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「キラキラ女子」を引き寄せる会社の条件 憧れ、説得力、多様性…

サイバー流、女性活用の研究(3)

 「女性らしさ」を大切にする藤田晋社長の戦略が、今のサイバーエージェントにおける社風の礎となっていた(連載第1回第2回を参照)。しかし、公私ともに輝いていたい働く女性像を志向する女子学生の目をひくことはできても、最終的に会社を選ぶ権限は、当然、彼女らにある。優秀な女子学生に選ばれるのには、それなりの理由があるはず。探ろうと、活躍する6人の「キラキラ女子」に、生い立ちからこれまでの話を聞いた。(文中敬称略)

6人に共通していえるのは、皆、意識が高く「アクティブ」な子ども時代、学生時代を過ごしてきたということ。就職活動や仕事観については、自分なりの考えを貫く「強さ」を備えていた。彼女らが最終的にサイバーエージェントを選んだ決め手は、大きく3つに分類される。まずは、「生き生きと働く先輩に憧れ」た2人から紹介しよう。

「生き生き」と働く先輩へ憧れ

石田裕子(31歳、04年入社)は今年2月に子会社社長にばってきされたエース。10年11月に出産後、わずか2カ月で職場復帰を果たした「働くママ」でもあり、サイバーエージェントにおける働く女性の「ロールモデル(お手本となる成功モデル)」の筆頭といえる。

新卒時、それも就職氷河期のまっただ中の03年当時、放送局や出版社、メガバンクなど大手を中心に18社から内定を得た実績の持ち主。大手企業が列をなして太鼓判を押した優秀な人材は、サイバーエージェント入社後、期待を裏切らず、数々の社内表彰を総なめにした。

2004年、インターネット広告の取次事業で広告営業に配属された石田は、7年半の営業時代を通じて、「グループ総会ベストプレイヤー賞」「同ベストマネージャー賞受賞」など全社レベルの表彰のほか、営業個人の売上高や粗利トップを表彰する「月間MVP」を計12回、トップ成績のグループを表彰する「月間ベストグループ賞」を計13回も受賞している。

11年10月には輝かしいキャリアをあっさりと捨て、スマホ向けメディア「Ameba(アメーバ)」のプロデューサー業へと職種転換。数十のサービスが同居するプラットフォームの仕様設計や戦略立案を担当する重要な役回りへと転じた後の13年2月、スマートフォン(スマホ)向けオークション「パシャオク」の分社化にともない、子会社社長に就いた。

「思いついたらすぐ行動して、結果出して、説得する」

そんな石田に昔の話を聞こうとすると、「私、普通すぎて、(取材から)帰りたいんですよ。普通の家庭で普通に育っているんで。聞いても、何も面白いものがでないですよー」と謙遜する。しかし、いやはや。高校時代から傑出した「行動力」を見せていた。

「父は普通のサラリーマン。小さい頃は何にもなりたくなかった。単純に引き出しが多いというか、選択肢が多い人間にはなりたいな、ということくらいしか思ってなかった」。そんな石田は高校時代、親にも相談せず、米国留学に出ようと画策する。

父親は転勤族。高校時代は新潟県で過ごしており、石田は、英語の試験が応募者で1位になったら、留学費用の半額を補填してもらえる県の奨学生制度に応募した。「やっちゃったから、すみません。1位をとれたら行かせてくれと説得しまして、無事にテキサス州のど田舎に1年間留学できました。思いついたらすぐ行動して、結果出して、説得する。そんな子どもでした」

「自分の仕事がこんなに楽しいんだよとキラキラ語っていた」

1年後に帰国し、本来、日本の高校で留年しなければならなかった石田は、「校長に直談判をして、そのまま進学した」。進学先は慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス。だがネットやITに興味があったわけでもなく、大学1年からマスコミ就職セミナーに通った。「マスコミへの漠然とした憧れがあった。性格なんでしょうね。早めに動こうと」

