電気自動車の充電インフラ、巨額投資が始まる

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2010/5/26 9:00
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日本を参考に国家電網が目指すのは、停電を減らすといった電力網の信頼性の向上である。これを中国版スマートグリッドのコンセプトの根幹に置く。このために、断線などを検知した場合に、自動で別経路の電力系統に切り替えるシステムを万博会場に配置した。断線の検知や制御信号の通信には、日本の電力網と同様に光ファイバー回線を利用する。「無線通信に比べてコストは若干かさむが、安定した通信が可能」(国家電網)なためだ。

図9 国家電網が開発したV2G対応の急速充電スタンド

図9 国家電網が開発したV2G対応の急速充電スタンド

一方、米国に倣うのが、EVとスマートメーターの積極活用である。今回国家電網は、V2G対応の急速充電スタンドを万博会場内で見せたほか、会場内の主要な施設に10数台のスマートメーターを設置した(図9)。

EVをこの急速充電スタンドに接続すると、電力網の需給状況に応じて放電と充電が自動的に切り替わる。太陽電池などの出力が急激に落ち込んだ際、「数十~数百台のEVから電力網に電力を供給することで、停電などを減らせる」(国家電網)という。接続時には、急速充電スタンドのモニターで電池残量や電力の流れを確認できる。EVと急速充電スタンドの通信インタフェースには、車載LAN規格である「CAN(controller area network)」を使う。急速充電スタンドは直流に対応し、出力は最大30kW。電圧は200~350Vで、電流は0~100Aである。実用化の時期に関しては明言せず、「あくまでEVの普及次第」(同社)とした。

国家電網は、V2G対応の急速充電スタンドを2台試作した。一つは上海万博の会場に、もう一つは上海市の漕宝路地区の充電ステーションに設置した。漕宝路地区の充電スターションには急速充電スタンドのほか、普通充電スタンドも11台ある。普通充電スタンドは全部で約30台試作したという。

V2Gを実現するには、充電スタンドだけでなく、車両側も充放電できるように対応する必要がある。今回、国家電網とV2G対応のEVを共同開発したのは、中国Shanghai Automotive Industry社(SAIC、上海汽車)である。同社は、V2Gに対応したEVを出展した。電池容量が35kWhのLiイオン2次電池を搭載し、1充電当たりの走行距離は310kmである。上海汽車と国家電網は「二人三脚で開発を進めている」(上海汽車)という。

V2G以外にも、国家電網が開発した急速充電スタンドには大きな狙いが込められていた。EVの充放電を、自動車メーカー側ではなく、国家電網が管理できるようにした点だ。具体的には、EVへの充電可否の命令を充電スタンド側から出力する。例えば、東京電力や日産自動車などの日本企業が世界標準を目指す急速充電スタンドの仕様では、自動車メーカーが主導権を握れるよう、車両側から充電可否の命令を出す方式を採っている。これと真っ向から対立する仕様だ。どうやら、日米の思惑通りにコトは進みそうにない。

(日経エレクトロニクス 清水直茂)

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