いすゞとユーグレナがミドリムシ由来の次世代燃料
いすゞ自動車と東京大学発のバイオベンチャーであるユーグレナ(本社東京)は2014年6月25日、微細藻類であるユーグレナ(以下、和名であるミドリムシ)由来の次世代バイオディーゼル燃料の実用化に向けて共同研究を開始すると発表した(図1)。

既にユーグレナが開発している従来のミドリムシ由来のバイオディーゼル燃料では、他のバイオディーゼル燃料と同様、軽油に全体の5%を混ぜて使用する。しかし、両社が共同で研究を始める次世代バイオディーゼル燃料では、「分子構造が軽油と同じであるため技術的には100%での使用が可能」(ユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏)という。2018年までに開発にメドを付ける。
従来型のバイオディーゼル燃料では、ミドリムシを粉末化したものから油脂原料(ワックスエステル)を取り出し、グリセリンを取り除くことで軽油に近い物性の液体「ユーグレナFAME」を得る(図2)。
こうして精製したユーグレナFAMEは軽油に似た特徴を持つものの、軽油に5%以上混ぜて使用することはできない。酸化安定性が低下し、粘度が増したりスラッジが発生したりするなどの問題が生じるからだ。
両社が研究を進める次世代バイオディーゼル燃料は、一般的な石油精製で用いられている水素化処理(原料に触媒を加えて水素と反応させることで脱硫する)技術を応用して作る。出雲氏によると、この技術で精製した燃料は軽油の規格に適合したものになるという。
ユーグレナはこれまでJX日鉱日石エネルギーらと共同で、バイオジェット燃料の開発を手掛けてきた。出雲社長は発表の場で、「ディーゼル燃料においてもパートナーを探し続けてきたが、なかなか見つからなかった。今回、いすゞ自動車の協力を得られることになり、ディーゼル燃料もジェット燃料と並ぶ2本目の事業の柱としていく」と話した。

いすゞ自動車がユーグレナとの共同研究を決めた背景には、若手技術者の「環境に配慮した燃料の開発に協力したい」との思いがあったという。いすゞ自動車代表取締役社長の細井行氏は、「当社としては環境への負荷が少ない多様な燃料を探していくことは重要だと考えている。ユーグレナとの共同開発はその方針に基づく」と説明した。
次世代ディーゼル燃料の開発に当たっては、いすゞ自動車が実証走行と性能試験など、ユーグレナが研究開発と製造を担当する。併せて、いすゞ自動車は2014年7月1日から、いすゞ藤沢工場と湘南台駅を結ぶ社員・来客用のシャトルバス1台において従来型のバイオディーゼル燃料を使用する(図3)。
なお、両社は従来型と次世代型の総称を「DeuSEL(デューゼル)」として商標登録した。
(日経ものづくり 池松由香)
[日経テクノロジーオンライン 2014年6月25日掲載]