性格の表れか、石田の就活はすさまじい。エントリーした会社は300社。「1日3、4社くらいまわって。それが楽しくなってくるんですね。今しか行けないみたいな。この1週間で100社いけた!とか」。結果、マスコミを中心に18社の内定を得た。サイバーエージェントはというと、「そもそも何の会社か知らなかった。きっかけはマスコミ全般で受けようと思ってる中で『広告』という言葉に引っかかり、何でこんな初任給高いんだ、くらい」。それが、なぜ。

「内定者フォローで先輩と話をする中で、1年目、2年目の若手が、自分の仕事がこんなに楽しいんだよとキラキラ語っていたのが、あまりにもほかの大手と比べて印象的だったというか、あまりにも違った。あ、こういう働き方をすべきなんじゃないかという直感というかひらめきがあって。迷いはまったくなかったですね」

「求める仕事の軸となっていたのは、人と人をつなぐというか、コミュニケーションが発生する場にいたいということ。広告営業は地味ですけれど、お客さんに認めてもらえるのがモチベーションにつながって、また頑張れるというやりがいのループが楽しかった」

入社1年目からサービス開発責任者の「元アイドル」

石田には今、続く後輩のロールモデルとしての自負がある。「入社年次も早い。サイバーエージェントでの女性の働き方が確立できていない時代に、道筋を模索しながら(道を)敷いてきたという自負はあります」。社内結婚、出産、職種転換を経た石田は、「社内初の女性取締役に最も近い」存在として、子会社という新境地で辣腕をふるう。

「元アイドル」という異色の肩書を持つ奥田綾乃(26歳、09年入社)も、先輩社員に引かれて入社を決めた1人。入社1年目からいきなりスマホ向けサービスのプロデューサー業(企画責任者)を任され、4年で4本のサービスをリリースしてきた。昨年後半は、約25万人のユーザーがいる「あそんでHuggPet」というアメーバピグと連動したペット育成ソーシャルゲームのプロデューサーとして、20人ほどのメンバーを率いた。

「同期でトップ?」と水を向けると、「胸を張ってプロデューサーとして頑張っているとは言えるかなとは思います」と、控えめながら自信をのぞかせる。

そんな奥田は、小学4年で子役として芸能界デビューした経歴がある。中学に入ってアイドルユニットのオーディションに受かり、以降、アイドルとして大学4年まで活動した。しかし、中高と成長するにつれ「芸能活動がリアルじゃなくなってきてしまった。高校生くらいから、きちんと社会に出て仕事を出たいと思い始めた」。理由を「人を差し置いて目立つのというが自分の性格と合わなかった。チームワークは好きだったんですけど……」と話す。

「先輩社員に触れて、考えがいい意味で覆された」

「人生の選択肢が狭まるのはもったいない」と思い、選択肢を広げるために立教大学社会学部へ進学。「育ててきてくださった事務所の皆さんに恩返しをしたい」という気持ちで芸能活動も続けたが、同じ分、キャンパスライフにも情熱を注いだ。「大学生になっても運動会を」と自ら学内サークルを立ち上げ、実際に300人規模の運動会も実施した。

大学3年。「自分が触れるもの、日常に近いところでの就職を考えていた。ケータイやウェブサービスにすごく興味があって、当時、『アメーバブログ』がちょうど盛り上がってるタイミング。自然と、受けてみようかなと思えた」。ほかの会社の選考は「受けていない」。「友だちには大丈夫なの?って心配されました。けっこう驚かれるんですけど。最終的に、ここしかいきたくないと思ってしまった」。奥田をひきつけたのは、人だった。

「社会人になるというのが、狭い枠に入ってしまうんじゃないかという心配がすごいあったんですよね。やっぱり大学時代は自由。社会に入るというのは型にはまることだと思っていた部分があって。サイバーエージェントの先輩社員に触れて、それがすごくいい意味で覆された」

「セミナーや人事面接でお会いする社員さんがめちゃめちゃしっかりされていて、『責任者です。事業を任されています』というのに、年次を聞いたら2年目だったり3年目だったり。すごく衝撃を受けて。とにかく出会った先輩が生き生きとしていて、『仕事が人生のたのしみなんだ』という先輩が多かった。仕事とは何か、という自分の常識が覆された」

