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見えたカーナビの未来像 貪欲に最新技術のみ込む

カーナビ業界が技術革新に沸いている。東京都内で開催中の「第43回東京モーターショー」では、自動車メーカーだけでなく専業メーカーもカーナビの将来像を積極的にアピール。地図アプリ(応用ソフト)で経路検索できるスマートフォン(スマホ)の普及で存在意義を問われていたカーナビ業界だが、劣勢を覆そうと必死な姿がそちこちで見られた。貪欲にさまざまな最新技術をのみ込んだ近未来のカーナビは、スマホとの差異化が明確に図られている。来場者の関心も高く、どこのブースも熱気にあふれていた。

スマホは敵ではない、味方に付けてしまえ

ドライバー「近くに駐車場ない?」

エージェント「100メートル先に中央駐車場がありますが、ただいま満車です」

ドライバー「空いているところは?」

エージェント「300メートル先に駅前駐車場があります」

ドライバー「そこに行く」

エージェント「カーナビに目的地を転送します」

富士通テンがブースで展示していたのは、画面中のキャラクターとおしゃべりしながら目的地などを設定できる新製品だ。ドライバーが普段使い慣れたスマホを活用しカーナビとの間を無線LAN(構内情報通信網)でつなぐ斬新なコンセプトを採用した。スマホをライバル視せずにあえて取り込んでしまうことで、カーナビの魅力を高めようと試みる。

専用アプリ「カラフル」をダウンロードすると、カーナビはスマホを通じてクラウドと連携可能になる。富士通テンが用意したサーバーに接続し、膨大なデータを蓄積した音声認識の辞書データベースを参照できるようになる。おかげで高度な意味を理解し、ドライバーの発話内容や意図を推定してもらえるわけだ。

たとえば「トイレに行きたい」と言っただけでも、ドライバーがなるべく早く近くでトイレが用意されている施設に立ち寄りたいという意思をくみ取る。上記の例のように、会話を続けながら目的地などを絞り込んでいける工夫もある。通常の街中と違って車内は騒音が大きいため、独自開発したノイズ除去技術を採用。高速道路特有の雑音やエアコンの作動音があっても高い確率で声を認識可能にしている。

スマホの機能を取り込もうと試みる点では、カーナビ業界でシェア首位のパイオニアも同じだ。同社は「カースマ」と銘打って、車の中でカーナビとスマホが連携した新しい車内IT(情報技術)の世界を早くから提案してきた。モーターショーの会場では概念を一歩進めて、「専業メーカーが本気になってスマホをカーナビに仕立てれば、ここまで未来的になる」(説明員)姿を展示していた。

具体的にはNTTドコモと共同開発した「ドコモドライブネットインフォ」だ。両社は14日に協業強化を発表したばかりで、12月中旬に新サービスの提供を始める。デモでは当初のサービスの使い勝手だけでなく、順次追加する予定の新機能についても紹介していた。

運転中に画面を見てカーナビを操作することは危険である点を踏まえ、徹底的に音声で操作できるよう配慮した点に特徴がある。声で話しかけるだけでアドレス帳にある宛先などに電話を発信でき、SMS(簡易メール)の送信も可能だ。例えば「今日は天気がいいからドライブしています」とスマホに向かって話しかけると、音声認識ソフトによって内容を文字に変換し、指定した相手に送られる。一連の処理がすべて声で指示できるわけだ。

ソーシャルも車内センサーも

ドライバーが渋滞情報をネットに投稿して、他の利用者と情報交換もできる。いわばソーシャルメディアを取り込んだもので、おかげで前方を走るドライバーが事故や渋滞などが起こっていると投稿してくれれば、後続ドライバーは道順を変更するなどドライブに役立てられる。パイオニアの小谷進社長執行役員は「スマホがカーナビの世界に広がっていることは、専業メーカーの我々にとってはむしろ追い風」と語る。

参考展示していた将来の機能の一つが、車のオイル交換の時期などを踏まえて近くの整備工場に行くことを勧めるというもの。ほかにも車の各種センサーが記録するデータも将来的には活用し、利便性を高めていくという。あえてハードとしてのカーナビを捨ててでも、専業メーカーの最大の財産であるソフトを主軸に据える戦略だ。

ドコモはパイオニアの6.92%を握る第3位の大株主。今後さらにカーナビとスマホの連携を深め、カースマの世界を進化させていく。パイオニアが開発した自動車向けのクラウド基盤「モバイルテレマティクスセンター」で複雑なデータ解析を実施し、「一人ひとりに必要な情報を適切なタイミングで伝えられるようにする」(小谷社長執行役員)ことを目指す。

スマホ連携に加えカーナビ単独で機能に磨きをかける専業メーカーもある。それがアルパインだ。車内の天井に設置したセンサーに向かって身ぶりや手ぶりで操作できる次世代製品を開発しており、モーターショーの会場に持ち込んだ。目的地を設定するだけでなく、再生したい楽曲を選ぶなどさまざまなカーナビの機能を呼び出すことができる。「(声に比べても)直感的に操作できることを目指した」(アルパイン)と胸を張る。さらにカーナビに目を向けたときだけ画面を表示する新技術も展示。省エネ効果が期待できるほか、画面に気を取られて事故が起きる可能性を減らす効果も期待できるという。

電子情報技術産業協会(JEITA)によると、国内カーナビ市場は2012年に台数ベースで前年比14.6%増と好調。ただこのうちここ数年、けん引役を果たした簡易型カーナビ(PND)市場は24.1%と大幅に減少している。13年はさらに減少傾向が強まり、1~9月までの累計で37.4%減となった。言うまでもなく低迷の原因はスマホ。最近は米グーグルの地図アプリなど、無料で詳細な地図が見られしかも渋滞情報なども入手できるようになった。機能でも使い勝手でもPNDを超えつつある。

カーナビがスマホに食われてしまいかねず劣勢に立たされる中、あえてスマホを味方につけようとする数々の展示。その姿からはクルマやドライバーを知り尽くした専業メーカーの意地が感じられる。ただスマホの進化も勢いを増しており当面、専業メーカーは厳しい戦いを強いられそうだ。

(電子整理部 鈴木洋介)

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