「納得感」に欠ける4Kテレビ
(テクノロジー編集部BLOG)

2013/1/30 7:00
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今年に入って、にわかに「4K」(または「4K×2K」)という単語を聞く機会が増えています。4Kとは新たな高精細テレビの通称で、解像度が現行のフルハイビジョン(1920×1080ドット)に対し、縦横とも2倍となる3840×2160ドットのものを指します。

1月上旬に米ラスベガスで開催された家電見本市「CES」では、シャープやソニー、東芝、パナソニックといった日本メーカーに加え、サムスン電子とLG電子の韓国勢、ハイアールやTCLなどの中国勢まで、こぞって4Kテレビを展示していました。さらに1月下旬には、総務省が早ければ2014年7月にもCS放送で4K放送を始める意向と伝えられました。もっとも、地上デジタル放送を手掛ける民放各局は、設備投資の負担が大きいなどの理由で今のところ4Kに消極的のようです。

国内のテレビメーカー各社は、家電エコポイントの終了とアナログ放送の停波以降、需要の低迷に苦しみ続けています。新たな商機の原動力となり得る4Kに力を入れるのは、記者個人の心情としては理解できます。また、海外勢が大挙して4Kに取り組むなか、国内勢が後れを取るわけにもいかないという事情も分かります。一方、一消費者としては4Kの拙速さに不安を感じるというのが正直なところです。

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思い返せば、フルハイビジョンに至るテレビの進化の過程では、「今までのテレビと明らかに違う」と思わせる点があり、買い替えに納得感がありました。奥行きのあるブラウン管テレビと薄型の液晶テレビ、4:3の小さな画面と横に広がった大画面、解像度の低い地上アナログ放送と高精細の地上デジタル放送、などです。

一方、今回の4Kは正直なところ、フルハイビジョンと比較して「明らかに違う」という印象を持てずにいます。先日あるテレビメーカーの新製品発表会で、4Kテレビとフルハイビジョンテレビの比較展示を見てきましたが、説明員の方に「ほら、このあたりの精細感が違うでしょう」と言われて「まあ、そうかなあ……」と何となく思う程度。また、こうした展示で使われるサンプル映像は、大自然や動植物、美術品、あるいは欧州の古い町並みなどが定番なのですが、記者個人はあまりそうしたテレビ番組を見ないこともあり、ピンとこないというのもありました。

何が問題なのだろうとあれこれ思いをめぐらせ、考えついたことが2つあります。1つはサイズと設置場所の問題です。フルハイビジョンの普及は、ブラウン管から薄型テレビへの移行とほぼ同時に進みました。奥行きが大幅に減ったことで設置の自由度が増し、アナログ時代のブラウン管テレビより大画面のものを買えたわけです。今回の4Kは、外観は現行のフルハイビジョンテレビと変わらず、設置のしやすさという点での進化はありません。

この点、4Kの普及に併せて設置のしやすさを大幅に改善させるテレビが出てこないかと思っています。例えば、壁掛けテレビの進化です。既存の木造住宅や賃貸マンションでも大がかりな工事をせず壁掛けできる薄型軽量の4Kテレビを出せれば、「場所を取るから大画面テレビは買わない」という消費者に対する1つの解になり得ます。

また、最近は「しなやかに曲げられるディスプレー」という技術が出てきています。これを大型化して、プロジェクターのスクリーンのように天井から引き出し、使わないときは収納できるテレビといったものはできないでしょうか。グループ内に住宅設備部門を持つパナソニックなどに期待したいところです。

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4Kテレビの問題点のもう1つは、フルハイビジョンから4Kに変えても消費者が受け取る情報量がほとんど増えないことです。アナログ放送が地デジに変わったときは、画質が明らかに向上したことで情報量という点で消費者のニーズを満足させられたと思います。一方でフルハイビジョンから4Kに変わっても、画質の改善効果はあまり大きくありません。4Kによる高精細化のメリットを、フルハイビジョンのときと同様に画質の向上だけに求めるのは無理があり、新たなメリットを打ち出す必要があると思います。

そうした新たなメリットを考える上で参考になりそうなのが、スマートフォン(スマホ)やタブレット端末です。スマホやタブレットは、テレビよりはるかに小さい画面にもかかわらず、高精細化が進んでいます。これらの端末は消費者が能動的に情報を得るべく操作するもの。高精細の画面に合わせたアプリの進化などにより、消費者は高精細化のメリットを享受しやすくなっています。

これまでのテレビは、テレビ局が制作する映像をそのまま映し出すだけで、消費者が能動的に情報量を増やすことは困難でした。しかし最近は、テレビでもスマホやタブレットと同様に、表示する情報を消費者が能動的に選べる、いわゆるスマートテレビが出始めています。現時点では普及しているといえないスマートテレビですが、4Kによって増えた解像度を活用する手段として、今後は重要性が増すと記者は考えています。

といっても、最初から機能をてんこ盛りにしたスマートテレビを作っても、消費者は持て余してしまうでしょう。最初は例えば、画面の隅にニュースや天気予報などを控えめに出す程度にして、消費者のニーズを探りながら少しずつ表示する情報を増やせば良いと思います。スマホやパソコンの世界で、画面の一部に「ウィジェット」と呼ばれるミニアプリを常駐させるのと同じ要領です。

前述の通り、テレビメーカー各社が4Kに注力するのは理解できます。一方、だからこそ消費者にそっぽを向かれないよう、慎重に技術開発に取り組んでほしいとも記者は感じています。3Dテレビの立ち上げで苦汁をなめた経験なども生かしつつ、消費者のニーズにぴったり合致した4Kテレビが出てくることを願ってやみません。

(寛)

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