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退職貧乏父さんが投信と付き合う3つのコツ

 銀行や証券会社が薦める投資信託を退職金で買ったものの、いつまでたっても元本割れ。仕方がないので、そのまま"塩漬け"状態で放置する――。「退職貧乏父さん」の多くが陥るこうした失敗をなくすには、まず購入時に「自分に合った投資信託はどのような商品か」を意識しながら情報収集や検討をすることが大切です。では、退職前後のタイミングで投資信託を買うときには、具体的に何を注意すべきなのでしょうか。今回は、知っておきたいポイントを解説します。

老後資金を賢く運用するには、投資信託(投信)との付き合い方にも注意したいところです。具体的には以下の3つのコツを身につけましょう。

コツその1 「分配金」に惑わされない

証券会社や銀行のウインドーを飾る広告で、よく見かける「毎月分配型」の投信。「毎月」「分配」というと、まるでお小遣いを振り込まれるような感じがしてうれしくなります。

こういった印象からか、毎月分配型の投信はとても人気で、現在国内の4000本以上ある投信(総額46兆円)のうち、実に7割( 金額ベース)を占めています(2011年末、野村総合研究所調べ)。2002年時点では2割だったので、この10年で急増していることが分かります。特に女性に人気ということで、いつのまにか奥さんがへそくりでたくさん購入していた、なんてこともあるかもしれません。

しかし、高い分配金を売りにする投信には要注意です。実は、分配金にも2種類あることをご存じでしょうか。

運用の結果、利益が出て、その利益から支払われる分配金のことを「普通分配金」といいます。一方、運用の結果、利益が出ていない状態にもかかわらず元本を切り崩して出される分配金のことを「元本払戻金(特別分配金)」と言います。

高い分配金をうたう投信が実は「元本払戻金」、つまり、「元本を切り崩して出している投信」だったということがよくあります。

手持ちの投信が元本を切り崩しているかどうかを調べるには、金融機関から送られてくる「分配金支払いのお知らせ」をチェックして、普通分配金なのか、元本払戻金なのかを確認しましょう。

そもそも、元本を切り崩して分配すると、どんなデメリットがあるのでしょうか?

図1を見てください。元本を切り崩す分配金なしのAファンドの場合、1年後の運用成績がプラスマイナスゼロでも、元本の総額に変化はありません。2年後に10%の利益が確定した場合、元本は110万円に増えます。

一方、元本を取り崩す分配ありのBファンドではどうでしょうか。Bファンドの場合、1年後に運用による利益が出なくても、投資家に分配金を出すために元本を20%取り崩しました。結果、元本は80万円に減りました。2年後に10%の利益が出ましたが、元本は88万円にしかなりません。つまり、元本を取り崩してしまうと、せっかく運用しているのにもかかわらず、利益が出にくくなってしまうのです。

図1 分配金の有無による利益の増え方の違い(資料はガイア作成)

これでは、お金を「信託」している意味がないと思いませんか。

2012年6月から、投信の特別分配金は「元本払戻金」と記載されることが、投資信託協会により義務化されました。これによって、"分配金の出所"に関心をもつ投資家は以前より増えましたが、「まだまだ、投資家の意識は足りない」と独立系FP法人ガイアのファンドアナリスト、吉井崇裕さんは警鐘を鳴らします。信託報酬を払って運用を託し、毎月受け取って喜んでいた分配金が、実は自分が払い込んだ元本にすぎなかった、などということは避けたいものです。

コツその2 運用成績のいい投信を見極める

投信を購入するとき、「この商品は売れ筋です」というセールストークに弱いのは、きっとあなただけではありません。

しかし、「売れている投信」=「もうかっている投信」とは限りません。「自分の目で、運用成績をチェックする意識が大切」と吉井さんは繰り返します。「プロじゃないんだから、投信の運用成績なんて比較できないよ」と思い込んでいるお父さんもいるかもしれません。誰でも簡単に参考情報を入手できる方法があります。

吉井さんが勧めるのは、インターネットのホームページで、投信の「格付け(星の数)」をチェックする方法。「モーニングスター」など、投信の評価を専門とする会社が、金融商品の運用成績とその評価について、分かりやすく公表しています(ウェブサイトのURLは http://www.morningstar.co.jp/ )。

例えば、実際に2012年に公表されている評価を見てみましょう。「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」は、2012年7月末で、約1兆5300億円で日本で最も純資産残高の多いマンモス投信ですが、成績はというと、過去10年のトータルリターンが17.38%で、モーニング・スターの評価は星2つです。一方、グローバル・ソブリン・オープンと同様に、主に世界の公社債に投資する「BAMワールド・ボンド&カレンシー・ファンド」という投信は、純資産約1100億円という地味な規模ながら、同期間で62.32%というリターンを出し、5つ星の評価を取っています。

「もちろん、人気かつ成績のいい商品もありますが、"売れているから大丈夫"と安心しきってしまうのは危険。自分で情報を積極的に取りにいく姿勢をもつことが重要です」と、吉井さんはアドバイスします。

コツその3 リスク許容度に合う投信を買う

投信を購入する上で、もう一つ持っておきたい視点は、自分のリスク許容度の範囲内の商品を選ぶこと。大事なお金を使って運用するのですから、予想よりもダイナミックな値動きをする商品に投資してしまうと、心配で夜も眠れなくなってしまいます。

