2017年11月21日(火)

円暴落はあり得るのか、為替の新常識  課長のためのお金塾(2)

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2012/7/6 7:08
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 ビジネスリーダーとしてのステージを高めていく上で「おカネ」を語れるかどうかは重要なポイントです。今さら聞けなかったお金の常識や資産形成の基本について3回の連載で解説する「課長のためのお金塾」。第2回となる今回は、日々ニュースなどで紹介される為替相場についてです。誰もが「知っている」と思っている為替の仕組みですが、それは本当に正しい認識なのでしょうか。相場を決める本当の理由や新常識を、話題の本『弱い日本の強い円』(日本経済新聞出版社)の著者・佐々木融氏に聞きました。

【この人に聞きました】
佐々木融(ささき・とおる)さん  JPモルガン・チェース銀行マネジングディレクター。日本銀行で調査統計局などを担当し、円売り介入の実務も経験。2003年から現職。

【この人に聞きました】
佐々木融(ささき・とおる)さん  JPモルガン・チェース銀行マネジングディレクター。日本銀行で調査統計局などを担当し、円売り介入の実務も経験。2003年から現職。

 「日本の財政赤字拡大で円は売られる。為替相場は国力を反映する」。31年ぶりの貿易赤字が報道されるや否や、このような「円暴落説」が語られ始めています。しかし、ちょっと待って。国力が弱まれば円が弱くなるとしたら、なぜ東日本大震災直後に円高が進んだのでしょうか?

■「財政悪化で円暴落」とは限らない

 国力低下によって早急な円安に向かうという考え方は的外れで、実際には国力と為替相場にはあまり関係がないのです(図1)。例えば経済成長が国力だと考えた場合、国力と円の強さはむしろ正反対の動きを示します。円の場合、経済成長率が低いときの方が円高になる傾向が強いのです。

図1 国力と関係なく円は強い  世界の株価と為替の変動を示した。「通貨の価値は国力を反映する」という説は、根拠に乏しい議論。バブルが崩壊した1990年以降の日本経済は長期停滞し、明らかに「国力」は弱まった。一方でその間、最も国力が強かったはずの米国の通貨は、対円で44%も下落しているのだ。

図1 国力と関係なく円は強い  世界の株価と為替の変動を示した。「通貨の価値は国力を反映する」という説は、根拠に乏しい議論。バブルが崩壊した1990年以降の日本経済は長期停滞し、明らかに「国力」は弱まった。一方でその間、最も国力が強かったはずの米国の通貨は、対円で44%も下落しているのだ。

 為替相場は非常に複雑な要因が絡み合って動きますが、基本的な変動パターンがあります。それは、世界的に株価が上昇する「景気が良いとき」は、円と米ドルが“弱い通貨”となり、円は豪ドルやカナダドルなどの高金利通貨に対して円安になりやすいのです。逆に、世界的に株価が下落している「不景気」なときには、円と米ドルが強い通貨となり、円高となる傾向があります。

 それはなぜか。世界が好景気ならば投資家や企業が積極的にリスクを取り、対外投資をするようになるからです。日本経済は外需依存度が高いので、世界経済が強くなると好転する。そして日本の景気が良くなると、円安方向に動くのです。つまり、円安になるか円高になるかは、世界の株価変動(景気の良しあし)に影響されるのであって、国力や財政との関係は短期的にも長期的にも希薄といえるのです。

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