女性の活躍に説得力

奥田が先輩が生き生きしていると思えた重要な要素は、入社1~3年目にもかかわらず、責任があり、任されていたこと。このことは、特に「時間をムダにはしたくない」と思っている女子学生にとって、大きい。彼女らが最終的にサイバーエージェントを選んだ決め手の2つ目は、「女性の活躍に説得力」があったことだ。

山崎ひとみ(28歳、07年入社)は、複数のスマホ向け人気サービスを扱う第一コミュニティ事業部の事業部長。社内では、50~60人のメンバー率いる「山崎組」のリーダーとして知られる。入社2年目でパソコン向け仮想空間サービス「アメーバピグ」を立ち上げた後、「このままピグにいたら自分が腐る」と考え、自ら社長に配置転換を志願した猛者でもある。

自分のキャッチコピーを「渋谷ではたらく人生燃焼系女子」とする山崎だが、「1つだけ願いがかなうとしたら?」の答えは「宝塚に入る」という女子心も見せる。

幼稚園から大学まで日本女子大学系列で過ごした「ポンジョっ子」の山崎は、高校時代、真剣に「宝塚」にはまった。

日本女子大学付属高校は30年近く続く「宝塚歌劇団同好会」が有名で、本家の宝塚歌劇団さながらのレビューは文化祭の目玉。宝塚の女優に見てもらった時は「お金が取れるレベルだね」といわれたという。ここで山崎は娘役トップまで上り詰めた。「本物の宝塚に入ったら、トップにはなれない。これでいいやって、満足できた」

「女性であることが障壁やデメリットにならない環境で働きたい」

就活は「ミーハーなところで広告代理店などを受けていく流れで、サイバーエージェントを見て、すごくかっこいい会社だなと思ったのがきっかけ。どうしても入りたくなって、最後1本に絞った」。母親に「落ちたら就職浪人させてくれ」と頼んだほど、入れ込んだ。

もともと山崎は、日本航空で客室乗務員をしていた母親の影響もあって「超キャリア志向」。母親はアシスタントパーサーまで務め、山崎を生むため退職の後、大手飲食チェーンのサービス研修のマネジャーとなり、60歳を超えた今も「現役でバリバリ働いている」という。「とにかく女性は自立しなさい。それが女性の選択肢を増やすから」と山崎にいってきた母親は、大企業への就職を望んでいた。しかし山崎はベンチャーを選んだ。

「女性の場合は頑張って働ける時間が限られていると思っていて。若いうちにチャンスや経験が必要かなと思っていた」という山崎は、どの会社の面接でも、こう面接官に話していたという。「女性であることが障壁やデメリットにならない環境で働きたいです。同期の男性を超えなければいけない、というような頑張り方はムダだと思います」……。

「サイバーエージェントの人事担当は『間違いなくそういう環境がありますよ』と即答してくれた。迷いなくそう返してくれるところは少ないので、ああ、ここならと思えた」。山崎の新卒同期は135人で男女比はほぼ半々。「新卒を戦力として考えている証拠」ととらえ、「男女比が7対3か8対2の大手が多い中、半々のサイバーエージェントはフェアとも思えた」と話す。

年功序列の日本に違和感を覚えたバレリーナ

人事本部 新卒採用・育成グループでマネージャーを務める小川璃紗(28歳、07年入社)は、山崎同様「女性には時間がない」とする1人。入社2年目で全国70の理工系大学を回りまわり、技術者の新卒採用の礎を1人で築き上げた小川。サイバーエージェントへの入社の決心には、得意のクラシックバレエでの実体験が大きく影響していた。

3歳からクラシックバレエを始めた小川は「ずっとバレリーナになろうと思っていた」。父親の仕事で小学3年から渡米。米国ではバレエ団の授業料が免除になるオーディションに合格し、米国内で単身、バレエ留学もする。「勝負できるのかなという自信もついた」。しかし中学2年で帰国した小川は、違和感を覚える。