逆に、「多少のリスクはとっても、高いリターンを期待したい」と望むのならば、そういった商品でないと満足できないでしょう。 吉井さんは「購入したいと思う投信が"カメファンド"なのか"ウサギファンド"なのか、あらかじめ見極めた上で商品の選択を」とアドバイスします(図2)。

図2 「カメファンド」と「ウサギファンド」

吉井さんの言う「カメファンド」とは、高いリターンは期待できないものの、高い損失を出す可能性も低い、安定的な値動きをする投信のこと。債券や円建て資産で構成されているもの、海外の資産に投資する投信でも「為替ヘッジ(=為替リスクを取らない)」と商品名に入っているものを指します。カメのように歩みは遅くても、じっくりと利益を出すことを狙う投信です。

一方、「ウサギファンド」は、ぴょんぴょん跳ねるウサギのように値動きが激しく、損失リスクが高い分、期待リターンも高い投信のことです。株式や不動産投資信託(REIT)、為替リスク有りの外貨建て商品などを指します。

自分にとってより満足、安心できるのは「ウサギ」なのか、「カメ」なのか、はっきりと方針を持たないままに投信を購入してしまうと、「こんなに損失が出てしまうなんて……」と後悔することになるのです。

例えば、500万円で投信を購入するときに、許容できる損失額はいくらまでなのか。10 %(マイナス50万円)なのか、20%(マイナス100万円)なのか。そのリスク許容度によって商品の選択肢は変わってきます。

商品見極めのために、その投信が1年間でどのくらいの損失を出す可能性があるかをチェックする方法も紹介しておきましょう。

それは「標準偏差」と言われる数値で分かります。標準偏差はリスクを測る尺度のひとつで、この値が大きいと、もうかるときと損するときのばらつきも大きいです。

ガイアの吉井さんがお勧めするのは、「投信まとなび」という投信情報サイト(http://www.matonavi.jp/ )。投信の商品名を検索すると、標準偏差が分かります。「標準偏差の数値の約2倍以内の範囲で損失が済む可能性が高いと言われています」と吉井さん。つまり、標準偏差が6%であれば、2倍にした12%が最大の損失額と試算できるということ。ガイアでは、この計算方法を元に各投信の最大損失額を算出し、投信の見直しの参考値にしているそうです。

値下がり投信を賢く見直して退職マネーを守れ

「賢く投信と付き合うコツ」としてここまで紹介した3つのポイントを、もう一度おさらいしてみましょう。

1.元本を減らす「分配金」に注意しましょう
2.「売れ筋商品」に惑わされず、運用成績をチェックしましょう
3.自分のリスク許容度に合った、安心・満足できる投信を選びましょう

特に、3番目の「安心できる商品選び」は重要なポイントです。

吉井さんは、「投信見直しの際に欠かせないのが、目標とするリスクとリターンを改めて考えてみること」と強調します。

相談に訪れる投資家は、「自分がお金をどれだけ増やしたいか、そのためにいくら損をしても大丈夫か」をイメージしないまま投信の購入に踏み切ったケースがほとんどなのだそうです。

「お金を増やしたいという漠然とした目標でなく、具体的な数字で考えることが大切です」(吉井さん)。例えば1000万円を何年後にいくらにしたいか。そして、その間いくらまで損が出ても耐えられるか。目標リターンと許容損失額の目安が立てば、それに沿って株式や債券などの資産の配分比率が決められます。その上で、具体的な商品の選択する、というのが本来の順番なのです。「おすすめの商品は?」とやみくもに聞いて、勧められるままに商品を購入していては、希望するリターンやリスクとはかけ離れたポートフォリオになってしまうので要注意です。

では、期待リターンと最大損失額の違いによって、投信の組み合わせはどのように変わるのでしょうか。3つのタイプ別に吉井さんがポートフォリオを提案してくれました。

1つ目は年間3%のリターンを目標とし、安定運用を行うプラン。先進国債券に45%、ハイイールド債券に30%、新興国債券に25%を振り分けます。1000万円を投資した場合の最大損失額の試算は83万円。安定した利子収入が見込める債券に絞って、海外物は為替ヘッジありを選んでいるのが特徴です。

2つ目は年間5%のリターンを目標し、ややリスクを取って積極運用をするプラン。内訳は、ハイイールド債券と新興国債券に各30%、先進国債券に20%、新興国株式、国内REITに各10%といったものです。債券を全体の8割とし、割安で魅力のある新興国株式、国内REITを投資先に追加しています。

3つ目は年間7%のリターンを目標とする積極運用型プランです。ハイイールド債券に30%、新興国債券と新興国株式に各20%、先進国株式、国内株式、国内REITに各10%を投資する内容です。このプランは投資配分の半分を株式やREITが占め、価格変動リスクが大きいため、「積み立て投資か、資産を何回かに分けて投資する方法が望ましい」と吉井さん。 期待リターンは市場環境によって変動するので、定期的な見直しも不可欠です。

(ライター 宮本恵理子・福島由恵、日経マネー 羽生祥子)

[日経マネー編集部『退職貧乏父さんにならない6つの方法』(日経BP社)を基に再構成]

[参考]『退職貧乏父さんにならない6つの方法』(1470円、9月24日に発売)は、退職金・年金を賢く殖やすための情報を日経マネー誌がまとめた書籍です。日本経済新聞電子版で好評だった記事に加筆した内容のほか、保険の見直し方や「退職リッチ父さんになるためのサクセスノート」など、40代~60代のお父さんとその妻の退職ライフに必要なマネーの知恵を収録しています。

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