2019年3月21日(木)

ロボットスーツで脊髄損傷や脳卒中患者の身体機能改善 13年の注目技術5位

(1/2ページ)
2013/12/9 7:00
保存
共有
印刷
その他

 2013年、社会に大きなインパクトをもたらした技術は何か――。IT(情報技術)や医療、建設、電気・機械の分野を対象にした雑誌を発行する日経BP社では、専門記者200人が今年注目された300以上の技術を挙げ、その中から4人の審査員(ノンフィクション作家の山根一眞氏、日経トレンディの渡辺敦美編集長、日経ビジネスの山川龍雄編集長、日経WOMANの佐藤珠希編集長)がベストテンを選出した。今回は、ベストテンで5位となったロボットスーツ「HAL (ハル)」を紹介する。HALは2013年、医療用として開発されたタイプが、欧州で医療機器認証を取得した。これまでの、失った身体機能を改善・補助・拡張するという役割に加え、脳・神経・筋系の疾患患者の機能改善治療という新たな役割を担うことになった。

ロボットスーツHALの仕組み。装着者の関節角度を測定する角度センサーや重心の位置を検出するセンサーも取り付けられ、より正確に動きを補助できる。下肢用で重量は約15キログラム。装着者が乗り込む仕組みのため、重さは感じない(写真:CYBERDYNE)

ロボットスーツHALの仕組み。装着者の関節角度を測定する角度センサーや重心の位置を検出するセンサーも取り付けられ、より正確に動きを補助できる。下肢用で重量は約15キログラム。装着者が乗り込む仕組みのため、重さは感じない(写真:CYBERDYNE)

HALは、体に装着することで、失った身体機能を改善・補助・拡張する世界初のサイボーグ型ロボットだ。下半身に障害をもつ人の歩行や立ち座り、階段昇降といった日常生活の動作をサポートするとともに、機能を改善する。

筑波大学大学院教授の山海嘉之氏が開発したもので、国内では既に、福祉現場などでの使用が広がっている。脚力が弱った高齢者や下肢に障害のある人への自立支援などを目的に、同氏がCEO(最高経営責任者)を務めるベンチャー企業「CYBERDYNE(サイバーダイン)」が2010年からレンタルを開始。「HAL福祉用」として、医療機関や福祉施設約170カ所で稼働している。

■EUの医療機器認証を取得

一方で2013年8月、医療用として開発されたタイプが、欧州で医療機器認証「CEマーキング」を取得。HALは、EU全域で医療機器として使用できるようになり、「治療ができるロボット」としても注目を集めている。

対象は、脊髄損傷や脳卒中などの脳・神経・筋疾患の患者。HALを装着し、手順に従って治療を行うと、機能改善効果が期待できる。国内外で行われた臨床試験では、多くの症例で、機能改善や再生がみられ、歩行距離が伸びた例もある。

2013年 社会にインパクトを与えた技術
1位:イプシロンの人工知能
2位:自動ブレーキ技術
3位:ゲリラ雷雨予測技術
4位:静かに消すビル解体技術
5位:ロボットスーツ(HAL)
6位:3Dプリンター
7位:直下地下切り替え工法
8位:遠隔がれき撤去技術
9位:IGZO(イグゾー)
10位:Hadoop(ハドゥープ)

※日経BP社の専門記者200人が挙げた300以上の技術の中から、4人の審査員が選出した

 

HALの動作原理はこうだ。人が体を動かそうとすると、脳から運動ニューロンを介して筋肉に神経信号が伝わり、筋骨格系が動作する。その際、意思を反映した微弱な生体電位信号が皮膚表面に漏れ出してくる。HALは、装着者の皮膚表面に貼り付けたセンサーでこの信号を読み取り、動かそうとしている関節部のパワーユニットを調整。装着者の筋肉の動きと連動して筋肉を動かすことで、装着者の思い通りに動かすことができる。

脊髄損傷などで長期間歩行機能を失っている場合、自分で筋肉を動かすための信号が非常に微弱で、筋肉も動かせない。その際には、ロボットが自律的に人間のような動作をする。この自律的な機能と、前述の装着者の意思に合わせて動きを補助する機能の二つのシステムが混在して作動することで、装着者の機能障害の状態に応じて、適切なサポートを実現するのだ。

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

テクノインパクト2013

日経BPの関連記事

関連キーワード

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報