中学2年からの「中途」は、年功序列の日本のバレエ団では「ぺーぺー」扱い。「新参者にすごい厳しくて、小学校からやってきた子がいいポジションについてしまう。アメリカでは主役をやらせてもらっていた自分の方が実力があるのにと思ってしまって。悔しいなと」。それでも努力した小川は主役級にばってきされるも、いじめにあった。「いじめられてもやっていくんだ、という気力はなかった。ちゃんと勉強して大学に進もうと思った」

「女性は10年をどう使うのかが、すごく大事」

小川は得意の英語を生かし、上智大学外国語学部英語学科に進学する。最初は映画の翻訳家を目指そうとした。だが調べたところ、まずは著名な翻訳家に弟子入りするところからキャリアが始まるらしい。下積み期間が長いと知り、「楽しそうであるけれど、もうちょっと実力で勝負できる世界でやっていきたいな」と、就活を始めた。

インターンシップをしていた大手外資系証券、メガバンクなど金融を中心に、大手企業ばかりを見ていた小川は、尊敬していた先輩の紹介で、サイバーエージェントの説明会にも顔を出し、内定を得る。メガバンクを含む大手の内定も複数獲得し、外資系証券はグローバル担当を約束してくれた。親も友人も、大学の教授も、そちらへの就職を薦めた。しかし……。

「金融は年功序列が残っていた。バレエの経験がよぎった。うちでも若いうちからやれるよ、とはいうけれど、実態が見えない。選考過程で出てくる社員は若くて5、6年目。多くはおじさん。これでは説得力に欠けるなって」。ある大手銀行は女性が活躍できる職場であることを強調していたが、「出てくるのは男性ばかり。女性の活躍が自分には見えなかった」

「女性って、どうしても出産で一回休まなければいけないハンディがある。それまで、長く見積もっても10年。10年をどう使うのかが、すごく大事だと思っていた。出産して復帰したいなと思っても、10年下積みでは自信が持てる実績を作れず、望んだポジションに戻れない」

多様性や受容性に魅力

サイバーエージェントでは、そう思っていた小川の眼前に、活躍する若手や女性が選考過程を通じて次々と出てくる。男女かかわらず夢を語り、1~2年目から責任ある仕事を任され、輝いている。「この会社には説得力がある」。小川は、サイバーエージェントを選んだ。

前出の4人は、わりと「左脳」で考え、論理的に選択した。しかし、そうした学生ばかりではない。個性豊かな「右脳派」の才女たちもひきつけている。彼女らに代表される3つ目の決め手は、サイバーエージェントが持つ「多様性や受容性に魅力」を感じたこと。「今の女子中高生にコンテンツを届けたい」と熱く語るのは、女子中高生向けサービスを開発するteens事業部のチーフプロデューサーを務める永山瑛子(27歳、08年入社)だ。

社長の藤田晋が「俺には分からん」と任せきっている事業部の企画面を仕切る永山は、「エンタメ一家」に生まれたサラブレッドで、いわゆる「デジタルネーティブ世代」の先駆けでもある。

祖父は歌舞伎の大衆化で知られる元松竹会長の永山武臣。父は「東京ラブストーリー」「ひとつ屋根の下」「ロングバケーション」など、ヒットドラマの演出を多数手がけたフジテレビの永山耕三。「小さい頃から、お父さんは帰ってこないし、キムタクからの留守電はあるし、みたいな」。そんな環境で育った永山だが、意外にもテレビには見向きもせず、いまだに「お父さんのドラマは見たことない」。ケータイやパソコンをいじり倒して遊ぶ子どもだったという。

「ずっとケータイ触ってて、お母さんに怒られていた」

「わりと最先端な家庭。小さい頃からパソコンもあったし、ケータイも持たせてもらって。よく、そんなまじめに育ったね、まっすぐきたね、よく働いてるね、みたいな感じで」と自嘲する永山は、中1でネットにはまった。

