ストレッチで「やせスイッチ」オン 一生太らない体を作る
日経ヘルス

動くのがおっくうになってしまった体では、筋肉はこわばり、活動量も消費エネルギーもダウンしている。筋肉のポンプ作用もきちんと働かないから巡りも悪くなって、むくむことにもなりかねない。
こんなサイクルから抜け出すイチオシの方法が「ストレッチ」。その魅力は、激しい運動や無理な食事制限をしなくても、やれば確実に体が変わること。運動量は小さいが、こわばった筋肉を伸ばしていくと体の動きが大きくなって、日ごろの消費エネルギーがアップして"やせスイッチ"がオンに。姿勢が良くなって動きもしなやかになるから、見た目もすぐにきれいになってくる。
代謝の良い体になっておくと、冷えや肩こり、腰痛にもなりにくい。続けていけば、一生太らない体も夢じゃない。
■体が軽やかに動き代謝が上がる
ストレッチによる主な効果は、「筋肉がほぐれて伸びる」「関節の可動域が大きくなる」の二つ。これらは、いわゆる"柔らかい体"になる条件だ。
体が柔らかくなると、どんないいことがあるのか? 答えはズバリ、"やせ体質"になること。「体を大きく動かせると、消費エネルギーが上がる。また、よく動かす部位は脂肪がつきにくい」(近畿大学の谷本道哉講師)。ダイエットにもいいのだ。
さらに、よく動く体は、代謝やホルモンのアップ、姿勢が整い肩こりや腰痛を改善、疲れにくくなる……などなど、いいスパイラルを次々に生んでくれる。

■むくみ改善、ホルモンの産生にも好影響

代謝が上がると、まず変わるのが血流やリンパの流れ。水分や体温が一部に滞らないので、「むくみ」や「冷え」などの不調改善につながる。
一方、筋肉が刺激されるので、代謝や筋機能の増強に関わる性ホルモンにも良い効果を生みそうだ。
性ホルモンはこれまで、卵巣や精巣などで「DHEA」という前段階の物質から合成酵素の働きで作られるとされていた。しかし、最新の研究では「この合成酵素は、筋肉にもあることが分かり、筋肉自体がDHEAを取り込んで性ホルモンをつくる機能があると考えられている」と、専修大学の相澤勝治講師。
この働きは、筋トレなどで筋肉の活動を高めるほど活発になる。ストレッチのような運動も、「性ホルモンの産生を高めるための刺激として重要」(相澤講師)と、いえそうなのだ。
■肩と股関節が柔らかいと美姿勢で、凝りや腰痛も解消
体のしなやかな動きの要になるのが、「肩」と「股関節」の周りにある筋肉群だ。「肩」の周りが硬くて動きが悪いと、胸や背中の動きが縮まり姿勢が崩れる。これが肩こり の原因にもなる。同じく、「股関節」の周りが硬いと骨盤が傾き、ゆがみをつくる。こちらは腰痛の原因になる。
こんな体のトラブルを起こしやすい二大ポイントをほぐすのにもストレッチが効果的なのだ。凝りを取るのにもいい。
筋肉がほぐれてくると、姿勢がきれいになり、ゆがみが取れる。ストレッチを続けると「肩こりや腰痛の解消、予防になる」(法政大学の伊藤教授)。
硬くなった筋肉をストレッチで伸ばすことは、非常に有効な手立てだったのだ。

ストレッチというと、小学校で習った柔軟体操を思い浮かべる人が多いのでは? 反動を使って筋肉を伸ばそうとするとき、目いっぱいまで伸ばすと"これ以上伸ばさせまい"とする筋肉の「伸張反射」が起きて、痛さの割になかなか伸びない。筋肉は、この伸張反射が起こらないようにしながら脱力したときに伸びやすくなる。まず静的ストレッチで筋肉をほぐしたら、さらに動的ストレッチで体の動きをスムーズにしていこう。
■疲れがとれやすくなりリラックスや安眠効果も
仕事などでじっとしているときも、姿勢を維持するために筋肉は収縮している。筋肉の周囲には、乳酸などの疲労物質や発痛物質がたまり、疲れや凝りの原因になる。こんな"じっと固まった疲れ"をとるのに、ストレッチはうってつけだ。疲労や発痛物質を流すのは静脈の役割だが、静脈には流れを作る弁があり、筋肉がよく動くとこの弁の働きで、心臓へと戻る血行の流れが生じる。それにより、滞った物質が流れ去っていく。
また、ストレッチで胸周囲の筋肉をほぐすと、呼吸が深くなり、リラックスや安眠につながる効果もある。
■ストレッチを続けると「筋トレ」にもなる
高齢者を対象にした運動サークルを指導する実践女子大学の山田茂教授は、「ある女性が腹痛で通院した。調べると数日前の運動での筋肉痛と診断された」と話す。長年の運動不足で筋肉痛の感覚を忘れていたという笑い話だが、そんなあなたも最近、筋肉痛になるほど動いた?

ストレッチは運動として物足りなさそう、と思う人もいるかもしれない。だが、動物から採取した筋肉を伸び縮みさせ続ける実験で、「筋細胞の成長は確認されている」(山田教授)という。つまりストレッチは、柔らかい体をつくると同時に、筋トレの役目にもなるのだ。
運動不足の現代女性が、急にキツイ運動を始めても、体に負担がかかり、長く続けられない。だから、筋トレにもなるストレッチが向く。よく伸ばして、一生太らない体を手に入れよう。
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【あなたのやわらか度をチェック】
どれか一つでも固いところがあれば今すぐストレッチを

柔らかい体の指標になるのが、上のイラストのチェック方法。「肩」「体幹」「股関節」に関係する筋肉の状態と関節の可動域の度合いがわかる。「肩」は、腕の動きを生む肩関節と筋肉の連動。「体幹」は、背骨や骨盤を動かす筋肉との連動。「股関節」では、脚部と骨盤に関わるハムストリングスの動きを見よう。このように、三つの部位の柔軟性には、それぞれ大切な役割がある。チェックのどれかに引っかかったら……。今すぐストレッチしよう。

体がより伸びるストレッチのコツ5カ条
1 8割の強さで伸ばす
2 呼吸は止めないこと
3 反動をつけて伸ばさない
4 伸ばしたいパーツに意識を向けてやる
5 段階的に伸ばしてゆく
(日経ヘルス 池田悟、西山裕子、羽田光)
[日経ヘルス2011年9月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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