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スズキとワーゲンの今とこれから

(鈴木修氏の経営者ブログ)

鈴木修(すずき・おさむ)1930年1月生まれ。浜松市の中小企業を世界的な自動車メーカーに育てた自称「中小企業のおやじ」。2009年12月には独フォルクスワーゲン(VW)との提携もまとめあげるなど、81歳にしてなお、新たな戦略に知恵を絞る。

スズキが2009年12月に独フォルクスワーゲンと提携して、1年半が過ぎました。具体的な提携効果をご披露できないままで、色々な方からお叱りを受けましたので、私の今の考え方をまとめてお話しておこうと思います。

最近、ワーゲンさんは自社の株主の皆さんに「ワーゲンはスズキという会社の経営方針に重大な影響を与えることができる」と説明しているようですが、私はちょっと話が違うぞ、と思っています。スズキとワーゲンが提携した際には「お互いに独立したイコールパートナーである」と基本合意したのです。会社の大きさが違いますから、時が経つとスズキを傘下におさめたと勘違いしてしまうのでしょうかねぇ。

でも、スズキとしてはイコールパートナーだから提携したわけであって、「はい、そうですか」というわけにはいかない。これまでに、いろいろ情報交換はしてきました。こちらもワーゲンさんのことが理解できてきました。ワーゲンさんもスズキのことを少しずつ理解していただけたのでしょう。そのうちに当初の基本合意が怪しくなってきたのだと思うのです。

では、現在、スズキが何か困っているかというと、何も困っていません。ワーゲンさんの持つ個別の技術について勉強させてもらいましたが、いますぐに欲しいという技術はありません。スズキも独自に環境技術などの開発に力を入れています。うちの技術陣は私が思っているより力を付けているようで、案外いい技術を生み出しています。16年ぶりに新開発した軽自動車のエンジンは国内トップクラスの燃費を実現していますし、最近注目を浴びているディーゼルエンジンについてもインドで20万台以上生産しています。ですから当面は、特に軽自動車市場やインド市場などスズキにとっての重要な市場では、ワーゲンさんとの協業を急ぐ必要は感じていません。いわゆる環境車についても、例えばスズキ独自の予備発電機付電気自動車を市場に投入できるよう準備しているのです。

足りない技術があれば、ワーゲンさん以外にも技術的に交流の深い会社が国内外にたくさんありますから、そうしたパートナーに助けてもらうという手もあります。先日、発表しましたフィアットさんからのディーゼルエンジンの調達についても、その一つだとお考えいただければ良いと思います。技術開発競争が激しくなる自動車産業では、資本関係でどこかの会社がどこかの会社を支配下におさめる、という時代ではなくなるでしょう。スズキも生き残るには、世界中の会社からパートナーになりたいと思われるような、独立した企業であり続ける必要があると思っています。そういえば、最近ドイツの一流経済誌での報道によると、ワーゲンさんも南米やインドなどの新興市場における低価格車の開発に一定のメドを立てつつあるようですね。私も安心しました。

皆さんが一番お知りになりたいのは、ワーゲンさんとの今後についてでしょうが、ワーゲンとスズキが互いに独立したイコールパートナーとしての関係が醸成できるように、誠心誠意話し合いを続けていきたいと思います。そのために提携したのですからね。スズキを独立した存在の、独自性を発揮できる企業に育て、株主の皆さんやユーザーの皆さんの期待に応えられるように、全力を尽くしたいと思います。

さあ、私もやるべきことが目の前にたくさんあって、何だかわくわくしてきました。震災対策も待ったなしですからね。「いまやらなくて、いつやる」。年は取りましたが、そんな気持ちで、社員たちと一緒に汗をかいていこうと思っています。

鈴木修 スズキ会長兼社長のブログは隔週金曜日に掲載します。
読者からのコメント
長野市 30代男性さん、30歳代男性
スズキって、世界の自動車メーカーから見たら、羨ましいポジションにいますよね。VWが隣にいて、フィアット、日産、三菱と技術や商品のやり取りが出来る立場にあって、GMとその一門とも良好な関係があり、インドなど確固たるシェアを持つ市場があって。凄い中小企業ですよね。
40歳代男性
企業間提携、グループ会社間、取引先、上司と部下、客とセールス、教師と生徒、親子、すべての関係は所詮は人間同士の人間関係であるから、そこに相手への信頼や尊重が無ければ、やはり将来にわたり何かしらの問題や禍根を生む可能性が高い。どのような社会もある程度の虚々実々の部分があるが、そこをうまく切り盛りする力が求められる。
渡邉正行さん、40歳代男性
楽しく拝読させていただきました。鈴木会長がVWとの対比で自らの会社を「小さい会社」と称されましたが、もちろん私などとは比べるべくもないところです。しかし、それでも巨大企業VWに対して「対等である」と言い切って実践する鈴木会長の言動一致に感服です。生意気ですが「日本もまだまだ負けないな」と感じました。先日、私も製薬会社との提携を断ったばかりです。お金は少ないですが私どもにはノウハウがありましたので純粋に対等でないパートナーシップを断ったのです。だから、鈴木会長のお言葉を拝見して心強かったです。何もできないでいるVWを見ているとちょっと気持ちがいいのは私がまだ子供なのでしょうか。これからも楽しみにしております。
Maruさん、20歳代男性
会長の心構え、とても参考になります。 私もそうなれるよう努力しようと思い立ちました。
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