「『誰でも始められるホームページ』みたいな本を買ってきて、やってみたり、好きなバンドのおっかけの延長で見あさったり。中学時代、ネットで出会った沼津の男の子と文通してたら、お母さんにめちゃくちゃ怒られました。プリクラを送り合うみたいな。あぶないです(笑)。オタク文化にも染まった。中3くらいからかな。コスプレして、コミケにいくみたいな。いわゆる『腐女子』でしたね。お母さん、よくあれを許したなみたいな(笑)」

しかし、学校は下から学習院。規律は厳しく、自由奔放に育ちながら、道は踏み外さない。高校に上がり、17歳からはブログを毎日、ケータイから更新した。「もう1日中ネット。ずっとケータイ触ってて、『ご飯中はやめなさい!』ってお母さんに怒られていた」

大学に進学してからは「マンガがずっと読めるから」という理由で書店でアルバイトをし、夜な夜な動画サイトの「ニコニコ動画」を見たり、オンラインゲームをして過ごしていたという筋金入りだ。そんな永山が07年の就活当時、「アメーバブログ」で有名になりつつあったサイバーエージェントを志向したのは当然の流れだった。

ほかには、ミクシィやライブドアなどのネット企業のほか、大好きなマンガや『ガチャポン』などを手がける、大手出版やゲーム関連などエンタメ企業も受けた。「雑誌社はエントリーシートで惨敗で。サイバーエージェントの内定が最初に出て、決めちゃった」。決め手は「話を聞いてくれたこと」。女性の働く環境、という視点は「あまりなかった」

「ああ、そういうのも受け入れてくれるのか」

選考過程が進んだある面接で、趣味の話になり、永山ははまっていた深夜アニメの話をした。「そしたら、そこをすごい掘り下げてこられて。なに?どういう話なの?みたいな。で、あらすじをほとんど話して。そんな話をしちゃったものだから、先に進めないんじゃないのかと思ったら、進んで。ああ、そういうのも受け入れてくれるのかと。人の魅力を感じた」

「冒険できるところで、新しいネットコンテンツを作りたいという気持ちも強かった。中高生から自分自身がネットにそうとうお世話になってきたので、今の時代にあったものをその子たちに提供してあげたいという思いが強くて」。そう話す永山は今、「現代版プリクラ帳」ともいえる「Candy」をはじめ、5つの女子中高生向けサービスを統括する要職に就く。

「モノを作りたいという意欲が強くて。どんどん新しいものを作り続けるのが、自分の価値なのかな。みんな遊んでて、みんな知ってる、『たまごっち』並みの爆発力がある流行を作って、流行語大賞をとりたいですね。スマホでそれができると思う。社内でいうと自分は憧れられる女性ではなく、ずっと面白いことをやってる人もいるんだ、それでいいんだ、と思われたい」

そんな永山の右腕として女子中高生に受け入れられるデザイン面を支えているのが、美大卒のデザイナー、松本美由貴(24歳、12年入社)。話を聞いた6人でインパクトは一番大きい。

「ぜったいキリンになりたい」

「夢はたくさんあって、幼稚園の時は、ぜったいキリンになりたいと思ってました。ガラがおしゃれで首も長くて。でも、絶対になれないことがわかって、その後はケーキ屋さんやロボット、歯医者さん……、いろいろなりたかった」

小さい頃から絵を描くのも好きで、中学では美術部の部長も務めた。高校3年で「美大に行きたいかも、とひらめいて、ネットで検索して一番上に出てきた予備校に次の日に行きました」。松本は1年の浪人を経て多摩美術大学へ進学する。

予備校ではグラフィックデザインやポスターなどグラフィックアートの世界に浸っていたが、大学では立体物や空間デザイン、アニメーションの日々。「思っていたのと違うところに入ってしまって、最初つまらなくて。でもそのうちに楽しくなって、最後の方はアナログで大きな作品を作ったり、インスタレーション(空間表現)を作ったりしていた」

美大生に人気のある就職先は広告会社だ。松本も最初は広告会社を希望していたが、「広告って結局、商品を宣伝するためのものでメーンではない。私は、広告されるメーンの作品をやりたいって思ってから、広告には興味がなくなった」。ネット業界には「まったく興味がなかった」が、「妹がすごいアメーバが好きで、お姉ちゃんぜったい受けてというので、受けてみた」

