(3)ユーザー同士が自分の居場所を確かめられて、それが次のモチベーションを生み出す「ソーシャル性」、(4)未来や世界といった壮大なスケールを持ち、関わることが楽しくなる「ストーリー性」――だ。これらを組み込むことで、ゲームユーザーに自らのプレーに対する責任を感じてもらえるようになるという。

■震災後に登場した「節電ゲーム」

節電ゲーム「#denkimeter」の公式サイト画面

節電ゲーム「#denkimeter」の公式サイト画面

日本でも同じような方法論の取り組みを目にすることができる。今回の東日本大震災で節電の必要が叫ばれるなかで登場したのが、ミニブログ「ツイッター」と連動した節電ゲーム「#denkimeter」だ。

自宅の電力メーターを1時間や1日ごとにチェックして、その数値をツイッターにつぶやくとともに公式サイトに入力すると、節電の「戦闘力」が算出される。電力使用量をパラメーターに使ってユーザー同士で獲得ポイントを競い合う仕組みで、ゲームデザインを担当した国際大学GLOCOM研究員・助教の井上明人氏は、開発の狙いを「節電を楽しむものにできれば」と語っている。

現状では、自宅にいないとプレーできず電力使用量の入力が手作業になるなど、ゲームとしての課題は多い。しかし、近くアップルのスマートフォン「iPhone」向けアプリの公開を予定しており、記録の煩雑さなどを軽減して多くの人に遊んでもらえるように準備を進めている。

ゲーム的な要素を社会活動の手段として使う試みは、ソーシャルメディアの普及とともに今後、日本でもさらに増えていくだろう。その効果を引き出すためには、ゲームデザインについての研究をさらに深め、共有化していく必要がある。「ゲームは社会をよい方向に変える手段になり得る」と言うマクゴニガル氏の提案は一見すると夢想的にも映るが、大震災に直面した日本のソーシャルメディアを見ていると、決して実現不可能なビジョンではないと感じられてくる。

新清士(しん・きよし)
1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心としたジャーナリストに。国際ゲーム開発者協会日本(igda日本)代表、立命館大学映像学部非常勤講師、日本デジタルゲーム学会(digrajapan)理事なども務める。
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