2019年8月26日(月)

「はやぶさ」60億キロの旅 川口淳一郎
JAXA プロジェクトマネージャー

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2010/12/29 10:34
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小惑星探査機「はやぶさ」が2010年6月13日、60億kmの旅の末、流星となって帰還した。プロジェクトメンバーの献身的努力と多くの方々の声援、そして「はやぶさ」自身に助けられ、なんとか地球帰還を果たせた。感謝の言葉もない。

「はやぶさ」は小惑星のサンプルを地球に持ち帰る「サンプルリターン」の技術実証を主目的とした工学実験探査機。燃料効率が非常に高い新型エンジン「イオンエンジン」で惑星間航行し、イトカワ上空に到達してからは自身の判断で離着陸とサンプル採集を行う。サンプルは地球帰還カプセルに収納、これを地球上空まで持ち帰り、カプセルを分離、大気圏に突入させる。

大きな翼を持つ「はやぶさ」。太陽電池パドルを備え、画面手前のイオンエンジンで惑星間を航行する。機体上部に見えるのは高利得アンテナ(JAXA提供)

大きな翼を持つ「はやぶさ」。太陽電池パドルを備え、画面手前のイオンエンジンで惑星間を航行する。機体上部に見えるのは高利得アンテナ(JAXA提供)

「はやぶさ」はこれらをすべてやり遂げた。本体は上空で燃え尽きたが、カプセルは無事回収された。カプセルを宇宙航空研究開発機構(JAXA)相模原キャンパスに運び、新設の専用施設で開封したところ、微量の塵が確認された。その後の分析で1500粒が小惑星イトカワのものとわかった。月以外の天体に着陸して持ち帰られた初のサンプルだ。

■順調だった往路

著者 川口 淳一郎(かわぐち・じゅんいちろう) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所宇宙航空システム研究系教授、「はやぶさ」プロジェクトマネージャー。専門は探査機の飛行力学、姿勢・軌道制御など

著者 川口 淳一郎(かわぐち・じゅんいちろう) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所宇宙航空システム研究系教授、「はやぶさ」プロジェクトマネージャー。専門は探査機の飛行力学、姿勢・軌道制御など

旅立ちは2003年5月。鹿児島県内之浦からM5ロケット5号機で打ち上げられた。地球近傍で惑星間航行に向けた準備が進むうちにイオンエンジン1基の不調が判明した。これは想定内のトラブルで、残り3基のフル稼働で十分な推力が得られ、イトカワに向かうことができた。

出発から1年後の2004年5月、太陽を周回して再び地球近傍に舞い戻り、地球の重力を利用した加速(地球スイングバイ)に成功、イトカワへの足を速めた。さらに1年後の05年7月、行く手にイトカワの微かな輝きをとらえると、そのデータなどをもとに軌道を微調整、8月にも軌道修正を行い、同月末にイオンエンジンによる往路の惑星間航行を終了した。化学エンジンを噴かして減速し、9月12日、「はやぶさ」はイトカワの上空約20kmで静止した。

その間、7月末に機体の姿勢制御を担うリアクションホイールの1つが故障した。リアクションホイールは搭載機器の中でも壊れやすい装置なので、3台中の1台の故障は想定の範囲内だった。残る2台を使って予定通りイトカワ上空からの観測を開始、小惑星研究に新時代を開くデータを得ることができた。

■着陸成功! そして暗転

しかし、上空からの観測を始めてから約20日後の10月2日深夜、リアクションホイールがさらに1台故障した。3台のうち2台も故障するのは想定外だった。姿勢制御は生き残ったリアクションホイール1台と化学エンジン噴射の組み合わせで行うこととなった。

ただ、化学エンジンではリアクションホイールほど精密な姿勢制御はできない。そのためイトカワを撮影するカメラのブレを抑えたり、データを高速伝送する高利得アンテナを地球に向け続けたりすることが難しくなり、観測に支障が出た。それまでにかなりの観測データが得られていたのは幸いだった。

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