アートや、アナログ作品に没頭していた松本には対極の業種。それが、「何てすてきな会社なんだ」と思うに至ったのは、永山と同じく、出会ったサイバーエージェントの社員が自分の個性を認めてくれたからだ。

「頑張った作品だったので、どうしても見てほしかった」

「インターンの面接に作品集を持っていったんです。ちょっと変わった作品が多いし、ウェブもぜんぜんやってない。どう思われるんだろう。でも見せたら、すごい盛り上がって、面白いねっていってくれて。わかってくれるんだ、と思えて、それがすごい楽しくて」

松本が持ち込んだ作品の1つが、学生時代に打ち込んだフリーマガジン。美大生に向け、いろんな世界観を紹介する内容で、松本は企画、取材、執筆、デザインのすべてを担当した。中には過激な作品も含まれ、友人からは「ぜったいに就活に持っていったらダメ」だといわれていたが、松本は「頑張った作品だったので、どうしても見てほしかった」。それを受け入れてもらえた。

インターンに参加した松本は、さらに楽しいと思うようになった。「ただの学生なのに、すごいいろんな社員が相談にのってくれたり、話を聞いてくれたり。大手広告会社の面接にいった時は楽しくなくて、すごい悲しかった。面接の時間は3分で、はいはい、みたいな。でもサイバーエージェントの人はみんな温かくって、ウェブやサービスというよりは、サイバーエージェントが好きになってしまって、ここに入りたいって思いました」

「何でもデザインできちゃう人を目指したい」

今ではすっかり、デジタルでの制作環境にはまっている。もともと、学生時代からデザインでパソコンを使いこなしていた。「画家なら1枚の素晴らしい絵を描いて、どこかの美術館に飾って、みんながその絵を見に来る。でも私は、そんなんじゃ全然、嫌で。むしろ私の絵を、何百枚も何千枚も刷って、全世界にちりばめたいと思う方。私の作ったものを世界中の人が見て触って楽しんでくれるのが好きで。それを考えたらネットが一番いいなって」

松本は昨年7月にCandyチームに配属されたばかりの入社1年目ながら、現在、50万ダウンロード超のアプリ、Candyの画面レイアウトや配色、アートなど、デザインの多くを担う。「私がかわいいと思うデザインと、中高生がかわいいと思うデザインは違う。ひたすらポップティーンを読んだり、渋谷の『109』にいったりして、学んでやっている。合わせていく。合わせるだけだと古くなるので、ちょっと冒険もする」

この2月には、Candyの仕事もやりつつ、お題に一言ボケるコミュニティーサービス「アメーバ大喜利」を同期3人と新たに立ち上げるなど、幅を広げている。「まったくお笑いとか好きじゃないんですよ。でも、かわいさとは別の面白さを見せるデザインもできるようになりたいと思って、やろうと決めた。仕事をふられれば何でもデザインできちゃう人を目指したい」

共通する決め手は「活躍の機会」

エンタメやアーティスト志向の女子をもとりこにし、才能を引き出すサイバーエージェント。女子中高生マーケットの開拓コンビは天真爛漫(らんまん)な右脳系ながら、サイバーエージェントにとってはおじさんにはできない芸当を次々とやってのける優秀な社員といえる。

6人に共通する決め手は「活躍の機会」。若くても、女性でも、そして一風変わっていても、機会を与えてくれる会社。そのプレゼンテーションを「先輩社員」が身をもって行うことで、彼女らの心をつかんでいた。そうして入社を決めたキラキラ女子予備軍は、社内で互いに影響し合い、さらに自らの輝きを増した。そして戦力として、実際に組織に貢献している。

賛否はあるだろう。だが、少なくともサイバーエージェントの女子社員は満足し、組織も活力を得ている。みてくれの「女性活用」を打ち出す会社よりは、よほど。

(電子報道部 井上理)

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