電気自動車の充電インフラ、巨額投資が始まる

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2010/5/26 9:00
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電気自動車(EV)」と次世代電力網「スマートグリッド」。片や自動車業界、片や電力業界で世界的に激しい開発競争が繰り広げられている今注目のキーワードだが、これら二つのキーワードの間に、切っても切れない密接な関係があることは意外に知られていない。

図1 スマートグリッドとEVの連携に向けた日産自動車の構想  2009年10月6~10日に開催された「CEATEC JAPAN 2009」で同社 常務執行役員の篠原稔氏が講演した際に示したもの。

図1 スマートグリッドとEVの連携に向けた日産自動車の構想  2009年10月6~10日に開催された「CEATEC JAPAN 2009」で同社 常務執行役員の篠原稔氏が講演した際に示したもの。

その関係を理解するには、EVが多くの家庭や職場に普及したときのことを想像してみるのが手っ取り早い。大量のEVが、例えば電力料金の安くなる夜間に一斉に充電を開始したらどうなるか。既存の電力網は、いつ何台のEVが充電し始めるかを知るすべを持たない。したがって、停電や急激な電圧低下を避けるには、大量充電にいつでも対応できるだけの余分な、つまり普段は無駄になる発電設備を持たねばならない。しかし、双方向通信機能を備えたスマートグリッドなら話は変わる。何台のEVが電力網に接続されたかを電力会社側がリアルタイムに把握できるので、負荷が過大にならないよう、各EVの充電量を調整することも可能になる。

電力網側からEVに電力を効率よく送り込めるだけではない。スマートグリッドでは例えば、天気のいい日に太陽光発電でつくった電力をEVの電池に充電し、逆に雨の日には充電量に余裕のあるEVの電池から電力網側に電力を「借りる」ことだってできる。つまり、スマートグリッドなら、EVをあたかも小規模な揚水発電所のように使うことが可能なのである。

このようにEV用の充電インフラの拡充とスマートグリッドの構築は、セットで進めると極めて大きな相乗効果が狙える性質を持っている。そこをにらんで現在、EVとスマートグリッドの開発に、米中をはじめとする各国が巨額の資金を投入し始めた。これは絶好の商機――。そう考えた企業が今、EVの充電インフラ開発に続々と参入し始めた。

日産とGEが手を組んだワケ

中でも注目を集めたのが、日米の巨大企業の提携である。2010年4月、日産自動車と米General Electric(GE)社が、充電インフラに向けた研究で提携すると発表した。

日産自動車は、フランスRenault社とともに「2012年の段階で50万台規模でEVを量産する」という計画を打ち出すなど、世界で最もEVの開発に注力する企業の一つである。一方、電力事業に強いGE社は、スマートグリッドの開発に最も積極的な企業の一つだ。二つの分野でそれぞれ大きな存在感を放つ両社は、なぜ急接近したのだろうか。

現在のGE社は、自動車産業において決して目立つ存在とはいえない。ランプやセンサなどの部品を製造しているくらいである。そんなGE社だが、「創業者であるThomas EdisonがEVを開発して以来、実は社内でEVの研究を脈々と続けてきた」(同社GE Global Research Japan, General ManagerのJuliana Shei氏)のだという。その研究チームと日産自動車の研究者が、以前から水面下で交流していたのである。情報交換の一環として2009年の半ばころ、「日産自動車の技術者が米国ニューヨークにあるGE社の研究所を訪れる機会があった。そこでEVと充電インフラ技術について一緒にやろうと決まった」(Shei氏)。日産自動車としても、GE社と組むことで「いち早くスマートグリッドに向けた技術開発を進める好機」と考えた(図1)。

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