日本建築家協会、国立競技場の解体延期を要望

2014/5/26付
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日経アーキテクチュア

「発注者としての情報公開、責任ある説明がなされていない。現国立競技場の改修案を含めて様々な選択肢、考え方があるなか、このままの形で解体工事が進んでいくことを危惧している」――。日本建築家協会(JIA)の芦原太郎会長は、こう語った。JIAは2014年5月23日、現国立競技場の解体工事に着手しないよう求める要望書を東京都知事と文部科学大臣、日本スポーツ振興センター(JSC)理事長宛てに提出した。芦原会長は、事業に関する情報公開をしたうえで、市民を交えた協議調整、合意形成をすべきだと訴えた。

会見に臨むJIAの芦原太郎会長(右)とJIA関東甲信越支部の上浪寛支部長(写真:日経アーキテクチュア)

会見に臨むJIAの芦原太郎会長(右)とJIA関東甲信越支部の上浪寛支部長(写真:日経アーキテクチュア)

2020年東京五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設に伴い、現国立競技場の解体工事が2014年7月に始まる。JSCは3月、「国立霞ケ丘陸上競技場等とりこわし工事(北工区)」、「同(南工区)」の2件の一般競争入札を公告。5月29日に開札される。また、5月21日には「国立霞ケ丘陸上競技場等とりこわし工事監理業務」の一般競争入札も公告。6月16日に開札される予定だ。

JIAの要望書では、新国立競技場の計画について「専門家や市民団体から、設計コンペのプログラム、歴史性、景観、規模、建設費、維持管理コスト、施設運営、観客席の常設/仮設、可動屋根、避難の問題などが指摘されている」と記載。計画を見直す時間がないという意見に対し、「ロンドン五輪の施設計画では、専門家によるアドバイス機構(CABE)が大会開催の5年前からかかわり、協議調整をするなかで良質な施設計画となり成功につながったという前例もあり、まだ間に合う状況だ」と言及し、解体着手の延期を訴えた。

新国立競技場の建設計画をめぐっては現在もなお、デザインやコストなどをめぐって議論が続いている。5月12日には、建築家の伊東豊雄氏が、国立競技場の建て替え計画に異を唱え、現競技場の改修案を発表した。

芦原会長は会見で、伊東氏の提案について「既存のものを生かしてどこまで五輪に使えるような施設ができるのかという一つの考え方で、評価している。ただし、いろんな観点から評価していかなければならない。(国やJSCなど事業関係者から)まだ具体的な問題点について説明されていないので、そこを分かったうえで考えなければいけないと思う」「どの案でも良い点、悪い点がある。どれを選択するのかが発注者の責任だ。専門家には最良の判断ができるような検討や提案をしていく役割がある」と述べた。

■文科相「改修では間に合わない」

新国立競技場の基本設計は当初、2014年3月末に完了する予定だったが、延期されている。建設規模などの計画見直しに伴い、基本設計の着手が1月にずれ込んだことに加え、2月に首都圏を襲った大雪被害を踏まえ開閉式屋根の安全性を検証する必要が生じたことが主な理由だと、文科省は説明している。基本設計は5月末をめどに完了する予定だ。

改修で対応すべきだという意見に対し、下村博文文科相は5月21日の衆議院文部科学委員会で、「仮にいまから改修する案を検討した場合、これまで検討に要した期間をさかのぼって、また一からやり直すことになる。2019年春の竣工には間に合わないという日程になってしまう。文科省としては、今後とも様々な意見を踏まえながら、国立競技場が五輪会場にふさわしいものになるよう、整備を着実に進めたい」と語り、当初の計画通り競技場の建て替えを進める考えを強調した。

(日経アーキテクチュア 佐々木大輔)

[ケンプラッツ 2014年5月26日掲載]

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