巨大化する中国ゲーム市場、日本勢にチャンスはあるか
ゲームジャーナリスト 新 清士

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2010/9/29 7:00
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04年には、スクウェア・エニックスの「クロスゲート」が1200万人ユーザーの登録を集め、人気ランキングで7位に付けるなど健闘した。同様に、06年ごろまでは韓国製ゲームが強さを見せ、人気ゲームの上位10タイトルのうち5タイトルは海外製が占めていた。しかし、07年以降、海外製は同3~4本と漸減傾向にあり、逆に中国の国産タイトルが人気を博すように変わってきている。

スクウェア・エニックスは9月16日、「ファイナルファンタジー14(FF14)」を中国オンラインゲーム企業最大手の一つ盛大遊戯(上海市)にライセンス提供するかたちでリリースすると発表した。

ソーシャルゲームでも同じ不均衡

「CEDEC(CESA開発者会議)」で講演する立命館大学の中村彰憲准教授

「CEDEC(CESA開発者会議)」で講演する立命館大学の中村彰憲准教授

スクウェア・エニックスの和田洋一社長は、サミットの中で「中国が成長することに疑問を持つ人はいない。問題はどうやって日本が関わるのかという手法の問題」と語った。さらに「エンターテインメントの場合、その地域に根ざしたものでないと(成功は)不可能だと思っている。アメリカはアメリカ人がコントロールし、イギリスはイギリス人がコントロールするべきだ。中国は習慣が違いすぎるので、事業提携になっていくだろう」と述べ、盛大と提携した理由を示唆した。

ただ盛大は、他社からライセンス提供を受けたタイトルを成功させた例があまりない。これまでガンホー・オンライン・エンターテイメントの「ラグナロクオンライン」や、旧テクモの格闘ゲーム「DOA ONLINE」を展開しているが、大きな成果には至っていない。

中国は先進国とは異なり、ゲーム内アイテムを現金で売買し合う「リアル・マネー・トレード」が広く普及している。現金化できるという魅力が、農村部でも多くのユーザーを集める要因の一つになっている。そのため、不正ツールが使われるリスクも高く、そうしたツールが中国から他の地域でのサービスに広がる懸念もある。

最近は欧米や日本と同様、中国でもソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で楽しむソーシャルゲームやブラウザーゲームの人気が高まっている。中国インターネット情報センター(CNNIC)が10年5月に発表した報告書によると、中国のソーシャルゲームやブラウザーゲームのユーザーは10年4月時点で1億500万人に上り、携帯電話で遊んでいる人が48.7%とほぼ半数を占めるという。

ただ、中村准教授の解説によると、課金額は通常のオンラインゲームより低い傾向にある。無料ユーザーの比率はオンラインゲームが55.7%なのに対して、ソーシャルゲームでは80.8%。支払額が月間5元(約650円)以下の課金ユーザーもオンラインゲームの60%に対して、ソーシャルゲームは80%と高く、収益性は総じて低いとみられる。

中国では、「サンシャイン牧場」を日本で成功させたRekoo Media(北京)をはじめとするソーシャルゲーム企業が次々と生まれており、「Facebook」など欧米圏のSNSにも積極的に進出している。

一方、日本など海外企業が中国に進出する場合は、行政機関の審査を求められる。オンラインゲームと同じく、中国企業は海外進出が容易だが海外企業は中国進出が難しいという不均衡、次の成長新市場であるソーシャルゲームでも起きている。

日本企業は本気になるのが遅かった?

カプコンの辻本春弘社長はサミットの討論で、「(日本企業は)家庭用ゲーム機のパッケージビジネスには長けているが、オンラインゲームは長く遊んでもらうためにずっと作り続けていく点が大きく違う。パッケージから考え方を変えなければ負けてしまう。オンラインゲームからも学び取って、危機感を持って導入していく必要がある」と語った。

日本の大手各社は、中国という急成長市場を念頭に、オンラインゲームの本格展開が必要という認識では一致している。しかし、中村准教授は「3年前に、今ほど本気であれば状況は違ったかもしれないが……」と指摘する。

すでに資金力をつけた中国企業にとって、日本との提携は必須の条件ではなくなりつつある。本来であれば、こういうときこそ行政のバックアップが必要なところだが、それが期待できない以上、この不均衡の中で争い続けるしかないという厳しい現実がある。

新清士(しん・きよし)
1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心としたジャーナリストに。国際ゲーム開発者協会日本(igda日本)代表、立命館大学映像学部非常勤講師、日本デジタルゲーム学会(digrajapan)理事なども務める。
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