金融政策、柔軟性どう温存 日銀展望リポート、経済見通しに悩ましさ

2010/4/29 18:32
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日銀が30日の金融政策決定会合でまとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」は、日銀にとって悩ましい内容となりそうだ。景気は持ち直しが続く。だが7月の参院選を前に、政府からは追加的な金融緩和などを求められかねない。日銀はどこに落としどころを見いだすのか。

政策決定会合後に記者会見する白川日銀総裁(4月7日、日銀本店)

市場関係者が展望リポートに注目するのは、日銀の政策運営の指針だからだ。日銀は毎年4月と10月にまとめるリポートで、向こう1~2年程度の成長率や物価の見通しを提示。毎月の政策決定会合では経済が想定したシナリオどおり推移しているか点検し、政策変更の是非などを判断する。

経済情勢の再検証を伴う展望リポートのとりまとめは政策変更の節目になりやすい。今回の決定会合も追加緩和のきっかけになる、とみる市場関係者が少なくなかった。だが7日の前回決定会合後、追加緩和の観測は急速にしぼんだ。会合後の記者会見で、白川方明総裁が「景気は明らかによい方向に動いている」など明るいトーンの発言を繰り返したからだ。市場は、30日の決定会合後の展開を見据えている。

今回の展望リポートも、その文脈で読まれることになりそう。つまり、展望リポートが今後の追加策の可能性をどこまでにじませるか、だ。

注目されるのが消費者物価(CPI)の上昇率。直近の政策委員らの予測中心値は2010年度がマイナス0.5%、2011年度が同0.2%だが、景気好転による需給ギャップ縮小や資源価格の上昇でゼロ付近に引き上げられる見通し。3年ぶりの小幅プラス予想となる公算もある。デフレ脱却への道筋がより明確になるかがポイントだ。

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「展望リポートが経済回復のシナリオを前進させても、微修正の範囲にとどまるだろう」とみる。政府の消費てこ入れ策が打ち切られるなど経済の先行きには不安要素もまだ多い。しかも7月の参院選を前にデフレ克服をめざす政府・与党が日銀に追加策を求めるのは必至だ。明るい内容の展望リポートをまとめた直後に追加緩和に動かざるを得なかった場合、整合性が保てなくなってしまう。

政府側では菅直人財務相が「物価上昇率は1~2%が好ましい」と発言。民主党の「デフレ脱却議員連盟」も、日銀に批判的な学者らとの勉強会を繰り返す。日銀が「粘り強く金融緩和を続ける」と強調しても、風圧は強まるばかりだ。

「CPIでプラス1%を100点満点とすれば、プラス0.1%を実現しても10点。政府は合格点とは考えないだろう」とみずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは話す。

多くの市場関係者が想定する追加策は、国債などを担保に0.1%の固定金利で期間3カ月の資金を貸し出す「新型オペ」の拡充だが、"期待"はこれにとどまらない。モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミストは「いずれ『インフレ目標的な制度を研究する』との方針を打ち出さざるを得ないのでは」とみる。

日銀は昨年12月の政策決定会合で、「マイナスの物価上昇率は容認していない」との立場を明確にしたが、市場からは「具体策が伴っていない」との批判も出た。展望リポートを機に、日銀と政府・市場との論争は一段と熱を帯びそうだ。(西村博之、大塚節雄)

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