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急患の診断・処方迅速化 「救世主」はグーグル・グラス

ウエアラブル端末時代の幕開け(4)

ITpro
「ポスト・スマートフォン(スマホ)」として、にわかに注目度が高まっている身に着ける情報端末、いわゆるウエアラブル端末。その代表的な存在と言えるのが、米Google(グーグル)が開発を進めているメガネ型端末「Google Glass(グーグル・グラス)」だ。すでにGoogle Glassを試用した一部の開発者からは、「デジタル・ライフが一変した」との声も聞こえてくる。本当にそうなのか、もし普及したら我々の生活をどう変えていく可能性があるのか――。Google Glassを購入して「グラス生活」を送っている、米シリコンバレー在住のベンチャークレフ代表・宮本和明氏に、Google Glass が我々の生活に与えるインパクトを解説してもらう。今回は、Google Glassを活用した高度医療システムを紹介する。

Google Glassに代表される「スマートグラス」はビジネスとの相性が抜群で、多くのベンチャー企業からビジネス・ソリューションが登場している。

米サンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業の米Wearable Intelligence(ウエアラブル・インテリジェンス)もその一社で、ウエアラブル端末をビジネスに活用する技術を開発している。実は、Wearable IntelligenceはGoogleの元社員らが創設した企業で、Glass Collective(Google Glassに特化したベンチャー・ファンド)などが出資している。

Google Glassを活用した高度医療システム(出典:Wearable Intelligence、以下同)

脳梗塞発症患者にGoogle Glassで対応

Wearable Intelligenceが開発を進めているのが、Google Glassを活用した高度医療システムである。米国の大学病院では、Google Glassを装着した医師による手術が頻繁に行われており、すでに同グラスは必要不可欠の医療補助ツールと認知されている。

同社は、開発した医療システム解説するビデオを公開している。そこでは、脳梗塞を発症した患者が救急車で病院に運ばれて診断を受けるまでに、Google Glassをいかに活用できるかを示している。

患者情報や検査手順を表示

救急車の中では救急隊員がGoogle Glassを装着し、患者の情報を閲覧する (上の写真)。 グラスには患者の基本情報の他に、「Chief Complaint」として病状が表示されている。この事例では「Informant」という機能を使い、患者の医療データにアクセスしている。

病院に到着すると、担当医はGoogle Glassを着装して患者の治療に当たる 。医師はグラスに表示された診察手順 (NIHSS Checklist) に沿って、検査を行い、患者を診察。その様子をビデオで録画する。

上の写真はそのプロセスで、医師が患者に「両手を上げて」と語りかけ、その様子をビデオで撮影している。チェックが終わると「Send」と指示し、録画したビデオを「EHR (Electronic Health Record、電子カルテのように医療情報を電子的に記録するシステム) 」に送信する。これは「Director」という機能で、検査手順がGoogle Glassに表示される。

専門医とテレビ会議で治療方針決定

担当医師は、Google Glassに対して患者の症状を音声入力。「当直の脳神経外科医にメッセージ送信」と音声で指示して、専門医にメッセージを送る。脳神経外科医は担当医師からのメッセージをタブレットで受信し、治療方針について打ち合わせする(上の写真)。脳神経外科医は、CT(コンピューター断層撮影装置)スキャン検査結果をタブレットで閲覧し所見を述べる。

脳神経外科医は検査結果に応じて、患者の状態を直接見ることもできる。担当医師は患者の元に向かい、Google Glassで患者を撮影し、その様子を脳神経外科医にストリーミング形式で送信する(上の写真)。その様子を脳神経外科医はタブレットで閲覧し、患者の様態を把握する。

脳神経外科医は診断の結果、「TPA (血栓溶解剤) を処方する」として、「静脈注射により0.9mg/kgの量を処方。最初の一分は10%濃度を上げ、一時間にわたり投与」と指示。担当医師はこの治療方針に従って処置を行う。

これは「Avatar(アバター)」という機能で、現場の担当医が別の場所の専門医とテレビ会議で連携し、治療方針などを決定するために利用する。

Androidを医療用に改修

Wearable Intelligence 共同創設者でビジネス開発責任者のChase Feiger(チェイス・ファイガー)氏に、システムの概要について聞いた。

まだ公開できる情報は少ないとしながらも、同社は米国を中心に事業を展開しており、現在Google Glass医療システムは、米ハーバード大学医学大学院の関連施設であるBeth Israel Deaconess Medical Center(ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター)で実証実験を行っていると明かした。

この他、多くの医療システムとの統合も進めているという。Google Glass向けに様々な医療システムが登場しているが、Wearable Intelligenceは最も完成度の高いグラス医療システムであるとの印象を受けた。

Wearable Intelligenceは、Google Glassの基本ソフトを独自に改修したAndroid(アンドロイド)で置き換えている。医療専用システムとして開発しているため、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)など医療行為に不要なアプリを削除している。また、Google Glassの音声認識機能には、語彙を補強するために米Nuance(ニュアンス)の医療専用辞書を搭載している。

石油採掘現場向けソリューションも

同社は、医療システムの他に、エネルギー関連ソリューションを開発している。

上の写真はその一部で、石油採掘現場でプラントを操作している様子である。プラント作業員がバルブ操作方法を、Google Glassのディスプレーで参照している。このシステムは、世界最大の油田掘削会社である米Schlumberger(シュルンベルジェ)で使われている。

宮本 和明(みやもと・かずあき)
米ベンチャークレフ代表 1955年広島県生まれ。1985年、富士通より米国アムダールに赴任。北米でのスーパーコンピューター事業を推進。2003年、シリコンバレーでベンチャークレフを設立。ベンチャー企業を中心とする、ソフトウエア先端技術の研究を行う。20年に及ぶシリコンバレーでのキャリアを背景に、ブログ「Emerging Technology Review」で技術トレンドをレポートしている。

(米ベンチャークレフ 宮本和明)

[ITPro 2014年5月27日付の記事を基に再構成]

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